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きっと連載頑張ります。
ねえ、ハチ。おまえ、私の良人におなり。
そう笑った貴女はもういない。貴女は本当に酷い人だ。いつも私を置いて一人で先に行ってしまうのだから。
いつの世もわたしは悪役だった。
ある世ではいじめの主犯格だったり、またある世では国家転覆を目論んだとして追われる大罪人だったり、盗賊だったり詐欺師だったりと多岐にわたる悪事を働いてきた。
その結果として、いつも刃物で心臓を貫かれて最期を迎える羽目になってしまったのは、自業自得と言われてしまえばそれまでなのだが。
ついでに言えばその所為でわたしはめっきり刃物が駄目になった。騎士家系なのに。
ボールドウィン伯爵家の一人娘、ヴェロニカとして生を受けてからというもの、そのような最期を迎えることのないよう悪事を働く事もなく、清く正しく日々を過ごしてきた、つもりだった。
しかし、目の前で微笑む無駄にキラキラしい少年を見た瞬間、今回も例に漏れないんだなと視界がブラックアウトするなかで酷く冷静に分析しした。
これも例に漏れず、というか、今世はいつの前世かで流行っていたとある娯楽制作物の登場人物の悪役令嬢であったらしい。
その令嬢は一人娘であるが故に親馬鹿な両親が溺愛して育てたので、我儘放題になってしまった。
そんな令嬢には婚約者が居たのだが、彼は令嬢の傲慢、我儘っぷりに嫌気がさし、その頃季節外れの編入生として有名だった主人公とやらにコロッと落ちる攻略対象者とやらだった。
まぁ、想像つくだろうけど、令嬢は主人公を虐めたことと日頃の素行の悪さで攻略対象者達に糾弾されて、どのエンドでも良くも悪くも心臓を刺されて死ぬことになる胸糞悪い役回りだった。
今現在、わたしは素行が悪いということは無いし、傲慢、我儘でも無いであろうし、両親は溺愛どころかわたしに無関心に近い。しかし、心臓を刺されて死ぬというのは最早運命と言っても過言では無くなってしまっている。
令嬢であるわたしの性格や身の回りが違っているだけではこの運命は変えられていないだろう。
だが、今世はわたしは早々に死ぬ訳にはいかなくなってしまったのだ。
「リアム、話があるのだけれど。」