第七話
ソウマは即座にハッチへ向かった。
だがミコトがブリッジから駆け寄ってきた。
手には折り畳まれたパイロットスーツとヘルメットを抱えていた。
「ソウマ、待って! 初出撃なんだから、ちゃんと着用して。艦からの情報がリアルタイムで投影されるヘルメットよ。音声もクリアに聞こえるし、戦況を把握しやすいわ。スーツは柔軟素材でできた全身型──鎧の下に着て、負担を減らすの」
ミコトは少し緊張気味だった。
彼女はスーツを広げてソウマの肩にかけた。
ヘルメットを調整しながら装着を手伝った。
スーツの生地が体にフィットした。
軽やかな感触が全身を包む。
ヘルメットのバイザーが降りた。
艦のセンサー表示が視界に投影される。
ジンの命令が耳元でクリアに届いた。
「準備よし、ソウマ。行け!」
「ありがとう、行ってきます!」
魔導書の刻印に触れた。
熱い波動が全身を駆け巡った。
「シロガラス、起動!」
刻印が眩い光を放ち、銀色の粒子が渦を巻いた。
流線型のメタリックアーマーが肩から胸にかけて鋭角的なプレートを重ねた。
背中のスラスターから炎が漏れ出した。
鋼鉄の守護神として威圧的にそびえる。
一方、カズマとリョウタは船内に留まり、補助魔導書を稼働させた。
補助魔導書は体の外に展開可能だ。
船の供給システムにリンクする。
そうすることで、自身だけの力では及ばない巨大な砲を展開できる。
カズマから魔力光が伸びた。
船外に巨大な魔素パルス砲「エンビ」が形成された。
リョウタのものからは榴弾砲が船体外側に展開した。
船内にアラートが甲高く鳴った。
戦術ディスプレイに、魔導騎兵のぼんやりした輪郭が映し出された。
四体のテッカイが構えていた。
照準をテツカガミに向けている。
ソウマは嫌な予感に駆られた。
「ハッチを開けてください! 俺が出ます! バックアップお願いします!」
ジンの命令で、テツカガミは乱気流を突き進む。
その中、ハッチが開いた。
ソウマは飛び出した。
リョウタの榴弾砲が援護射撃を加えた。
センサーが乱れる中、刃を展開した。
魔導騎兵に直接突撃した。
レイがシロガラス──ソウマの銀色の鎧──を捉えた。
冷徹な視線を向けた。
部下のクレン、クロウ、シオンに即座に指示を飛ばした。
「作戦通り。お前らはこのままキリハシラに向かえ。塔の防衛を固めろ。補給線の要だ。シロガラスは俺が引き受けるが、霧が晴れたら合流を試せ」
部下たちがミサイルを構えたまま、キリハシラへ急行した。
レイは単独でソウマに迫った。
キリハシラ攻略戦が、偽信号の囮を起点に始まった。
ソウマはレイに斬りかかった。
「お前らがいなければ!」
レイはミサイルを手放した。
魔導剣を展開し、応戦した。
二人は激しく斬りつけ合った。
激突が周囲の空気を渦巻かせた。
霧の粒子が反射して光の尾を引いた。
銀色の軌跡と青黒い剣撃が交錯し、視界を一瞬白く染める。
ソウマの一閃が機体を掠めた。
レイの反撃がソウマのシールドを弾いた。
互いの動きが探り合う中、ソウマの呼吸が荒くなった。
鎧の制御を微妙に乱した。
「焦るなよ、少年!」
レイの嘲笑が響いた。
その奥に警戒の色が差した。
ソウマの動きが明らかに良くなっていた。
攻撃の軌跡が鋭くなった。
タイミングが速くなり、レイの剣をわずかに押し返した。
ソウマ自身もその成長を感じ取った。
「この力……体が覚えてる!」
レイの瞳がわずかに見開いた。
「成長したか……センスか、これもシロガラスの力か!」
一方、キリハシラの補給塔では、テツカガミのクルーが一方的な優勢を築いていた。
防衛のテッカイ部隊が反撃を試みた。
カズマのパルス砲が光を放つ。
敵の回路を一瞬で行動不能に陥れた。
リョウタの榴弾砲がその隙を突き、次々と打ち砕いていった。
キリハシラの内部は歩兵部隊しかおらず、抵抗は散発的だった。
テツカガミの主砲「アラハバキ」が放たれた。
塔の基部に叩き込み、鉄骨を溶かした。
塔が傾き、業火が赤く染めた。
「塔のコアを捉えた! あと一撃だ!」
後方からレイの部下三機が勢いに任せて接近した。
三機はようやくキリハシラの惨状を捉えた。
クレンはコックピットで、家族の仇を思い浮かべた。
憎悪が爆発した。
「……よくもここまで! 死ねええ!」
クレンが先頭でミサイルを発射した。
ベテランのクロウが慌てて止める。
「クレン、待て! 距離が近い……くそ、間に合わねえ!」
シオンもクレンに感情を煽られ、ミサイルを放った。
「撃つしかない……ここで、今!」
テツカガミのセンサーが攻撃を検知した。
ジンがブリッジで即座に指示を飛ばした。
「ヤタノカガミ、起動! 迎撃態勢だ!」
魔素障壁が船体を包んだ。
ミサイルがシールドに触れた瞬間、連続爆発が起きた。
テツカガミは爆炎に包まれた。
船が激しく揺れた。
クレンがコックピットで拳を握った。
「やった……沈めた!」
クロウは指示した。
「撤退しろ! 散開して後で合流だ……!」
テツカガミは無傷だった。
爆炎の向こうから、パルス砲と榴弾砲が三機を狙っていた。
カズマのパルス砲が、三機の動きを一瞬で封じた。
続いてリョウタの榴弾砲がピンポイントでとどめを刺した。
そして、ジンが号令を下した。
「アラハバキ発射用意、撃て!」
テツカガミの主砲アラハバキが最終一撃を放った。
キリハシラの補給塔を完全に陥落させた。
塔の基部が崩れた。
魔素タンクが誘爆し崩壊した。
レイのコックピットでは、部下の断末魔が響いた。
彼は操縦桿を握りつぶした。
「……逸ったか」
冷静さを取り戻そうと撤退ルートを再計算した。
ソウマにミコトから連絡が入った。
「作戦成功。帰還せよ」
ソウマは魔導書を握り直した。
「……あとはコイツさえ倒せば」




