♯8 熱
スクルドが去った後。
「アリス!?」
ドサリ、と音を立ててアリスが倒れた。
「アリス…大丈夫か?」
ネロがアリスに駆け寄り、抱き上げる。
「うん…大丈夫」
そう言うアリスの肌は熱く、汗で濡れていた。
「…とても大丈夫に見えないんだが……」
「す、少し休めば良くなるから!」
そう言い、ネロの腕から逃げるようにアリスは立ち上がろうとするが、
身体に力が入らずすぐに崩れ落ちてしまう。
「ったく…」
「ひゃぁ!?」
―…こ、これは…
アリスは思ったことを口にする。
「これってお姫様抱っこ…」
「熱が出てる奴を担ぐ訳にもいかないからな…」
ネロが耳まで赤くして言う。
「ネロが赤くなると、私まで赤くなっちゃくちゃうよ…」
「うるせえ」
ネロが白い歯を見せて笑った。
*** *** ***
「ん……ここ……」
目が覚めると、最近見慣れた天井が見えた。
体を起こすと、少し頭が重く、熱かった。
ごそ、っと近くから聞こえた音に一瞬身体を固くする。
「ん…」
声が聞こえた方を見ると、赤茶色頭が見えた。
「ネロ?」
寝息が聞こえる。
「…寝てんだ」
ネロの寝顔を見つめながら、スクルドの言っていた単語を思い出す。
「騎士とか、本物とか…って何だろうね…」
そして、ネロの髪に指を絡めながら、その単語に思いを寄せた…