第六話
旧高知の旧越知。
公国軍の小型補給塔、キリハシラ。
テッカイ四機が構えていた。
レイの指が操縦桿を強く握りしめた。
ムカイハラの失態が脳裏をよぎる。
あの白銀の鎧──通称シロガラス──は、帝国の新兵器だ。
ガルドの斧槌がシロガラスに断ち切られた。
ミラの突進が弾き返された瞬間。
二人の断末魔が耳に残った。
「あんな過ち、二度とあってなるものか」
レイの瞳に、復讐の炎がより強く灯った。
「全機、ブリーフィング開始。回線が不安定だ。ムカイハラの敗北を教訓に、簡潔にいく」
三機のテッカイ。
クレン、クロウ、シオンのコックピットに立体ホログラムが投影された。
ムカイハラの戦闘ログが再生された。
シロガラスの銀色シルエットが回転した。
レイが拡大した。
「標的はテツカガミ。ムカイハラから脱出した残党だ。シロガラスのデータを回収せよ。データによるとパイロットはソウマ・ツキヤマ。少年だが、ガルドとミラを葬った奴らの切り札だ。全機でヒット&アウェイを徹底。テツカガミにミサイルを一撃込めば、即座に下がれ。乱気流を活かし、追撃を誘うな」
ベテランのクロウが割り込んだ。
「了解、少佐。ムカイハラの仇……ガルドの斧槌が無駄にならねえよう、俺のミサイルでテツカガミを抉るぜ」
彼の機体が、ミサイルの射出ルートを強調した。
若手エースのシオンは鋭く分析した。
「少佐、粒子濃度が視界を四割低下。テッカイのセンサーは耐性がありますが、シロガラスのシグナルが偽装される可能性大。私の機体で左右からミサイル挟撃、クロウの突進を援護します」
彼女の分析がログに反映された。
新人のクレンが、ログを見て顔を青ざめさせた。
「少……少佐、了解です。逃げ切れるかな……」
彼女の言葉に、レイの瞳が一瞬柔らかくなった。
「シロガラスが早々に出てきたら、全機でキリハシラに向かえ。塔の防衛部隊と合流し、そちらの作戦に参加だ。その際、シロガラスは俺が相手する」
レイはクレンの機体に撤退ルートを割り当てた。
三機が位置を調整した。
クロウの「仇討ちだ!」、シオンの「挟撃準備完了」、クレンの「撤退ルート、確認!」が重なった。
レイは操縦桿を握り直した。
「……この手で、終わらせる」
一方、テツカガミのブリッジからジンの声が鋭く響いた。
「敵影確認! レイの部隊、三機だ! 全員、戦闘配置!」
彼は戦術マップを広げた。
霧圏の立体投影に指を走らせた。
「キリハシラが近い。奴らの補給塔を叩けば、追撃を断てる」
テツカガミは旧愛媛の旧大洲、月光要塞カゲトリデを目指していた。
エンジンの出力が不安定になった。
ブリッジの計器盤が警告音を断続的に響かせた。
ノゾミがコンソールを確認した。
「出力が三割低下してます!」
クルーたちの顔に不安が広がった。
ジンが地図を睨みながら呟いた。
「霧圏は、大戦の置き土産だ。魔素吸収装置がないここじゃ、機体も不安定になる。気をつけろ」
ジンは偽の移動ルート信号を囮に使い、キリハシラを奇襲する作戦を立案した。
「偽の移動ルート信号をキリハシラに流せ──『テツカガミが霧圏の外へ逃げていく』ように見せかけて、奴らの目を逸らせ。ミコト、敵の反応を追跡。カズマ、リョウタ、戦闘準備しろ!」
ジンの指示に、ブリッジのクルーが一斉に動き出した。
戦術マップの光が、船内の緊張を映し出した。
ミコトは冷静に報告した。
「準備完了。偽信号送信──敵の動きを追跡中」
公国軍の反応が、わずかに遅れ始める。
囮が効いている証拠だ。
カズマはソウマを一瞥して目を逸らした。
「ガキにばっかり頼ってられるかよ」
リョウタは静かに呟いた。
「ソウマ、頼むぞ」
ノゾミはナビゲーションを再確認した。
「乱気流、回避ルートを計算中。キリハシラまであと五分!」
ジンは戦術マップを睨んだ。
「ソウマ、援護を頼む。俺たちが生き残るために、みんなで戦うんだ」




