第二十四話
サラ・テンカの無線が響いた。
「ソウマ、行かせないわ!」
鋼線がソウマへと延びる。
だが、突然、大地が震えた。
ナラクテンマのレーザーがカゲトリデから荒野を貫いた。
ソウマをクレーターの縁に叩きつけた。
カゼダンもバランスを崩した。
サラが「制御が!」と叫んだ。
ソウマの視界が暗転した。
心臓の鼓動が止まりかけた。
突然、赤い脈が視界に浮かんだ。
父の工房で見た魔導書の記憶が蘇った。
カゼダンの制御の隙──魔力の流れ──が見えた。
「これだ……守護魔導書の真の力。魔素の流動、その源を視るんだ!」
変異魔力があふれ出し鎧を輝かせた。
ソウマは叫んだ。
「直感が言っている、信じろと! カグツチ、起動! 指向性展開!」
攻撃がカゼダンの操作部を直撃した。
ワイヤーが暴れ出した。
魔導剣が、自らを貫いた。
ソウマは暴走する隙を突き、カゼダンに飛び乗った。
「これで、終わりだ!」
刃を何度も突き刺し、やがてコアを貫いた。
カゼダンが地に崩れた。
サラの悲鳴が轟いた。
「レイ……ごめんなさい!」
数秒の沈黙が訪れた。
コックピットから火花が噴き出した。
機体全体が激しく振動した。
ソウマは即座に後退した。
カゼダンの装甲板が剥がれ落ちた。
内部の回路が露出した。
電弧を放ち、周囲の空気をイオン化させた。
サラのコックピットハッチが強制的に吹き飛んだ。
彼女のシルエットが炎に包まれるのが見えた。
ソウマは即座にシールドを再展開して防いだ。
爆風がソウマの鎧を押し戻した。
障壁が一瞬オーバーロードで赤く発光した。
サラの機体が完全に沈黙した。
遠く、レイのゴウライが爆発を捉えた。
コックピットのセンサーが炎の渦を映し出した。
レイの視界が一瞬凍りつく。
「サラ……!」
彼は心の奥で呻く。
家族を失った「変異者」の幼馴染みとして、互いの痛みを共有した唯一の絆。
公国軍で再会し、帝国を討つと誓った。
今、彼女の機体が灰になるのを、ただ見ているだけだった。
「サラ……あいつらが俺の全てを奪った!」
レイはコックピットで操縦桿を強く握った。
感情の乱れを抑え込んだ。
レイは部下に短く命じた。
「作戦終了。各自、撤退せよ」
爆風がレイの撤退を覆い隠した。
荒野の砂塵が視界を悪化させた。
公国軍の補助艇が援護射撃を加え、追撃を一時的に抑え込んだ。
ソウマがカゼダンの残骸を見下ろした。
テツカガミが近付いた。
艦隊戦の爆炎を背に、損傷した船体が低空で現れた。
テツカガミの損傷したハッチがゆっくり開いた。
甲板から伸ばされた回収アームがソウマの鎧を掴んだ。
ブリッジからジンの指示が飛んだ。
「急ぎ回収! 艦隊戦が激化してる!」
回収アームがソウマを引き上げた。
船が急旋回した。
乱気流が船を揺らした。
甲板の損傷部から煙が漏れ出した。
ソウマは格納庫に着地した。
鎧を解くと疲労で膝をついた。
クルーの一人が駆け寄り、簡易診断器を当てた。
ソウマはそれを押し退けた。
立ち上がり、ブリッジへ向かった。
艦隊戦の爆炎が窓から赤く差し込んだ。
ジンの声が響いた。
「よくやった、ソウマ。状況は厳しいが、お前のおかげで道が開けた」
格納庫のハッチが閉まった。
テツカガミは低空で加速を開始した。
艦隊の砲撃音が後方から追いかけてきた。
撤収ルートを確保した。
ミコトの声が響いた。
「カゲトリデ陥落……で防衛塔全壊!」
ノゾミが操艦を握った。
「撤退ルート、確保します……」
テツカガミが撤収した。
ソウマはブリッジの窓から凝視した。
「……まだこんな戦闘が続くのか」
レイのゴウライが消えた方向に視線を固定した。
ジンは命令した。
「撤収を急げ。追撃が来る前に距離を取る」
ミコトが回線を監視した。
ノゾミが操艦を続けた。
ソウマの心に虚無が重くのしかかった。




