表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界独立戦争 ~継承された守護魔道~  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/38

第五話

 テツカガミの甲板には襲撃の爪痕が残っていた。

 格納庫の床には戦闘の残骸が散乱していた。

 簡易の清掃隊が慌ただしく片付けを進めていた。

 クルーたちの制服は煤と血で汚れていた。

 船はナビゲーションシステムを頼りにした。

 テツカガミはムカイハラの残骸を遠くに置き去りにした。

 ジンがディスプレイの前に立ち、クルーたちに視線を向けた。

「状況報告! ソウマの状態は? 追撃の兆候は?」

 皆の顔に緊張が走った。

「まだ子供だ。気をつかってやれ」

 ミコトが冷静に応じる。

「格納庫で休んでいます。傷は軽微ですが、ショック状態。ユナが付き添っています。センサーに……粒子雲の彼方で反応が動いてる!」

 ミコトの指がデバイスを高速で滑らせた。

 ノイズをフィルタリングしようとした。

 センサーの反応がぼんやりと広がった。

 敵の規模を正確に測れなかった。

 ブリッジの空気が一気に張り詰めた。

 カズマが目を細める。

「まだガキだってのによ」

 カズマは苛立ちを隠しきれなかった。

 リョウタが静かに頷く。

「村の喪失は俺も痛い」

 ノゾミがコンソールを叩く。

「推進系が乱れてる! 粒子帯を抜けるまで耐えられるか分かりません……!」


 ソウマは格納庫の隅で膝を抱えていた。

 壁は冷たく湿っていた。

 戦闘の疲労が骨まで染み渡った。

 ユナがそっと近づいた。

 ソウマの肩に手を置いた。

「ソウマ……大丈夫?」

 ユナは優しく肩を撫でた。

「あなたが戦ってくれたから、私たち生き残れたんだよ。あなたが、止めてくれなかったら……」

 ソウマの耳に優しく届いた。

 だが、彼女の制服の袖口には母の血の染みが残っていた。

 触れる手が微かに湿っていた。

 ソウマは顔を上げた。

 ユナの目を見つめた。

 彼女の瞳に涙の痕が見えた。

「ユナ、君こそ……大丈夫だった? ごめん……俺ばっかり弱音吐いて」

 ユナは唇を噛んだ。

 ソウマの隣に座った。

「うん……まだ怖いよ、正直。……もし私がもっと強かったら、助けられたのかなって」

 ユナの膝が床に触れた。

 金属の冷たさが体温を奪った。

 彼女の瞳の奥に、炎の残像がちらついた。

 息が白く漏れた。

 ソウマはユナの手をそっと握った。

「そんな風に自分を責めないで。君はいつも、みんなの光だった。君がいてくれるから、守りたいって思えるんだ」

 だが、言葉の途中で船体の振動が激しくなった。

 手が離れかけた。

 ソウマの手がユナの指を包んだ。

 互いの体温が冷たさを押し返した。

 握る力がわずかに強くなった。

 戦闘の傷跡が手のひらに痛みを呼び起こした。

 ユナは小さく笑った。

「ふふ、元気つけようと思ったら、逆に元気づけられちゃったね」

「ユナ……君の言葉が、俺の鎖を少し軽くしてくれた。全てが終わったら、戻ろう。約束だ」

 ユナは頷いた。

 ソウマの額にそっと額を寄せた。

 二人の息が混じり合った。

 格納庫の冷たい空気が一瞬、温もりに変わる。

 ユナの瞳が近くで輝き、ソウマの心臓が激しく鳴った。

 そっと、ユナの額がソウマの額に寄せられた。

 二人の息が混じり合い、互いの痛みを分かち合うような静かな触れ合い。

 戦争の重みが一瞬だけ遠ざかり、短い安堵の温もりが胸に広がった。

 ソウマの目が閉じ、ユナの指が彼の頰を撫でた。

 一瞬、世界が二人だけになった。

 その矢先──格納庫の振動が一瞬止まった。

 警報が甲高く鳴り響いた。

 二人は反射的に離れ、息を飲んだ。

 通信機からジンの声が割れて届いた。

「全クルー、戦闘態勢! 敵影確認!」

 格納庫のハッチが自動で閉じ始めた。

 その中で、二人は即座に立ち上がった。

 互いの手を強く握り直した。

 ユナの頰がわずかに赤く染まった。

 ソウマの瞳に決意の炎が灯った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ