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魔界独立戦争 ~継承された守護魔道~  作者: 川合 佑樹


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第四話

 村の奥深く、偽装された農業施設の地下格納庫。

 ムカイハラの秘密研究拠点だった。

 研究開発を隠すために建てた村だ。

 ジン・キオカをはじめとする正規士官たちが潜伏していた。

「全員、テツカガミへ! 魔導書と生存者を回収しろ!」

 肩の帝国紋章がランプの光に鈍く輝く。

 カズマ・オオイシとリョウタ・イワサキが補助魔導書を抱えた。

 ノゾミ・モリハラがエンジンを点火した。

 ミコト・ホシズナが回線を確保する。

 地下ハッチが開いた。

 テツカガミの巨体がゆっくりと地表へ浮上した。

 ムカイハラの残骸を後にする中。

 ミコトが瓦礫の中からユナを支えた。

 ジンの救援隊がソウマの元へ急いだ。

「……ジンさん? どうしてここに!」

「今は疑うな、少年。村の秘密を知ってるのは俺たちだけだ。乗れ、生き延びろ」

 周囲の火災余波で熱風が隊員を煽った。

 ソウマはジンの姿に驚いた。

 それでも手を伸ばした。

「農夫」として知っていた男が士官だと知った。

 胸に不信の棘が刺さる。

 それでも、わずかな救いの光を投げかける。

 帝国の魔導輸送機テツカガミ。

 ジンは二十代半ばの正規士官だ。

 研究の試験運用を監督していた。

 襲撃で正規乗員の大半を失った。

 臨時船長に任命された。

 自身も軽傷を負った。

 額の血を拭いながら、彼は鋭い目つきでクルーを統率した。

 肩の紋章が責任の重さを物語る。

「皆、落ち着け! テツカガミで脱出する」

 号令にわずかな震えが混じった。

 ジンはソウマを一瞥した。

 血と煤にまみれた少年の姿に目を細めた。

 その目に、自身の過去の喪失がよぎった。

 ソウマは頷いた。

 カズマは呟いた。

「船長、少年の魔導書……あれを帝国に渡す気か? 危ねえぞ」

 ジンが応えた。

「渡さない。だが、守る価値はある。皆、集中しろ──脱出が優先だ!」

 ジンがソウマを一瞥し続けた。

「帝国は魔族の実験に執着してる。お前が魔族だとバレれば、研究施設送りだ。守護魔導書は一度登録されたお前以外使えない。絶対に守れ。君の道を照らす唯一の光だ」

 突然、船内の警報が鳴り、言葉を急がせた。

 ジンがクルーに視線を向け、続けた。

「カズマ、リョウタ、機密データを保護しろ。ノゾミ、エンジンの調整を急げ。ミコト、敵の追跡を回避しろ。訓練の成果をここで証明しろ!」

 クルーには帝国の正規兵が加わっていた。

 ソウマは彼らの素早い動きに圧倒された。

 金色のポニーテールを揺らすミコトがコンソールを操作した。

「追跡信号、遮断中」

 信号の残渣で画面が一瞬乱れた。

 カズマがソウマを睨んだ。

「邪魔だから、その辺りに座ってろガキ」

 リョウタが魔素榴弾砲「ハクゲイ」のプログラムを調整していた。

「安心しろ少年、俺たちも守る」

 ノゾミが叫んだ。

「出力最大! 突き抜けるわよ!」

 彼らはジンの指揮で、テツカガミを急ピッチで蘇らせる。

 冷酷さと人間の熱さが入り混じる。

 テツカガミはエンジンをフル稼働させた。

 甲板が激しく振動した。

 過負荷で警告音が鳴った。

 クルーが即時調整を強いられた。

 ナビゲーションシステムが低空飛行のルートを確保した。

 ムカイハラの残骸を後にし、船は暗闇を突き進む。

 ソウマは駆け寄り、彼女の手を強く握った。

 ユナの指は冷たかった。

 握り返す力が弱く、ショック状態を示していた。

 家族を失った恐怖と悲しみが瞳に宿っていた。

 母が最後に炎に飲み込まれた姿が、ユナの心に焼き付いていた。

「ミコトが私を船に引き込んだの……。でも、母さんたちは炎の中で……あの光を、守ろうとして……」

 言葉の途中で嗚咽が漏れた。

 ユナの涙が頬を濡らした。

「ソウマ……私、怖くて……」

「俺の力で、絶対に取り戻す。約束だよ、ユナ」

 ミコトが割り込んだ。

「二人とも、甘いこと言ってる場合じゃないわ。追手が近いのよ!」

 周囲のクルーが静かに聞き、わずかな沈黙が流れた。

 ユナが小さく頷き、涙を堪えて呟いた。

「……私も、頑張るよ」

 決意の裏に現実の絶望が覗いた。

 ミコトが操縦席から振り返る。

「私たちだって気持ちは一緒よ」

 画面の警報が再び鳴り、言葉を切った。

 ソウマはユナの手を握り直し、力を込めた。

 彼の瞳に、霧の向こうの一筋の光が映った。

 だが、その光の奥には、レイのテッカイがまだ潜んでいるような気がした。

 魔界に新たな嵐の予感を残した。


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