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不要な忠告

「じゃあ、永岡ん家迎えに行くから。」





―――‐‐‐




ここ何日かはずっと小野くんとのデートの思い出に浸っている。

ドキドキしっぱなしだったなぁ…。

小野くんとは映画を観に行ったんだけど、映画館って少し薄暗いし小野くんがいつもより少し…かっこよく見えたりして、とても映画どころじゃなかった。

その後、2人で行ったハンバーガーショップで食べたハンバーガーもうまく喉を通らなかった。

恋すると何だかいつものことがうまく出来なくなる。

いいところを見せたいと思えば思うほどうまくいかなくなる。

…それだけ好きってことなのかな……。


毎回ここまで考えが行き着くと、恥ずかしくなり叫びたくなる。



「永岡、ここの答え何。」


「はぇ?!」



急に現実に引き戻される。

今は国語の授業中。

あいつが私をあてた。

私はあてられると思ってなく、阿保丸出しの声を出してしまった。

クラスのみんなが笑う。

もちろん小野くんも。

もー!!恥ずかしいじゃんっ!

あ、誰かから自分のせいだろってツッコミが聞こえてきそうだ。



「わかんないの?」



答えを急かしてくる。

聞いてなかったんだからわかるわけないでしょ?!

未緒は心の中で逆ギレした。

私は今それどころじゃないのよっ!!!

それに気付いたのかあいつは言った。



「わかんないなら、放課後補習ね。」



「え、はぁ?!」



みんなが憐れみの目で見てくる。

何か最近憐れまれ過ぎっ!

未緒の軽い怒りは誰にも理解されずに残りの授業は何事も無かったかのように進んでいった。

はぁあっ!

最悪…。




―――‐‐‐




放課後、私は1人教室にいた。

おっそいなぁ…。

あいつ、自分で残れとか言っといて遅刻とか?!

するとちょうど前のドアが開いて、あいつが入って来た。



「ん、ちゃんと来てんじゃん。」


「…いましたよ、30分前から。」


「偉い偉い。」



浅野は未緒の嫌味を聞いているのか、聞いていないのか話しを流した。

そして未緒の前の席を引いて座る。

未緒はそれを目だけで追う。



「これプリント。」


「………はぁい。」



未緒はそれを受け取り、さっさと解き始める。

その様子を浅野は黙って見ていたので、会話はない。

しばらくして、未緒が半分位問題を解き終わった頃だった。

浅野が口を開いた。



「永岡。」


「はい?」


「あいつはやめときなよ。」


「え、…なんのことですか?」



何のことを言っているのかわからなく、視線をプリントから正面に座る先生に移した。

相変わらず整っている顔が口にしたのは意外な名前だった。



「小野。」



先生が小野くんの名前を出した意味がよくわからなかった。

私が無言でいると先生は面倒くさそうにため息をはいた。



「小野が好きなんでしょ?」


「なっ…!何言ってんですか?!」



そうは言ってみたものの、今の私かなり焦ってる。

だってこいつが知ってるから。

嘉乃と祐子にしか言ってない、小野くんへの気持ちを知っていたから。



「見てればだいたいわかる。」



私の心が読めたのか、先生はそうやって言いのけた。

え、そんなに顔に出てるの、私。

誰にも言われたことが無かったから思ったことがなかった。



「も一回言う。あいつはやめた方がいい。」



黙っていると、再度、そして冷たくそう言い放った。

その言い方にカチンときた。



「せ、先生にそんなこと言われる筋合いない…んですけど。」


「あるんだけど。」


「何でですか。」



先生が強い目で私を見た。

今まで見たことのない、力のこもった目で私を見た。



「好きな女が傷つくのは見たくないでしょ、普通。」



っ!

そ、そう、だった…。

幸せ過ぎて忘れてたけど、私、先生に告白されたんだった。

この前のことが思い出される。

って、今の状況やばくない?!

教室に先生と2人きり。

私は何だか急に落ち着かなくなった。

でも、今はそれどころじゃなくて…。



「傷つくわけないじゃないですか!!」



私はそう言って立ち上がった。

何だか小野くんが侮辱された気がして嫌だった。

でも先生は表情を変えずに私を見上げたまま。

じっと見てくる。

私はその目に引き込まれそうになり居心地が悪くなって、鞄を持って教室から飛びだした。

いつかの時みたいに廊下を全速力で駆け抜けた。

学校のルールを何度も破ってごめんなさい。

でも、でもっ!

何かあの言い方だと小野くんが悪い人みたいじゃん!

先生の馬鹿!!





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