表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界独立戦争 ~継承された守護魔道~  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/38

第二十八話

 メッカイサイの手前。

 公国軍の移動要塞キリザクラが佇んでいた。

 ギゲンの艦隊が待機していた。

 キリザクラの濃縮魔素噴霧装置が放射性魔素粒子を放っていた。

 霧は無音で広がり、艦艇の外装を腐食させた。

 一部のクルーが対抗スプレーを散布した。

 霧の拡散は止まらなかった。

 主力魔導艇の甲板上。

 クルーたちがマスクを急ぎ装着した。

 だが、粒子が換気口から侵入した。

 呼吸器に痺れを残した。

 巡洋魔導艇の砲台が回転を止めた。

 センサースクリーンがノイズに埋もれた。

 艦長たちの怒号が飛び交った。

「粒子濃度、臨界値超え! 非常用障壁を展開!」

 艦隊が停止を余儀なくされ、センサーがノイズに埋もれた。

「回路が三十%焼損! 出力三十%低下中……今、八十%焼損に達しました! 出力五十%低下、二十分で完全停止します!」

 テツカガミから煙が上がった。

 ノゾミの指が緊急停止ボタンを叩いた。

 粒子が回路基板に食い込んだ。

 バックアップ電源すら不安定に揺らぐ。

 主力魔導艇が次々と停止した。

 補助艇の一隻が完全に沈黙した。

 レックウがその隙を突き、低空からミサイルを連射した。

 軌跡が停止した艦艇の甲板を直撃した。

 爆炎が赤く染め上げた。

 テツリュウからギゲンの通信がブリッジに届いた。

「ジン・キオカ、ただちに作戦会議だ」

 テツカガミはテツリュウにドッキングした。

 接続チューブが伸長し、固定された。

 ブリッジのクルーたちが緊張した面持ちでハッチを通った。

 彼らはテツリュウの内部へ移った。

 ギゲンの作戦室は、厳重な防壁の向こうにあった。

 入室するジンの肩に、紋章の重みがのしかかった。

 テツリュウの作戦室は耐性合金で覆われていた。

 霧の粒子が外部から侵入を阻まれた。

 内部の空気がわずかに重く淀んだ。

 中央の戦術卓はホログラムで地形を投影していた。

 公国軍の艦影が赤く点滅した。

 ギゲンが戦術マップを広げた。

「公国軍が霧で我々の進軍を封じる。霧は毎分五十メートル拡散、二十分で濃度ピークだ。シキ・クロノの策略だ。耐性部隊を編成──テツリュウ、耐性兵三十名、そしてテツカガミのソウマ・ツキヤマでキリザクラのコアを破壊する。予備の衛星通信機を各隊に配備し、ジャミング時のバックアップとする」

 戦術マップのホログラムがシミュレートした。

 粒子雲が艦隊を飲み込む様子がリアルタイムで表示された。

 ギゲンの指がマップをなぞった。

 キリザクラの噴霧装置の熱源が赤く点滅した。

 耐性兵の選抜リストがスクリーンにリストアップされた。

 三十名の名前が厳選された戦士として輝いた。

 ジンが頷き、慎重に問うた。

「ソウマは……」

 ギゲンが目を細め、鋭く切り込んだ。

「君の所の魔族、ソウマ・ツキヤマを使いたい」

 ジンが息を呑んだ。

「それは……」

 ギゲンが遮った。

「守護魔導書は魔族レベルの魔力無しでは動かん。作戦遂行が目的だ。すべて不問とする。ソウマと耐性兵にキリザクラのコアを破壊させ、テツリュウと耐性艦三隻が陽動、レックウを牽制する。突入までの時間は十分だ。やってくれるな?」

 ギゲンの視線がジンを貫いた。

 部屋の空気が一瞬凍りついた。

 将軍の指が戦術卓を叩いた。

 ホログラムが耐性部隊の突入ルートを描いた。

 テツリュウの陽動射撃がレックウの戦闘機を散らす。

 耐性艦三隻が魔導爆弾を吸引する。

 その配置が詳細に表示された。

 十分のカウントダウンがスクリーンに投影された。

 将軍は低く続けた。

「リンカの事は残念だった。あの娘の死は、大きな損失だ。だが、彼女が生かした命だ。ここで役立ててはくれんか」

 ジンの胸が締めつけられたが、言葉を飲み込んだ。

「了解しました、将軍」


 テツカガミに戻ったジンは、ソウマに告げた。

「ソウマ、ギゲン将軍がお前の魔族性に気づいた。不問だと言う。キリザクラを破壊してほしい。失敗すれば、この戦争は悪い意味で終わる」

 ジンの声がわずかに低くなった。

「リンカが生かした命だ。行ってくれるか」

 ソウマの胸が熱くなり、瞳が揺れた。

 ジンを見据えた。

「やります。この戦いを終わらせるために!」

 ハッチが開いた。

 ソウマは鎧を纏って飛び出した。

 耐性兵が特殊装甲を纏った。

 テツリュウの陽動と共にキリザクラへ突入した。

 ヘルメットのバイザーが青く光った。

 テツリュウの主砲が陽動射撃を開始した。

 魔素弾がレックウの群れを乱した。

 三十名が低空降下艇から霧海へ飛び込んだ。

 兵士たちのブーツが濃密な粒子に着地した。

 装甲の表面が粒子を弾き返した。

 だが、接近するや、霧が濃密に渦巻いた。

 無線がジャミングで途絶えた。

「ソウマ、聞こえるか!? 霧の濃度が高い──耐性兵を盾に、レックウの死角を突け! カズマのエンビで道を開く、タイミングを合わせろ!」

 ジンの叫びがノイズ混じりで響き、続いてカズマの毒舌が割り込んだ。

「ガキ、死ぬんじゃねえぞ! 俺のエンビが三秒後だ、突っ込め!」

「ソウマ、聞こ……! 位置確認、右翼から援護射撃よ!」

 ミコトの声がノイズに掻き消された。

 レックウがカズマのパルス砲を回避し襲いかかった。

 レックウの群れが扇形に広がって突進した。

 機銃の弾幕、爆弾が投下された。

 一機のレックウが魔導剣を展開し、ソウマを狙った。

 軌跡が鎧をかすめた。

 耐性兵の一人が爆弾の直撃を受けた。

 装甲が腐食して霧に沈んだ。

 一人、また一人と倒れた。

 ソウマの耳に兵士の叫びが響いた。

「足を止めるな! 行け!」

 兵士たちの装甲が粒子に食われた。

 表面が溶け始め、膝をついた。

 ソウマの通信に断末魔が混じった。

「コアを……破壊……」

 途切れ途切れに伝わった。

 レックウの機銃弾が耐性兵を蜂の巣にした。

 残存兵が爆弾を投げ返し、道を切り開いた。

 だが、次々と倒れていった。

 ソウマはスラスターを全開にし、突き進んだ。

「たどり着け! 力はあるんだろ!」

 ソウマは刃を展開した。

 戦闘機を切り裂き、爆弾を弾き返した。

 耐性兵の悲鳴が続いた。

 最後の一人が倒れた。

 ソウマだけがキリザクラの外壁に辿り着いた。

 その瞬間、キリザクラの巨大な扉が、静かに開いた。

 内部の青い魔導灯が漏れ出した。

 粒子が扉の縁をチリチリと焦がした。

 内部の耐性回路がそれを弾き返していた。

 キリザクラの外壁は魔素粒子で覆われていた。

 粒子が扉の縁をチリチリと焦がした。

 内部は不気味な静寂に満ちていた。

 無線のノイズが耳をつんざいた。

 クルーの声は届かなかった。

 孤立無援の中、ソウマは拳を握った。

 レックウが遠ざかった。

 キリザクラの内部通路が青く照らされた。

 その中で、ソウマは深呼吸した。

 彼は孤立の重圧を胸に押し込んだ。

 ゆっくりと一歩を踏み出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ