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アフターケア、それから



先生のこと少しだけ見直した。




のに。




小野くんのことがあってから数日後、私は先生に呼ばれて、国語科準備室にいた。

先生はいつも通り、自分の椅子に座って、私を自分の前にある椅子に促した。



「最近どうなの、永岡」



どこかで聞いたこの言葉。

前は意味がわからなかったけど、今回は何の話しをしようとしているのか、なんとなくだけどわかる。



「まぁまぁです。」


「ふぅん。傷は癒えたわけ?」



直で聞いてくるなぁ…。

この人ぁ、オブラートに包むってことを知らないのかな、国語の教師のくせして。



「まだ完全にってわけじゃないですけど…」


「まぁ、そんな急に癒えたら、そもそも恋じゃないしね。」



そう言われて何か変な感じがした。

先生から見て、私は小野くんに恋してるように見えたんだ…。

え、いや、恋してなかったってことじゃないんだけど、改めて言われると、何だか変な感じ。



「それって、そんだけ私が小野くんを好きだったってことなんですか?」



私のことだけど、何となく聞いてみた。

何て答えてほしかったかはわからないけど…。

そしたら面倒くさそうに言い返された。



「そんなの俺に聞かないでよ。自分で考えたら?」



そりゃそうだ。

自分自身でわからないことが他人にわかるわけない。



「ですよねー。でも…、そのうち、この気持ちも消えてなくなるんだろうなぁって何となくだけど思うんです。」


「だろうね。けど、何でそう思ったの。」


「だって、まだまだ人を好きになったことが少ないし、今回が恋のゴールじゃないだろうな、って思うから。」



…………。

我ながら恥ずかしいことを言ったと思う。

ってか臭いよ!台詞が臭い!!

先生は私の言葉を聞いて少し呆気に取られた顔をしていた。

ちょっと!

何も言われないのが、一番恥ずかしいんですけど!!

すると、先生が口を開いた。



「“恋のゴール”ねぇ。上手いこと言うね、永岡。」


「え、あ、はぁ…。」



そこで褒められても何だか微妙。

自分が言ったことだけど、全然素直に喜べないよ、おい。



「じゃあ、ここが恋のゴールじゃないとわかったところで、話しなんだけど。」


「…はぁ。」



何回も恥ずかしいのを活用してくるね。

あれかな、新手の嫌がらせってやつなんですかな?



「俺はぶっちゃけ永岡が小野を好きって言ってたの、きつかったんだけど。」





「………………え。」



急に話しが変わりすぎて頭が着いていけなくて、“え”を言うだけにも随分時間がかかってしまった。



「でももう、小野への気持ちが薄れつつあるんでしょ?」


「う、薄れつつっていうか…」



私がそう答えると、先生は怪訝そうな表情をした。



「まぁ、そうだと言えばそうなんですけど…。」


「違うの?」


「わかりません…」



だってさっき、そのうち、って言ったばっかじゃんかさ。

なのにこんなに一気にまくし立てられても困りますからっ。



「自分のことなのに?」


「む、難しいんですよ!!」


「…」



半ば叫ぶようにいうと先生は急に黙った。

その目はこちらをしっかりと見据えて心なしか「はっきりした答えを出してよ」とでも言っているようだった。

何でよ!!



「…まぁ、前よりは気持ち治まってはいますけど。」



その目の効果にやられたのか、気が付くと無意識のうちに言葉を訂正していた。

そしてそれを聞いた先生は面白そうに笑い出した。



「じゃあ、遮る物はもうなくなったわけだ」


「…?」



相変わらずこの人の言うことは理解出来ないことが多くて。

そして最近のお決まりパターンになってきつつあるけど、私が考えているうちにどんどん話しを進めるっていうのもそのパターンのひとつになっている。



「俺、もう遠慮しないよ。」


「え、何をですか」



うん、だから、よくわからないうちに話しを進めるのやめてもらってもいいで



「何をって、永岡を惚れさせる為の秘策?」


「秘策っ?!」



心の中で思っていたことに被ってきたその言葉はいつもの調子の先生から発されていて。

何てことを言い出すんだよ、この人は!!!

秘策、何て言葉は、なかなか日常生活では使わないよっ。

だからその言葉に過敏に反応してしまう私がいて。



「そ。ってか、危機感なさすぎ。」


「…!」


「俺が教師だからって、手ぇ出さないと思ったら、それは大間違いだから。」



やばい、今までの言動で先生のスイッチを押してしまった、みたい、です。

え、だって…!






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