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予想外の展開

「じゃあ行こっか。」



小野くんに誘われて急遽一緒に帰ることになり、待ってくれている小野くんの横に並び歩き出す。

こんなに近くで話したことってないなぁ。

近くで見ても、やっぱり男らしい顔つきしてる。

でも、男臭さは感じさせないんだよね、小野くんって。



「永岡っていつももう少し帰るの早くない?」


「んー、そうかも…。」


「今日は何かあったの?用事とか。」


「…まぁ、あったって言えば、あったかな。」



幸せな気分に浸りすぎて忘れていたが、話しの流れでついさっきの出来事が蘇ってくる。



「………。」



横に小野くんがいる事も忘れて無言になった。

今日は純粋にいい日、だったわけじゃなかった。



「…?さっきも思ったんだけど、永岡今日どうしたの?」


「あ、べ、別にどうもしてないよ?」


「ふーん、ならいいんだけどさ。」



いかんいかん、せっかく小野くんと帰れる滅多にないチャンスなのに、あいつの事を考えるなんて。

どうにかしてこの感情が落ち着かなくなる話題から話しを逸らさねばと思い、思いを巡らす。

えーとえーと。

……あ。



「あ、そういえばそろそろ体育祭だよね。」


「ん、あぁ。あれだけだぜ、俺が活躍出来んのは。」


「えー、そんなことないでしょ。」



小野くんは苦笑いでそう言った。

でも右手の親指を突きたてながら自信満々で付け足した。



「でも体育祭の主役は誰にも渡さないけどな。」



カッコイイ…。

ぶっちゃけ冷静な話しをすれば、体育祭の主役って何なのかってなるけど。

けれどもそんなのは今の私たちには関係なくて。

小野くんは自信を持ってそう言うし、私はそれをカッコイイと思ってるのだから。

私たちはまだ高校生だ。

ちょっと位馬鹿なことも多めに見てほしい。



「私はダメだなぁ、走るのとかニガテ。友達の応援ばっかり。」



今度は私が首を横に振りながら苦笑いでそう言う。

すると小野くんは私の言葉に対して返事のような、そうでないような言葉を返してきた。



「あ、マジで?じゃあ、俺の応援頼んじゃおうかな。」


「っえ?!」



今、口に飲み物を含んでいたら確実に噴出していただろう。

それだけ私にとって彼のその発言は驚くべきものだった。

ぇ、え?!

今何て言った?!

“俺の応援頼んじゃおうかな。”?!

え、あ、あれ?



「なーんて、永岡がいいならだけど。」


「あ、えと…。」


「俺は永岡に応援してもらえたらやる気倍増だなぁー?」



そう言って小野くんは私の方をチラリと見る。

20センチ位上から私を見る小野くんの表情には断られるという選択肢を、はなから用意していないかのような自信が見受けられた。

それが妙に緊張感を引っ張り出してきて。

返事をするのにちょっと勇気を要した。



「え、えと。私なんかの応援でいいなら…。」


「マジで?!やったっ!じゃあよろしくな!」


「あ、うん、じゃあ、応援頑張るね…!」



私にとって大切な口約束が終わる頃、気がつけば私の家の前に着いていた。

自然に脚を止めると、小野くんも数歩先で同じように止まった。



「お、もう、永岡ん家か。じゃあ、また明日な!」


「あ、うん、バイバイ。」



軽く言葉を交わして、小野くんは走って行った。

私はそれをしばらく見送ってから急にスイッチが入ったかの様に玄関を開け、自分の部屋まで駆け込んでベッドに倒れこんだ。

…うそ。

うそうそうそ?!

つい3分前までのことがまだ本当のことという実感が湧かない。

でも、この心臓の鼓動の速さといい、頬が熱くなっていることといい、それがリアル感を出していた。

何かすごいドキドキしてる…。

私は発散の仕様も無いこの全身の高揚感から脚をじたばたさせる。

どうしよう、幸せ過ぎて死ぬかも…!!

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