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 街の中央ではシンボルである時計塔が、広大な敷地を持つその建物を見下ろしている。


「本当にここか?」


「はい!ママはこの建物の中にいるです」


 城ではないが高い壁に、門には数人の警備が常におり、非常に警戒レベルは高い。さらに対魔獣の為の結界が建物には施され、確かにフェンリルはともかくネルには突破は出来ないだろう。


門番がフェンリルとネルに気付き声を掛ける。


「おっ坊主父ちゃんに会えたんだな」


ネルは、深々と頭を下げる。


「あの時はお世話になったです」


門番は頷くと、フェンリルに説教をはじめる。


「似てるからもしかしてとは思っていたが、こんな小さな子供をほっぽらかして親失格だぞ」


 俺様の子供じゃねぇと言いたくなるのを、フェンリルはグッと飲み込む。狼の見分けなど、どうせ人間には出来ない。


 ネルがどうしてフェンリルの居場所を突き止められたのかの謎も解けた。フェンリルは一日おきに、ここに通っていたのだ。当然、最年少の特待生として通っていたマスターのルークも、有名人であっただろう。出身地が、話題の一つにあがっていたとしても不思議はない。


 フェンリルとネルがいる場所は魔導都市ファンリ。そしてここはファンリの中でも、魔法学校名門中の名門ルフツネイルの門前である。


「さあパパ、ママを助けにいくです!」


「ちょっと待ちな」


 勇んで飛び込んでいこうとするネルの首根っこを、フェンリルはくわえて誰もいない裏手に移動する。


「どうしたですか?それとも臆したですかアイタッ」


フェンリルは、軽くネルを叩き黙らせる。


「俺様にはこえぇもんなんざねぇ。ただちょっとここはまずい」


 結界も本格的なものが完成するまでの一時しのぎのものであり、ナーガが壊した結界にくらべればフェンリルにとって壁にもならない。


 問題は相手が、フェンリルとマスターであるルークを知っているという事だ。今は休校となっているが、ルークは再校となったらまた通えるのを楽しみにしている。


瞼にマスターであるルークが浮かぶ。


‐あんな大人になっちゃ駄目だよ~‐


「上等だ!ネルしっかり掴まりな!ここからぶち破ってくぞ」


 ネルがフェンリルの背中に掴まると同時に生み出され放たれた炎は、結界もろとも目の前の壁に大穴を開け、二頭はその大穴からルフツネイルの敷地に飛び込んでいった。








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