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魔界独立戦争 ~継承された守護魔道~  作者: 川合 佑樹


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第三十八話

 数ヶ月後。

 公国の独立維持と共同運営が正式に決定した。

 旧香川の旧金刀比羅山に築かれた新公国基地「テンカイ」は、霧圏の要衝として輝いていた。

 山頂の要塞跡地に、灯が青く灯る。

 魔鉱の脈が壁を脈打っていた。

 基地の奥深く、厳重な警備の会議室で、ギゲンとシキが密会した。

 部屋の扉は回路で封鎖され、外界の音を遮断していた。

 卓の上には、共同開発の地図と魔鉱石のサンプルが並んでいた。

 ギゲンは軍服の襟を正し、満足げに笑った。

「すべてうまくいきましたな、シキ殿。メッカイサイの崩壊からここまで──クロノ家の残党を抑え、支援を確保するとは。魔界の未来は、我々の手中だ」

 シキは銀髪を優雅に払い、微笑を返した。

「そうだな、将軍。民衆は畑の再生に喜び、帝国の資源が流れ込む。帝国も、魔鉱石の利権で潤っているだろう」

 ギゲンはグラスを傾け、目を細めた。

「恐ろしい手腕だ。こうまでうまくいくとは……私は出世し、魔鉱石の利権を大手に引き受けられた。君のおかげだよ」

 シキの瞳が一瞬冷たく光ったが、笑みを崩さなかった。

「お互い様よ、ギゲン。帝国も公国も、変わらぬ野心の巣窟だわ」

 部屋の影から、黒のベールに身を包んだ女性が現れた。

 ミコトだった。

 金色のポニーテールがベールの隙間から零れ、冷たい瞳がギゲンを射抜いた。

 傍らにエリナが立ち、姉妹の絆を静かに示すように手を重ねた。

 ミコト──エリナの姉──は、テツカガミにスパイとして潜り込んだ。

 すべてを誘導していたのだ。

 ログの解析。

 クルーの動きの報告。

 ソウマの魔導書の位置まで。

 彼女の明るい笑顔は、すべて仮面だった。

 ギゲンはグラスを置き、笑いを漏らした。

「帝国も一枚岩ではないな。ミコト中尉。テツカガミの英雄が、クロノ家の影とは。面白い」

 シキは優雅に立ち上がり、微笑んだ。

「公国もですわ、将軍。クロノの誇りは、血だけではないのよ」

 ギゲンの瞳がシキを捉え、すべてを察した。

「シキ殿、クロノの野心は尽きぬな。だが、帝国の利権は俺のものだ。裏切りは許さんぞ」

「将軍、野心は鏡のようなもの。映すのは、あなた自身よ」

 ギゲンは剣を抜こうと手を伸ばしたが、間に合わなかった。

 エリナの杖が衝撃波を放ち、剣を封じた。

 ミコトが魔導書を発動し、魔素ワイヤーがギゲンの胸を貫いた。

 ギゲンは胸を押さえ、床に倒れ込んだ。

「くそ……裏切り者の……」

 息絶える間際、彼の瞳に恐怖心が宿った。

 ミコトはベールを払い、冷たく呟いた。

「英雄? ただの駒よ」

 シキは静かにグラスを置き、部屋の闇に溶け込んだ。

「真の自由は、等しく死から生まれるものよ」


 五年後。

 帝国の首都「フッコク」、旧熊本の旧阿蘇山は活気で溢れていた。

 人々は共同開発の恩恵を受けていた。

 食糧自給率を徐々に上げていく。

 畑には結晶植物が広がり、霧圏の浄化が進む。

 子供たちの笑い声が山間に響いた。

 魔鉱の共同管理は成功を収め、帝国と公国の交易船が空を往還した。

 ソウマの守護魔導書は、浄化の象徴として公国に留まった。

 ムカイハラの畑を青く照らしていた。

 しかし、その平和は脆かった。

 フッコクの空に、突如として影が落ちた。

 魔素核ミサイルが雨のように降り注いだ。

 空を裂く青白い尾が、街を炎の渦に変える。

 爆音が大地を震わせた。

 建物が崩れ落ちる。

 人々の悲鳴が霧に溶けた。

 食糧倉庫が誘爆し、畑の苗が灰に変わった。

 防衛塔が次々と沈黙した。

 ミサイルの雨は、容赦なく首都を焼き払った。

 公国指令室──テンカイの深部。

 そこにはシキ、ソウマ、ミコトの姿があった。

 指令室の壁はモニターで覆われていた。

 フッコクの惨状がリアルタイムで投影される。

 炎の渦が画面を赤く染め、悲鳴の断片が漏れ聞こえた。

 シキは銀髪を優雅に払い、微笑を浮かべた。

「始まったわね。帝国の心臓を抉る、完璧な一撃だわ。よくやりました、ソウマ」

 ミコトは黒のベールを纏い、コンソールを確認した。

「衛星軌道のミサイル、九割命中。帝国は、もう動けないわ」

 ソウマは魔導書を握りしめ、モニターを睨んだ。

 瞳に赤い魔力が宿っていた。

「帝国は……許しちゃいけないんだ」

 シキはソウマの肩に手を置き、囁いた。

「あなたのおかげで本当の戦争が終わったわ。帝国の鎖を断ち、真の魔界が築かれる。ユナの畑も、永遠の光を灯すわ」

 ソウマの指が魔導書の刻印をなぞった。

 胸に疼きが走ったが、瞳の奥に新たな炎が灯った。

 指令室の扉が開き、公国軍の将校たちが入室した。

 皆の視線がモニターに注がれ、静かな歓声が上がった。

 ミサイルの雨は止まず、フッコクの空を灰に染め続けた。

 シキの笑みが部屋を満たした。

「これで、すべてが我々のもの。守護者の道は、闇の中を照らす光よ」

 ソウマは無言で魔導書を開いた。

 銀色の粒子が部屋に舞い、モニターの炎を映した。

 霧の向こうに、影が広がる。

 果てしない争いの予感が、静かに迫っていた。



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