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祈り人  作者: 真辺 鈴華
7/9

#6 偏見

「ネロ…」

 脳裏にネロの姿が浮かぶ。

『アリス。直ぐそっちに行くから、待ってろよ!』

 ネロの声を聴いて少し安心する。

――― さて、と…

  ネロが来るまで、どうやってこの男たちの相手をしようか。

「…姉ちゃん。人の話聞いてんのか?」

 ニット帽を深く被った男が言う。

「人の話はしっかり聞けって、母ちゃんに習わなかったんじゃねーの?」

 Pコートを身に付けた男が言う。

 アリスは、不良には言われたくない事だな、と思うも、沈黙を貫き通そうと考えたのだが。

「お姉さん、祈り人でしょ?」

 男たちに不釣り合いな、育ちが良いであろう少女が言う。

「…そうですけど…」

 思わずそう言ったとたん、男たちの目つきが変わった。

「じゃぁ、姉ちゃんは俺らが今どういう状況か分かってるわけだ・・・」

 しまった、そう思うより早く、視界が暗くなっていく。

 意識が遠のいているのかと一瞬錯覚したが、違う。

男たちの身体から“闇”がその身体を覗かせているからだろう。

「あーあ…お姉さんのせーで、兄さん達の“闇”が出てきちゃったじゃん」

 先ほどの少女が、小首を傾げ、綺麗な金髪を揺らしながら言う。

そして、コートから掌くらいの何かを取り出し、弄び始めた。

「この町自体が基本的に祈り人を良く思っていない…」

 男たちの姿が崩れていく。

「時には命に関わるから、そういう偏見の事とかは知ってるはずなのに」

 シュッ、という軽い音が響いた後、少女の手には銀に光るものがあった。

「お姉さん。ぬけてるね」

「それとも、馬鹿なだけなの?」

「し、失礼な…」

 少女はケラケラと笑う。

「ちなみに、僕が兄さん達とどういう関係か、分かる?」

 幼い頃から母を見つめて育ってきたのだ。

それくらいは、分かるようになったつもりだ…

…少女が、“招かれざる者”だという事くらい…


***   ***   ***   ***



 透き通った水が湧き出る泉に、二人の少女が足を浸けていた。

「あーあ…スクルドったら、抜け駆けしちゃって…」

 頬を膨らませて、少女は言った。

「きっと、スクルドにも考えがあるのよ、ヴェルザンディ。」

 大人びた少女がそう、「スクルド」をフォローする。

「でも、ウルズ御姉様、あの子にそんな考えがあるように見えますか?」

 間を置いた後、「ウルズ」は答えた。

「…ごめんなさい。とてもそうは思えないわ…あの子はいつも「~だろう」って言ってことを起こしているから…」

「ですよね…はふう…私も行きたかったなぁ…」

「とりあえず、あの子が帰ってきたら叱ってやることにしましょう、ヴェル」

「そうですね、ウルズ御姉様」

 そう答えたもののヴェルザンディは、妹が少し羨ましいという気持ちは消えず、今直ぐ飛んでいきたいと思っていた…

 

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