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魔界独立戦争 ~継承された守護魔道~  作者: 川合 佑樹


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第三十五話

 ギゲンのテツリュウ、耐性兵が要塞の残骸に突入した。

 帝国紋章の旗が瓦礫の頂上に掲げられた。

 兵たちは汗を滴らせた。

 銃口を下げて周囲を警戒した。

 公国軍の残党が降伏の白旗をゆっくり掲げた。

 その姿がぼんやりと浮かび上がった。

 ギゲンはテツリュウの甲板からクレーターを睨んだ。

 全艦隊に号令を下した。

「制圧完了。残存敵を掃討し、要塞の基幹システムを確保せよ」

 兵士たちのブーツが瓦礫を踏み砕いた。

 負傷者の呻きが漏れ聞こえた。

 公国軍の降伏兵が膝をつき、手を挙げた。

 帝国軍が銃口が向けた。

 緊張した空気が張り詰めた。

 ギゲンは旗艦のブリッジで戦術マップを睨んだ。

 損失データを確認した。

 艦隊の半数が機能不全を起こした。

 兵士の三分の一が放射性障害で苦しんだ。

 彼は勝利の代償を冷徹に計算した。

「この要塞を掌握すれば、この作戦は終了とする」

 参謀たちが頷いた。

 誰もが疲弊の色を隠せなかった。

 クレーターの底では、工兵がシャクゴクの残骸を分解した。

 回路の破片を回収していた。

 帝国軍の遺体が瓦礫に埋もれた。

 兵の一人が呟いた。

「これは勝ったのか……本当に」

 突然、シキの無線が轟いた。

 霧圏全体の通信網を震わせた。

 帝国艦隊のスピーカーからノイズ混じりに響き渡った。

 シキの声は増幅装置で強化された。

 公国と帝国の全領土に届いた。

 帝国兵たちが耳を傾けた。

 公国軍の残存兵たちが聞き入った。

 その放送はテントや艦艇の内部にまで浸透した。

 戦争の余熱を静かに冷ました。

「公国の民よ、帝国の民よ、聞け! ユウエンとメイテンの死はメッカイサイの炎に沈んだ。クロノ家の復讐は魔界を呪いに縛り、シユウの空を墜とし、キオウの炎を消した。我々は敗れた。だが、この敗北は新たな始まりだ。私は新公王として宣言する──全軍、攻撃を停止せよ! 戦争は終わる!」

 彼女は回路を震わせた。

 スクリーンに映し出された。

 ムカイハラの焼けた畑。

 シユウが空を舞う姿。

 キオウのナラクテンマが炎に包まれた瞬間。

 シキの銀髪が揺れ、彼女は続けた。

「帝国の搾取は、家族を捨て駒にし、変異した者たちの力を道具とした。我々は魔鉱の共同管理を提案し、強制労働の鎖を断つ。変異した者たちの力は、魔界の再生の鍵だ。畑を守る者たちが、自らの手で自由の光を灯す。結晶植物の畑を甦らせ、自然を取り戻す。それが我々の未来だ。一部の戦士が誇りを手に消えたが、我々は団結し、自由を選ぶ。帝国の民よ、搾取の鎖を断ち、共に歩め。心の魔導書が、平和を築くのだ」

 ムカイハラの避難民たちは焼けた畑の端でスクリーンを見上げた。

 涙を浮かべた。

 帝国兵たちはブリッジで放送を聞いた。

 肩の紋章を一瞥しながら互いに視線を交わした。

 シキの声は、戦争の傷跡を優しく撫でた。

 緊張を少しずつ和らげた。

 完全な静寂は数時間後まで訪れなかった。

 テツカガミのブリッジで、ギゲンの通信が響いた。

「シキの放送は降伏だ。だが、策略の可能性を排除するな。監視を続けろ」

 ジンが呟いた。

「降伏か……」

 その時、ソウマの通信が届いた。

「ジンさん。シキの放送……本当に和平になるんですか?」

 ジンは一瞬目を閉じた。

「ああ、ソウマ。共同管理の提案だ。魔鉱の共有、強制労働の廃止。君の力が鍵になった。お前は村を守るどころか、みんなの未来を守ったんだ。よく頑張った」

 ソウマの少し明るく返答した。

「ジンさん、ありがとうございます。俺も……父さんの遺志が、こんな形で報われるなんて。一緒に、畑を甦らせましょう」

 ジンは小さく笑った。

「ああ、約束だ。お前のような守護者がいる限り、魔界は変わるさ」

 ブリッジの空気が一瞬緩んだ。

 カズマがため息を吐いた。

「ようやく終わったか……二度と戦争はしたくないね」

 リョウタが静かに窓の外を眺めた。

 ノゾミが操縦桿を緩めた。

 艦隊の残存艇がゆっくり巡回した。

 ブリッジの計器盤がようやく警告音を止めた。

 クルーたちの疲れた溜息が部屋を満たした。

 格納庫で、ソウマは膝をついた。

 空気が冷たく淀んだ。

 ソウマの膝が金属床に沈んだ。

「そうか……平和になったのか。やった」

 ユナが駆け寄り、ソウマを抱きしめた。

「ソウマ。おめでとう。世界を救ったんだよ!」

 ユナの抱擁は温かかった。

 彼女の手が優しく震えていた。

 ユナの瞳に涙が浮かんだ。

 格納庫のランプが二人の影を長く伸ばした。

 ユナはソウマの肩に顔を埋めた。

 ソウマは彼女の手を強く握り、指輪の光を見つめた。

 公国の未来が新たな章を刻み始めた。

 完全な平和への道はまだ遠い。

 それでも、ソウマの胸に灯る光が、霧の向こうに一筋の道を示した。


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