戦いの始まり
俗に中央大陸と呼ばれる地の西の果てに、旭日皇国と言う小国があった。
国自体は小国ながら、石炭、ダイヤモンド、金、各種宝石といった地下資源が豊かなこの国は、それらを財源として繁栄を築いてきた。狭いながら周辺海域の群島と併せて7000万近い人口を養えたのも、ひとえにこの財力があるがゆえであった。
しかし、東側に隣接するトルアン王国が、北の軍事帝国アルメディアの侵攻を受け併合されると、この国にも危機が迫った。
アルメディアはその圧倒的な軍事力で皇国に対して恫喝を幾度も行い、半植民地化の条約を飲むよう迫った。
しかし、時の皇帝都代はその条約締結を断固拒否した。
隣国トルアンでのアルメディアにおける暴政の情報が入ってきたからである。都代帝は幾度も外交努力による解決を図ったが、ついに交渉は決裂した。
皇国暦741年。12月8日、アルメディアは皇国に対して宣戦布告。150万と言う大軍で皇国に雪崩れ込んだ。
皇国陸軍は各地で地の利を生かして勇敢に反撃し、敵の侵攻を幾度も頓挫させたが、それも3ヶ月が限界で、圧倒的物量を誇るアルメディア軍は半年で皇国の北半分を占領した。
残りの南半分の占領、そして首都西京への敵の侵攻ももはや時間の問題と思われていた。
そして、この日も皇国中央にあるとある村をアルメディア軍が襲っていた。
「逃げろ!!」
敵が来るとの情報に、村人たちが一斉に逃げ始めた。
姫神真理奈もその中の一人だった。
「戦える者は銃を取れ!!その他の人間は隣村へ向かってとにかく逃げろ!!」
村の長老が指揮を執り、村人たちはそれに従って逃げる。女子供老人ばかりの50人ほどの集団だ。彼女もその流れに入った。
村から逃げ出して30分もしないうちに、村の方から銃声が聞こえ、そしてさらに30分もすると、銃声は聞こえなくなったが、村のほうからは黒い一筋の煙が上がっているのが見えた。
だが、逃げ出した村人たちに出来る事はただひたすら逃げる事だけであった。しかし、まもなく誰かが叫んだ。
「追手よ!!敵よ!!」
真理奈が振り向くと、馬に乗った兵隊が追いかけてくる。噂に聞くアルメディアの装甲騎兵に違いない。
彼女たちは無我夢中で走り出したが、馬と人のスピードでは差がありすぎた。
あっという間に追いつかれ、そして虐殺が始まった。女子供老人関係なく敵は銃剣で刺し殺していく。
彼女にも矛先が向けられた。一騎が彼女へ向かって走ってくる。
それを見て、彼女は必死に走る、
「やられるもんか。」
虚勢を張ってみるが、それでどうにかなるわけではない。
あっという間に追いつかれ、しかも彼女は転んでしまった。そして立ち上がろうとする彼女に向かって銃剣が向けられた。
(やられる!!)
彼女がそう思ったとき。
ゴオオン!!
聞いたこともない音が辺り一面に響き渡った。
「な、何!?」
敵も味方もしばしその音に唖然となる。
30秒ほどした時、突如雲の間から何かが現れた。
「何だあれは!!」
敵の一人が叫んだ。
雲の間から現れたそれを最初彼女は鳥かと思った。しかし、鳥にしては大きすぎる。しかも、羽ばたいていないし信じられないスピードでこちらに迫ってくる。
その場で立ち尽くす真理奈。
だが、次の瞬間その物体の数箇所が光り、ドドドという普段聞きなれた猟銃の発射音を連続したような音が響きわたった。
その音が収まり、物体が上空を通り過ぎると、遠くにいた騎兵が倒れた。
「ば、馬鹿な!!」
騎兵が叫んだ。
突然の味方の死に怖気づいたのか、彼女を殺そうとした騎兵は仲間へ向かって走り始めた。
だが、再び降りてきたその物体の二回目の攻撃により、その騎兵も含む全ての敵がやられた。
真理奈を含む、生き残った村人たちには何がなんだかわからなかった。しかし、一つだけわかったのは敵が全滅した事により自分たちは助かったことであった。
30人ほどにまで減った村人たちは再び隣村へと向かって歩き始めた。
彼女がその物体が飛行機と言う未知の兵器であると知り、そしてこれが彼らの初陣であると知るのはこの次の日のことであった。
真理奈がいた場所から南へ50km程行った所に、それはあった。
ただの草原にしか見えないその場所に、先ほど真理奈たちが見た飛行機が降りてきた。そう、ここは野戦飛行場だ。
降りてきた3機は、エンジンを止めると整備兵によって急造の納屋風の格納庫へと引き込まれる。旧日本海軍機に似た濃い緑色に塗装され、胴体と翼には日本の国籍マークである赤い丸がペイントされていた。
格納庫に引き入れられると、搭乗員が風防を空け降りる。すると、機体を押していたツナギ姿の整備員が駆け寄る。
「高野少尉!到着お待ちしていました!!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
飛行帽子を外した高野と呼ばれた男の容貌はどう見ても20前後の若者であった。一方、出迎えた整備員は40歳前後である。
「機銃を撃ったんですか?」
機銃口についた煤をみて整備員が言う。
「ああ、民間人を騎兵が襲っていたから。・・・しかし、まさか異次元で戦闘機に乗って戦争するとは思わなかったです。」
「それは私も同じです。でもまあ、富士の樹海で自殺するよりは良かったと思っています。」
「そりゃそうだ。」
そう言いあって二人は笑った。
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なお、旭日皇国をはじめとする異世界国家の科学力は日露戦争前後のレベルと解釈していただきたい。