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予想外の仕事 戦闘開始編

「なんだ?」


 五十六が呟いた数秒後。ズシーンという地響きが伝わってきた。明らかに何かが落ちて爆発した物である。


「これは?砲撃か?」


 沢村が立ち上がって言った。すると、1人の兵士が天幕の中に駆け込んできて本大将に報告した。


「報告します!アルメディア軍戦艦が我が軍の沿岸砲台を砲撃中。現在砲台軍は応戦を行っています。」


 その言葉に、本大将が青ざめる。


「何だと!何故そこまで接近を許したんだ!?水軍(旭日皇国では海軍を水軍と呼ぶ)の哨戒網は何をしていたんだ!!」


「それが、ここ数日天候の悪い海域があったようで。」


 どうやら天候不順の海域を突破されたらしい。五十六たちの元いた世界ならレーダーが発達しているから、今回のような本土沿岸に敵を発見できぬまま近づけることなど有り得ない。しかし、日露戦争の時も東京の目と鼻の先にロシア軍の巡洋艦が現れ、貨物船を襲ったという実例があるように、レーダーや無線網、航空機が発達する以前の時代にはこういうことが起こりえた。


「ええい、一番近い海軍の艦隊は?」


「北100km地点に巡洋艦を中心とする第6艦隊がいますが、とても今から知らせては間に合いません。」


「そうか・・・仕方あるまい砲台に全力で反撃をさせろ!!」


 本大将はそう命じると、副官を伴って天幕から出て行った。しかし、その沿岸砲台からの砲撃音らしき音は散発的にしか聞こえてこない。


「大丈夫でしょうかね?」


「わからん。」


 五十六の質問に素っ気無く答える沢村。


 数分ほどすると、沿岸砲台からの砲撃音はほとんど聞こえなくなってしまった。逆に、敵の砲撃の着弾音らしき物は徐々に近づいてくるような感じがした。


「隊長、出た方が良くありませんか?」


 藤沢が意見具申する。


「ううん・・・だが攻撃に出たら帰りの燃料が恐らく不足する。それだけは避けたい。もう少し様子を見てから判断しよう。」


 だが、事態は悪い方に進んでいるようだった。着弾の衝撃はさらに大きくなり、さらに天幕の外を走り回っていた兵士の姿も見えない。そして。


 ズシーン!!


 先ほどまでとは比べ物にならない衝撃が彼らを襲った。


「今の相当近かったです!!」


 五十六が叫ぶ。今までに爆発は何度か経験していたが、砲撃はそれとは違うレベルの威力があるようだ。彼の中に自然と恐怖が湧いてくる。


「隊長、機体が気になります。一端出ましょう!!」


 藤沢が叫んだ。


「わかった。」


 3人は一斉に天幕から飛び出し、機体がある方へと向かった。


 幸い、機体は着陸した時のままの状態でちゃんと無事に並んでいた。


「よかった、機体は無事だ。」


 五十六が安堵の息をつくが、それがすぐにぬか喜びであることがわかった。なぜなら、直後にヒューンという空気を切り裂く音が聞こえてきたからだ。


「伏せろ!!」


 沢村の叫びと共に、五十六はその場に伏せた。そのコンマ数秒後には、背後から凄まじい爆発音と爆風が彼に襲い掛かった。


「うひゃあ!!」


 爆風が収まり、恐る恐る顔を上げて後ろを見ると、先ほどまで自分たちがいた天幕が消え、そこにポッカリ穴が開いていた。


 五十六は死の恐怖を感じた。


「クソ、こうなったらやむえん。2人とも飛ぶぞ!!自分の機体が無事かどうか確認しろ!!」


 沢村の言葉と共に、3人は自分の機体目掛けてダッシュした。機体はまだ直撃弾は受けていないらしく、無事に並んでいた。


 五十六は自分の機体に行くと、まず車輪止めを外した。そしてそのまま急いでコックピットに入り込み、まず帽子をつけた。


「回ってくれよ!!」


 そう願いながら、エンジンのスターターボタンを押した。


 ヒューン・・・バババ・・・・


 エンジンは無事に回り始めた。


「やった!!ようし。」


 彼はブレーキを解除して機体を進める。今は滑走路とは逆向きに頭を向けているため、急いで回答する。この動作は失敗すると、そのまま制御が利かずグルグルその場で回り始めてしまうので、注意が必要である。


 幸いそのような事は起きず、彼の機体は無事回答を終えた。すると、頭につけた無線機から沢村の声が入った。


「高野!先に上がれ!!」


 見ると、2人の機体はようやくエンジンを回した所であった。五十六は言われたとおり機体を先に進めた。


 滑走路はまだ被弾してないが、いつ砲弾が降ってきてもおかしくない状況である。五十六は急いだ。


 滑走路に入ると、スロットルを全開にして滑走に入った。砲弾が当たらないか気が気でなかったが、なんとかそのまま離陸する事が出来た。取りあえず一安心である。


 だが、後続の2機が同じようにいくとは限らない。高度を上げて旋回しながら五十六は2人が離陸してくるのをじっと見守っていた。幸い、2人も無事に飛び立つ事が出来た。


「良かった。」


 高度2000mまで上がって3機が揃うと、すぐに無線が入った。


「こちら藤沢。隊長、どうします?このまま基地に帰りますか?」


「そんな訳にはいかない。我々の同盟軍が攻撃を受けているんだ。助けないわけにはいかない。ロケット弾で敵戦艦の装甲を打ち抜けるかは不安だが、やるだけやろう。一か八かだ。」


 沢村の言葉に、五十六も腹を決めた。


「了解!派手に行きましょう。」


「これより我が小隊は敵、アルメディア軍戦艦攻撃へ向かう!!」


 3機は翼を翻し、海岸線に向かった。すると、すぐに沿岸砲台がやられているのか、黒煙の柱が何本も見えてきた。


それを見送りつつ、五十六は海上を凝視する。


「いた!10時方向、距離5000だ!!」


 五十六はその方向に目を向けた。そこには、数本の船からでる煤煙の柱と、海上に残された航跡が見えた。


「これより攻撃を開始する。一回目は索敵のために通過するが、敵の反撃がないとも限らん。充分注意せよ!!」


「「了解!!」」


 3機は敵艦目掛け、降下を開始した。後に小摩木沖海空戦と呼ばれる戦いの始まりである。


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誤字報告です。 >今は滑走路とは逆向きに頭を向けているため、急いで回答する。 →回頭
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