第八話
「少年、一騎打ちだ! 逃げるとは言うまい!」
レイの咆哮が無線から届いた。
それは挑発的だった。
ソウマは気圧された。
レイが魔導剣を展開した。
スラスターを吹かし、ソウマに襲い掛かった。
銀色の軌跡が空気を引き裂いた。
ソウマは咄嗟にシールドでガードした。
だが、その隙を突かれた。
レイがボディに強烈な蹴りを叩き込んだ。
ソウマは数メートル吹き飛ばされた。
テッカイ自身も一瞬バランスを崩した。
「ぐあっ……!」
ソウマは土の感触を鎧越しに感じた。
レイはすでに次の行動に移っていた。
ソウマは立ち上がり、盾の角度を微調整した。
「勝って帰る……ユナやみんなが待ってるんだ!」
そんな思いと死の予感が混じる。
集中力を無理やり研ぎ澄ました。
レイは距離を取った。
手放していたミサイルポッドを素早く拾い上げた。
ソウマに向かって放った。
ソウマは体をきりもみながら、辛うじて受け止めた。
守護魔導書の回路にわずかなひびが入った。
ソウマの視界が一瞬揺らぐ。
レイはミサイルポッドを捨てた。
両腕を構え、間合いを詰めてきた。
ソウマは後退した。
鎧の形態変化を試みた。
出力の乱れで形成が遅れた。
「くそ、集中しろ! 受けなきゃ死ぬ!」
ソウマは横に転がり、突進をかわした。
土が飛び散り、テッカイの足元をわずかに滑らせた。
レイは中距離を保った。
ロケット砲を連射した。
ソウマは障壁で耐えた。
衝撃が鎧の安定性を急速に削いだ。
「このまま続けば、身体がバラバラになる」
そんな危機感がソウマを襲った。
弾の連射が岩場を砕いた。
破片がソウマの周囲に降り注いだ。
ソウマは反撃の隙を探った。
レイのテッカイは砲撃の反動でわずかに体勢を崩した。
「今だ! アメノハバキリ、起動!」
ソウマは右腕に刃を展開した。
跳躍し、レイの砲口を狙って斬りつけた。
軌跡が砲身を掠めた。
レイは即座に腕を引き、回避した。
「惜しい……でも、いけるぞ!」
テツカガミからパルス砲が放たれた。
レイのテッカイをかすめた。
距離が離れているため、牽制にしかならなかった。
「ガキ、持ちこたえろ!」
「はい、カズマさん!」
クルーの援護が背中を押した。
パルスの余波がテッカイの左肩を襲う。
動きがわずかに鈍った。
「奴も限界か……」
レイはロケット砲を撃ち続けた。
ソウマはテツカガミのシルエットを見て閃いた。
「カズマさん、パルスを俺の攻撃に合わせて!」
ソウマは霧中の魔素を吸収した。
カズマが即座に応じた。
「いくらでも援護してやるよ!」
パルスが放たれる。
ソウマが両手で刃を構え、集中力を極限まで高めた。
「これで……決める!」
ソウマは飛び上がりパルスをその身に受けた。
そしてパルスと自身の魔力波長を同期させた。
刃の輪郭が魔力の奔流を受け、巨大化していった。
通常の三倍にまで膨張した。
ソウマはそれをレイに振り抜いた。
軌跡が空気を震わせた。
青白い光が戦場を一瞬照らした。
レイは咄嗟に魔導剣で受け止めた。
だが、剣が砕け散り、テッカイの片腕を根元から切り落とした。
レイはコックピット内で燃料枯渇を悟った。
「……ここまでやるか、化物め!」
テッカイのセンサーが最後の光を放った。
ソウマは反動で体勢を崩した。
ヘルメットに艦からの情報が投影された。
レイの脱出ポッドの軌道が表示された。
ジンの命令が耳元から聞こえた。
「ソウマ、敵の撤退を確認! 帰還せよ!」
「やっと……終わりか」
煙幕が広がった。
レイの脱出ポッドが霧の中に溶け込んだ。
ソウマはただ見つめるしかなかった。
戦場の土埃が静かに舞った。
テッカイの残骸から焦げた金属の臭いが広がった。




