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特別宿題

「永岡、放課後俺んとこ来て。」



担任で国語科のあいつに授業が終わってすぐに言われた。


ホントは行きたくない。本気で行きたくない。

でも、後々何か言われると、それはそれで面倒臭いから。

仕方なく素直にあいつのところへ向かう。

何かしたかなぁ。

腕組みをしながら放課後の廊下をまっすぐ歩いていく。

今まで出来るだけ関わらないように、目立たないキャラ演じてたつもりなんだけどなぁ。

そうこうしているうちに国語科準備室に着いてしまった。

反対側の窓から見える夕焼けがやけにきれいでちょっとだけ腹立たしい。

はぁあ。大きなため息をついて。

それからドアノブに手をかけた。



「失礼しまぁす」


「何そのやる気のない“失礼します”。」


「自分から来いって言っておきながらいきなりそんなこと言いますか普通。」


「まぁ、いいけど。」



なんだそれ。

思ってたとおりの変人。

だいたい、来たくもないのにわざわざ来たこの場所で、どうやってやる気を発揮しろというんだ。



「で、用って何ですか。」



さっさとこの国語科準備室という名の奴のテリトリーと、そこで奴と2人きりというシチュエーションから抜け出したくて本題に入るよう促す。

でも、それを全く察さずにあいつはマイペースに口を開いた。



「永岡、最近の調子はどうなの。」


「いや、別に普通ですけど…。」


「ふぅん。」



自分で聞いときながら、何だその反応。

いらっとしてきている自分を宥めながら話しの続きを待つ。



「じゃあ、何か気になることは。」


「…特に。」



あると言えばあるけどさ。

あんたが毎回授業の度にあてるとか。



「へぇ、永岡って結構無関心で生きてんだ。」



…はぁ?!何なのこいつはっ!!

さっきから失礼過ぎ!



「ってか鈍感?」



そしてどんどん話しを進めるんじゃない!!



「…何がですか。」


「だから、鈍感なのかって聞いてんのね、俺は。」


「どこがそう見えるんですか。」


「誰も永岡が鈍感なんて言ってないじゃん。聞いてるだけ。」


「っ。」



未緒は気付かないうちに浅野のペースにはまっていた。



「ホントに気付くことないの?鈍感じゃなければ気付くと思うんだけど。」



「あー!!わかりましたよ、もう!1つだけあります!!」



未緒は半ばやけくそになって叫んだ。



「毎回国語の授業のとき必ず私、当たるんですけど!!」


「それ。」


「へ…?」


「だから、それ。」


「え、あの、自分から言っといてなんですけど、全然話しが見えてこないんですけど…。」


「だから、俺はその話しをしたかったわけ。」



お目当てのものが出てきて満足そうな浅野。

そんな浅野に対して、未緒は全く話しがわからないようで。

頭の上にはてなを浮かべている。


え、何。

先生わかってて当ててたの?

意図的に?

というか、なんて遠回りをさせてくれたんだ、こいつは。



「じゃあ、さっさと先生から言ってくれればよかったじゃないですか。」



こんな面倒臭いことしないで。 とか思っても口にはしない。

これ以上話しを散らせて遠回りはしたくない。



「そーゆー気分じゃなかったし。」


「………。で、それがどうしたんですか。」


「何でだと思う?」


「毎回あてていたことは否定しないんですね。」


「何でだと思う?」



私の言葉には答えず、何度も同じ言葉を繰り返す先生。

その感じに脱力感を覚え、肩を落とす。



「はぁ…、それを一番知りたいの、私ですよ。」


「だから、考えてみてって。」


「……、私のこときら「宿題。」は、はぁ?!」


「だから、来週まで考えきて。宿題だから。」



そう言う先生の言葉は妙に有無を言わせない力を持っていた。

それを感じ取った私は、反論する気をなくして、仕方なく向きを変えてドアに手をかけた。


けど…。



「先生、来週まで考えるのめんどく「考えてくるだけ。そんなことも出来ないの、永岡?あ、今時の子は、考えることが出来ないっていうけど、本当なんだなぁー。へぇー、俺と4つしか変わらないのにびっくりだ。」



言いかけた言葉に被せられた言葉が右耳から私の頭の中を通り抜け。

そしてそれが怒り境界線を越えてしまうのに時間はかからなかった。



「誰がやらないって言いました?まだやりもしないことを出来ないって決め付けないでもらえますか?こんなの朝飯前ですから。絶対答えだして先生をぎゃふんと言わせてやりますから!!」



一気にそこまで言い、手にかけたドアノブを乱暴にひねり、勢いに任せ開けて閉めて廊下を全力で走り抜けた。







「朝飯前とか、ぎゃふんとか…。今時言わないだろ。」



未緒が去った後、浅野がそう言って笑っていたのをもちろん未緒は知る由もない。





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