第三十二話
総力戦が始まった。
テツカガミは楔形陣形の先鋒として突き進んだ。
ギゲンのテツリュウが中央で指揮を執った。
魔導艇が左右に広がり、前進した。
対する公国軍は、補助艇が爆弾を投下した。
レックウが円形陣形でタンクを護衛していた。
ジンが戦術マップを睨んだ。
「ヤタノカガミ、最大出力! 右翼から突撃!」
テツカガミが周囲の魔導艇と連動し、巨大な壁を形成した。
公国軍の魔導弾がシールドに直撃した。
船内を震わせ、計器盤の針が激しく振動した。
ジンはデータを睨んだ。
敵のレックウの間隔がわずかに広がった右翼を特定した。
即座に艦隊全体に指示を送った。
「右翼三キロ、補給艇の護衛が薄い。突破を優先!」
ブリッジのクルーたちが即座に反応した。
カズマが補助魔導書を握りしめた。
「へっ、右翼かよ。レックウの機銃が厄介だぜ。タイミングがズレんなよリョウタ!」
リョウタが静かに頷いた。
「突破口を作るぞ! ノゾミ、回避ルートを右翼寄りにシフトしてくれ」
ノゾミが声を張り上げた。
「了解! 五秒以内に陣形変更よ。でも、シャクゴクの次弾が来る前に決めないと……」
ジンは皆の視線を集め、低く応じた。
「その通りだ。補給艇を落とせば、連射が止まる。全員、集中しろ──これが最後の突撃だ」
ミコトが公国軍の暗号通信を解析した。
「シャクゴクのサイクル、チャージ十二秒、冷却二十八秒、合計四十秒!」
補給艇の熱源を揺らぎながらも捕捉した。
戦術マップに投影した。
「敵の補給ライン、タンクの輸送ルートが右翼に集中してる! レックウが機銃掃射に回ってます!」
ジンがクルーたちに視線を巡らせた。
「四十秒の隙を突くんだ。カズマ、パルスでレックウの護衛を散らし、リョウタの榴弾でタンクを狙え。ノゾミ、シールドの連動を維持しろ!」
地上では、ソウマがメッカイサイの外壁に飛び込んだ。
崩れた防衛塔のコンクリート片が足元を埋めた。
耐性兵がライセンと交戦した。
鋼糸と魔素弾が戦場を交差した。
公国軍が防衛線を形成した。
メイテンが戦術モニターを睨んだ。
冷徹に命じた。
「四十秒後に再発射! 奴らを灰にしろ!」
オペレーターが叫んだ。
「閣下、味方機が射程内に!」
メイテンは氷のような瞳で振り向いた。
剣を抜いた。
オペレーターを一閃で斬り倒した。
「勝利に犠牲はつきものだ。発射しろ!」
新たなオペレーターがコンソールに手を伸ばした。
シャクゴクの砲口が空気を震わせた。
だが、交代の混乱でタイミングが二秒遅れた。
レーザーが放たれた。
帝国の魔導艇二隻が業火に包まれた。
テツリュウが余波で損傷した。
ギゲンの通信が途切れた。
「出力低下! 撤退は無理だ!」
レーザーは公国軍を巻き込んだ。
ソウマの耳に断末魔が突き刺さった。
「味方まで……人の命を!」
ジンは即座に艦隊全体に命令を送った。
「タンクの破壊で冷却時間を延ばせば、連射を防げる──右翼三キロの補給艇を集中攻撃!」
魔導艇の砲門が右翼に向かって回転し、魔素弾を連射した。
ソウマは結晶樹木の密集地に飛び込んだ。
「急げ……みんなの命がかかってる!」
ヘルメットのディスプレイに、ミコトの解析データが投影された。
右翼三キロの岩場に、タンクを運ぶ補給艇の熱源が赤く点滅する。
レックウがその周囲を旋回し、機銃の弾幕を張っていた。
ライセンが地上で待ち構えていた。
ソウマはスラスターを吹かし、樹木を縫うように低空を滑走した。
「アメノハバキリ、起動!」
右腕に刃が形成され、空気を震わせた。
一閃──結晶樹木の幹を斬り裂く。
魔素が爆発的に放出された。
周囲の霧が一瞬輝き、放射性粒子が連鎖的に活性化した。
ノイズの渦が広がり、敵機の光学センサーが乱れ始めた。
「視界が……! 奴の位置を捕捉しろ!」
ソウマは息を潜め、次の樹木を狙った。
二閃、三閃──樹木を次々と薙ぎ払う。
密集地の空気がプラズマのように熱を帯びた。
レックウが上空から急降下し、機銃を掃射した。
弾丸の雨が、ソウマの足元を爆ぜさせた。
「ぐっ……!」
彼は咄嗟にシールドを展開し、岩の陰に身を隠した。
障壁の表面が火花を散らし、熱が鎧を焦がした。
「ソウマ、レックウの死角を突け! カズマのパルスが援護するわ!」
ミコトの通信がヘルメットに響いた。
その瞬間、カズマのパルス砲が上空を裂いた。
青白い光球がレックウの一機を直撃し、翼を吹き飛ばした。
機体が煙を吐きながら墜落し、地面に激突した。
ソウマは隙を突き、密集地の奥へ突進した。
補給艇のシルエットが霧の向こうにぼんやりと浮かぶ。
タンクの赤い熱源が、脈打つように輝いていた。
「今だ……!」
しかし、ライセン二機が壁面から飛び出し、ワイヤーを一斉に射出した。
鋼のような糸が鞭のように空を切り、ソウマの鎧の脚部を締め上げた。
「くそっ……しつこい!」
ソウマは地面を引きずられ、岩を抉った。
パイロットが嘲笑を漏らした。
「動くな、怪物!」
張力が増し、鎧の関節が軋んだ。
「お前らの倒し方は、知ってるんだ!」
彼は鋼糸を掴み、スラスターを逆噴射した。
同時に力強く引き寄せた。
ライセンがバランスを崩して接近した。
「え……何だ!?」
ソウマは右腕を振り抜いた。
敵機の胸部を斬り裂いた。
火花が散り、機体が膝をついた。
「一機、撃破!」
その時、もう一機が即座に追撃のワイヤーを放った。
今度はソウマの腕を封じた。
レックウの残存機が上空から機銃を浴びせ、密集地の樹木を薙ぎ払った。
「ソウマ、持ちこたえて! リョウタの榴弾が来るわ!」
ノゾミの通信が響いた。
リョウタの榴弾砲が轟き、レックウの翼を吹き飛ばした。
一機が墜落し、爆炎が敵機のセンサーをさらに乱した。
ソウマは張力を利用し、体を回転させた。
遠心力で糸を緩め、跳ね返すようにライセンへ突進した。
「邪魔をするから!」
衝撃波を指向性で集束させた。
「カグツチ、起動! 指向性展開!」
鎧の両腕からエネルギーが収束し、青みがかった波動が放たれた。
変異魔力が感情で増幅され、怒りが波を鋭くした。
銀色から青白い光の回路が新たに刻まれ、周囲の魔素粒子を集めた。
波動が敵機を貫通し、内部の魔力回路を焼き切った。
機体が爆発し、残骸が密集地の樹木に突き刺さった。
ノイズの雲が一層濃くなり、補給艇の護衛が混乱した。
ソウマは息を荒げ、密集地の奥へ飛び込んだ。
放射性粒子が連鎖反応を起こし、魔素の渦が補給艇を包んだ。
「今……いく!」
彼は最大出力でカグツチを打ち込んだ。
指向性波動が霧を切り裂き、タンクの表面を貫通した。
内部の魔鉱が誘爆し、青白い炎が艇全体を飲み込んだ。
爆音が荒野を震わせ、補給艇が天高く吹き飛んだ。
残骸が雨のように降り注ぎ、レックウの編隊を乱した。
補給艇が予備のタンクを運び始めた。
メイテンの冷笑が無線で轟いた。
「次のレーザーで終わりだ!」
シャクゴクのチャージを再開させた。
戦場はさらなる混沌に飲み込まれた。
ソウマは膝をつき、息を吐いた。
「まだ……終わらないのか」




