009
十二歳になった。
成人まであと一年。
選択肢は三つしかない。
一つ、特殊工作員として働く。
二つ、農作業をやる、または職人として働く。
三つ、里を脱走する。
一つ目は選びたくない。
殺伐とした人生は嫌だ。
危険も多いだろうし。いつ死ぬかわかったもんじゃない。
二つ目は穏当だが、一生里から出られないだろう。出る用事も無いしな。
これだと、せっかくの異世界を満喫できない。観光とかしたい。観光なんて魔獣のせいで現実的じゃないけど。
三つ目は…、やはりこれしかないか。
特殊工作員にならず、しかし里から出る方法は。
あーぁ、追手が掛かって殺されるかもしれないと恐々としながら生きていくのか。
いやだなぁ…。
はぁ、十二年か…、短い人生だったなぁ…。
カーン カッカーン カーン カッカーン
んん?
あれは招集の鐘。
何かあったのか?
行かないと怒られるし、行くか。
大変だ。ドラゴンが目撃された。そして、幻獣の血を吸うと上位ヴァンパイアになれるという伝承を実現すべく、ドラゴン狩りが行われることになった!!
まじかー。ドラゴンなんてまじかー。
死ぬよ。絶対死ぬよ。この世界のドラゴンは、軍を編成し犠牲を多数出しながら勝利を辛うじて拾えるような相手だ。
いくら吸血して人を超える筋力や体力を持っていると言っても、ドラゴンはムリだろう…。
それで、だ。本当に大変なのは、十二歳の訓練生は後方支援要員として一緒に行くんだってことだ。
ドラゴンとは戦わないとは言うが、見逃してくれるとは限らないじゃないか…。
いかん、マジで短い人生になりそうな予感。




