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気持ちの変化



ただ、このときの私に出来たことは、この場から離れるために当てもなく走り去ることだけだった。



何で…?

昨日までの小野くんは誰だったの?

どうして、どうして…っ




―――‐‐‐




気がつけばあまり人通りのない渡り廊下まで来ていた。

真ん中辺りで立ち止まり、壁にもたれながらしゃがんだ。

次の瞬間、我慢していた涙が溢れてきた。



「…っ」



声を押し殺す。

涙は止まらずに次々に流れていく。



今は1人になりたくて。


だから、誰にも会わないようにここまで来たのに。



だから、人気のないここに来たのに。



誰にも泣いてるってこと、気付かれたくなかったのに。




















「…言ったじゃん。“あいつはやめときな”って」




なのに、どうして先生はここにいるの?



「だ、だっ…て、ホ、ント、だっと…思わ、なかっ…た…。」



泣いてて上手く喋れない。



「はぁ…。」



ため息をつく先生。

ため息付くくらいなら、いないでよ。

ってか何でいるのよぉ。



「………まぁ。」



沈黙のあと小さく聞こえた声。

続きが気になって、耳を傾けてみる。



「少し、運がなかっただけだよ。」



はっきりした言い方じゃなかったけど、今の私にはこの言い方が嫌じゃなかった。


小野くんをけなすわけじゃなく、でも私の見る目がなかったとも言わなかった。

だから、嫌じゃなかった。

不意に伏せていた顔を上げた。

でも目の前にいると思った先生がいない。

思わずキョロキョロと周りを探した。

だけど、涙でよく見えなくて。

さっきまでは1人になりたかったのに、今は先生の姿が見えなくて少し不安になった。



「せん、せぇ?」



未緒が弱々しくそう言うと、浅野が軽く返事をした。



「ん?」



先生、いる…。

その声を聞いて、安心した自分に気がついた。




――――― - - -






「永岡、今日昼一緒に食おうよ!」



そう言う小野くん。

昨日までと何も変わらない様に見える。

でも、昨日の話しを聞いてしまったから、気がついてしまった。

小野くん、ちらちら飯田さんのこと見てる。

昨日までは小野くんに話しかけられて舞い上がっていたから、そんなことに気がつかなかった。



「あ、ごめんね。嘉乃たちと食べるから、いいや。」


「お、おぅ。わかった。」



小野くんはそう言うと高木くんたちのところに行った。

その姿を少しだけ目で追う。

小野くんを見るとまだ胸の奥が苦しくなる。

昨日の今日だし、まだ好きなんだ、って思う。

でも、知ってよかったのかも、とも思う。

あのままホントの小野くんを知らずに、幸せに浸かっていたら、もっと傷ついていたにちがいない。

未緒は目線を戻す。

すると、その会話を聞いていた嘉乃と祐子が来た。



「何で断ってたの?」


「あー、まぁ…。」


「もったいなぁい!せっかく最近いい感じだったのにぃ。」



祐子が全力で残念がる。

こう言ったのが祐子でよかった。

この言葉を違う友達が言ったらきっと嫌みに聞こえてた。

嘉乃と祐子は特別。

2人とは親友だから。

だから、さっきの言葉も私のこと応援してくれてたから言った、っていうのもわかる。



「いいんだ、何かそのうち冷めると思うし…。」


「えー、いいの?ホントにいいの?!」


「うん。」


「でもぉ…。」



私がそう言っても渋る祐子。

そんな祐子を見かねて嘉乃が諭すように言う。



「祐子、未緒がいいって言ってるんだから、いいんだよ。」



その様子が少しだけ可笑しくて笑えた。



でも、今回1番印象が変わったのは小野くん以上に先生だ。


生徒のこと好きとか言うのはやっぱり少し変だなって思うけど。

あの場に先生がいたことで、どっかで支えられたのかもしれない、って思う。

そーゆー意味ではちょっと印象変わったかも…。


少しだけ見直した。






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