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007

十歳と少し。

今日は魔獣との実戦訓練である。ちょっと早くないかと思うが、適性を見る意味もあるんだろう。そんな感じのことを教官が言っていた。


さて、魔獣との実戦訓練だが。どうやって行うかというと。数日がかりの遠征になる。

なにせ昼は動けないからね!


里から南西方面に山を越えると平野がある。

あまり大きくない平野だが、魔獣がいるのでちょうど良いターゲットとなる。

また、その平野の近くの山に洞窟を掘り、拠点として太陽光に備える。


昼は洞窟で寝て、夜になったら周辺の魔獣を狩るというのが遠征の内容。

もう百年以上続く歴史ある伝統の遠征だ。

遠征の度に洞窟は拡張され、今では百人以上収容できるとか。もうそれ洞窟じゃないよね。

というわけで、遠征に行ってきます。




移動は夜。まぁ、一夜で移動できる距離なのでそこはあまり問題はない。

護衛兼狩りをするという大人がたくさんいるので、いざとなったら子どもたちを抱えて走るという奥の手がある。

実際、移動にはまったく問題なかった。


問題というか、ちょっと困ったのは洞窟に到着してからだ。

洞窟の入口は木製の扉でちゃんと閂もしてあったのだが、腐ってしまったのか扉が無かった。そのせいで、フォレストウルフという狼型の魔獣の巣になってしまっていたのだ。

まぁ、護衛の大人たちがすぐに殲滅してしまったけどね。

ただ、洞窟だから血の臭いが充満しちゃってね。

鼻についてなかなか寝付けなかったんだよね。




はい、実戦訓練開始です。

今回の目標は鹿型の魔獣フォレストディアー。夜に寝る性質です。

ですので、フォレストディアーの群れに夜襲をかけます。殲滅して解体までが訓練です。

つまり、訓練という名の狩りですね。

まぁ、お肉が食べられるので良いんですけど。


フォレストディアーの居場所は教官が特定済みである。さすがにそこまで時間を掛けられないからね。

あ、フォレストウルフは解体して皮をゲットしてあります。他の部分は肥料にするとか。

肉が臭くて美味しくないらしいです。


夜、フォレストディアーの群れに接敵します。

俺たちは暗殺術を仕込まれているので、接敵するのはお手の物です。まだまだ拙いですけど。

目の前の群れは三十匹ほど。

このまま気付かれずに喉に一撃。これが今回の課題です。なんせ暗殺者なので。大事なのは殺すこと。そして殺すための手段・環境を作ること、です。


右手にナイフを持ち、音を立てずに近づきます。

気付かれてはいけません。息も殺し、耳が動いてないのを確認しつつ近づきます。

そのまま、殺気を出さずに喉にナイフを突き立てる。

殺気を出しては気付かれますからね。


サクッと頸動脈にナイフが突き刺さる。フォレストディアーが驚いて目を覚まし、声を上げようとする。が、その前にナイフを動かし喉を切る。

フォレストディアーは声を上げられず、また息ができないために暴れるが。息ができないために力が入らない。そのまま少し待つと力が抜けたように動かなくなった。

本当に死んだかを確認するために、蹴ってみる。

動かない。

フォレストディアーを殺した。


ふーっと息を吐く。


「うむ。頸動脈と喉を一挙動で掻き切れなかったのは減点だが、声を上げさせなかったのは良かったな。そのまま励むように」


突然聞こえた声にビクッとなる。しかし訓練された体が、ナイフを声のした方へ向ける。


「ほう。ナイフを向けたか。驚いて声を上げる者が多いが、なかなか見所があるようだな」


居たのか、教官。まったく気付かなかった。

俺が向けたナイフを気にも留めずに教官は他の訓練生のところへ行く。




課題である一匹を仕留めたので、気が楽になったのだろう。

周りの音が聞こえてきた。

周りを見る余裕ができたということか。いや、周辺に気が付いてないのは問題だな。

命に関わる問題だ。周辺にも気を配るようにしよう。


他の訓練生たちは、あるものは俺より上手くやり。またあるものは声を上げさせてしまって焦り。そして運の悪い者…上手く頸動脈を切れなかったのだろう、フォレストディアーに蹴られてしまったのか地に伏して動かない訓練生もいた。

そういう訓練生には教官や護衛の大人がフォローする。フォレストディアーを処理して、手当をしている。


俺の評価は中の上だった。

暗殺が上手になってもなぁ、と思わないでもないが。訓練の成果が出て、力をつけることが出来ているのだと考えることにした。

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