第三十四話
シャクゴクのレーザーが荒野を貫いた。
遠くの魔導艇の甲板でクルーたちがバランスを崩した。
「シールド耐久ゼロ!」
レックウさえも余波で旋回を乱された。
爆風の渦が荒野全体を巻き込んだ。
ソウマの鎧表面が熱で歪み始めた。
ソウマは障壁を展開し、辛うじて耐えた。
熱波が鎧を焦がした。
装甲の表面が発光した。
熱波を反射したが、過負荷で軋んだ。
ソウマの視界が熱歪みで揺れた。
体が後方へ数メートル吹き飛ばされた。
ソウマは体勢を立て直そうとした。
左腕の関節が熱で変形し、一瞬動きが止まった。
クロノスは近すぎた。
衝撃波がスラスターに直撃した。
クロノスの推進システム回路がショートを起こした。
レイのコックピットで警報音に包まれた。
画面に警告表示が乱れ飛んだ。
機体のバランスが崩れ、膝をついた。
「システム再起動……出力……三十パーセント低下か!」
公国軍の部下の通信がノイズ混じりで入った。
「レイ様、撤退を!」
レイは唇を噛んだ。
画面のソウマの位置を睨んだ。
「ここで、終わらせられるわけがどこにある!」
機体のバランスを回復させるために、補助ブースターを強引に噴射させた。
「ソウマ、生きてるか!?」
ノイズ混じりのクルーの通信が断続的に聞こえてきた。
テツカガミは、レーザーをかすめていた。
甲板が歪み、窓にひびが入った。
ノゾミの指が操縦桿を強く引いた。
船を急旋回させ、ノゾミが叫んだ。
「出力低下! 墜落寸前!」
船体の高度が急激に低下した。
ノゾミは歯を食いしばった。
ルートを再計算した。
「右旋回で岩場に隠れます!」
船内が暗くなった。
警報音が絶え間なく鳴った。
ユナが通信機を握りしめ、叫んだ。
「ソウマ! ……私、信じてるよ。あなたなら、切り抜けられる!」
ノイズを貫いて心に響いた。
「ユナ……」
彼女の波動が大気中の魔素を通じてソウマに届いた。
ソウマの視界にムカイハラの畑が浮かんだ。
魔力の流れが鎧の回路を活性化した。
ソウマの視界がクリアになった。
「ユナ、一緒だ……今、君の想いに満たされている。今なら何でもできそうだ!」
魔導書が光り輝いた。
魔力の奔流がソウマを包み込んだ。
魔素が青から赤へと変異し、魔力として鎧に吸収された。
ソウマは心を奮い立たせた。
鎧の関節部が熱を帯びた。
出力が急上昇し、蒸気を噴き出した。
ソウマの瞳が赤く染まった。
周囲の魔力の流れが可視化された。
クロノスのスラスターの乱れやシャクゴクのコアの弱点が浮かび上がった。
ソウマは全能感に満たされた。
「ヤシオリ、多重起動!」
鎧の両腕から青白いワイヤーが放たれた。
一本がクロノスのスラスターに絡みついた。
もう一本がシャクゴクの砲口を狙った。
クロノスが回避を試みた。
ソウマは魔力の流れでその動きを予測した。
「まるで未来が見える! これが本来の守護魔導書の力なのか」
ワイヤーがシャクゴクのコアを締め上げた。
ソウマはスラスターを全開にし、クロノスにタックルした。
クロノスがシャクゴクに叩きつけられた。
ソウマの鎧がクロノスの巨体を押し込んだ。
レイがソウマを睨みつけた。
「この距離ならば、外さん!」
クロノスのキャノンが最大出力で放たれた。
「撃たせたんだ!」
刹那、ソウマはキャノンを蹴り上げ、向きをずらした。
砲身がシャクゴクへと向けられた。
キャノンがシャクゴクのコアを直撃した。
シャクゴクの回路が赤く過熱した。
魔素が逆流し、砲口から火花が噴き出した。
内部の圧縮魔素が連鎖反応を起こした。
クロノスの装甲がキャノンの余波で砕けた。
コックピットからサラのペンダントが落ちた。
レイの「サラ……ここまでのようだ」という想いが魔力の共鳴でソウマに伝わった。
「……同じ痛みを知ってるのに、なぜ戦う」
魔力を通じてレイにソウマの言葉が伝わる。
「同じではない。大人になればわかるさ」
シャクゴクの内包エネルギーが自己崩壊を起こした。
爆発の前兆が戦場を震わせた。
ミコトの通信が響いた。
「ソウマ、シャクゴクが自己崩壊を起こしてる! 早く脱出して!」
カズマのパルス砲が追撃を牽制した。
リョウタの砲撃が脱出ルートを切り開いた。
ノゾミが叫んだ。
「右翼に急行!」
ジンが叫んだ。
「ソウマ、戻れ!」
ソウマはスラスターを全力でふかした。
鎧がひび割れる中、突き進んだ。
テツカガミのハッチが開き、ソウマを回収した。
直後、シャクゴクが大爆発した。
魔素の奔流がメッカイサイの頂上をクレーターに変えた。
両軍の艦艇が揺れた。
テツカガミの格納庫で、ソウマは鎧を解除し膝をついた。
ブリッジでは、クルーが歓声を上げた。
ユナが駆け寄り、抱きしめた。
「ソウマ、ソウマぁ!」
ソウマは涙を流しながら頷いた。
ユナの胸に顔を埋め、彼女の温もりに身を委ねた。
「ユナ……ただいま」
二人は互いの涙を拭い合い、強く抱き合った。
ユナの涙がソウマの頰を伝い、互いの唇が触れ合った。
その瞬間、未来への希望が芽生えた。




