#5 ユウナ
「え、ユウナ君!?イキナリなんですか?」
「そろそろ…熱がこもって熱くなってきたんだが…」
「ユウナは、北の方の出身だったからね~」
人ごみの中での厚着は、本人にしてみれば、とても辛いのだろう。
「…ユウナ君が着てる種類の国民服、結構高いんだから、大切に扱ってよ…?」
「知るか」
雪斗をあしらい、目に逆に悪そうな緑の服を身体から取り払う。
そこから現れたのは桃色一色の服。
ただ、ベルトと、そのベルトから成るポーチを除いて。
「む~…いつ見ても、ユウナって、さりげなくアタシより体型良いよね。」
ユノが頬を膨らませ、薄桃色の髪を引っ張る。
「痛いな…やめろ」
ユウナがユノを小突く。
「私たちは、与えられたものでやっていくしかないのだから」
ユウナの瞳が哀しげに光った。
*** +++ ***
その頃、アリスとネロは、ユーテアの街に辿り着いた。
駅から程よい場所に位置する町の為、アリスたちは疲れを癒すために良く利用している。
この日は、宿屋で休み、翌日、リリンの村へ向かう予定。
「だったのになぁ…」
アリスは、目の前のガラの悪そうな(というか悪い)男たちを見ながら、そう呟いた。
宿屋の馴染みの仲居に注意されたにも関わらず、危険な路地へと迷い込んでしまった。
「だって、此処広すぎるんだもん…」
ぶつぶつと言葉を呟きながら、男たちを観察する。
―――やっぱり、“闇”に喰われてる…
心が、無くなったような、顔。
初めて見たものの、なんとなくわかる。
書物通り過ぎるからだ。
やがてアリスは、”聖蹟”を強く握りしめ、何時かも呟いた言葉話口にする。