第二十三話
戦場はすでに地獄の坩堝と化していた。
カゲトリデの防衛塔が、キオウの猛攻に晒された。
ナラクテンマは超圧縮魔導砲「アマテラス」を備えた巨大魔導騎兵だ。
魔素の奔流が荒野を貫いた。
余韻が空気を焦がした。
直径五十メートルのクレーターが地面に口を開けた。
クレーターの縁では、帝国の地上部隊が必死に塹壕を掘り進んだ。
シールド発生器を展開し、耐えていた。
それでも、砲撃で障壁が次々と破壊された。
兵士たちの絶叫が土煙に溶け込んだ。
「このままでは持たん! 退避!」
負傷者が泥濘に倒れ伏した。
衛生兵が必死に止血を試みた。
その姿が、戦場の混沌を象徴していた。
帝国軍の魔導艇隊は防空網を死守すべく奮戦していた。
公国軍の魔導航空機が空を覆った。
魔導弾が降り注いだ。
爆炎が要塞の鉄壁を赤く染めた。
防衛塔の一つが崩れ落ちた。
崩落した塔の残骸から、遺体が転がり落ちた。
空気に血の臭いが混じった。
生存者たちが瓦礫の下から這い出そうとした。
公国軍の航空機が低空で機銃掃射を加えた。
帝国の魔導艇が次々と炎に包まれた。
指揮官が「陣形を維持しろ!」と叫んだ。
だが、仲間が次々に倒れた。
残存兵が反撃の銃を乱射した。
シックウの高速機動に空振りした。
その様子が、戦場の無常を物語っていた。
空戦では、帝国の魔導艇が突撃を開始した。
近接戦闘でミサイルを連射した。
公国軍の戦闘機が密集陣形で反撃した。
ミサイルが交錯した。
数機が空中爆発を起こした。
砲兵が要塞の残存塔から砲撃を加えた。
だが、ナラクテンマが一歩進むごとに、砲台が粉砕された。
帝国兵の退却命令が飛び交った。
混乱が広がっていた。
テツカガミは艦隊戦の渦中に飛び込んだ。
シールドを全開にし、攻撃を弾き返した。
障壁の表面が魔導弾の直撃で赤熱した。
船の振動がクルーたちの体を揺さぶった。
ジンが戦術マップを睨んだ。
「シックウの編隊を右翼から叩け!」
ノゾミが解析した。
「出力、限界! 突き進みます!」
ミコトが解析した。
「ナラクテンマの次弾がチャージ中、二十秒後発射!」
ミコトの解析データが戦術マップにリアルタイムで投影された。
公国軍の動きが表示された。
ノイズが混じった。
彼女が周波数を調整しながら呟いた。
「もう少し、クリアにならないの!?」
遠く、超圧縮魔導砲が輝き始めた。
キオウの哄笑が無線で轟いた。
「このまま人間界を獲りに行ってもよいな! それほどの凄みがある!」
コックピットで、彼の筋骨隆々な腕が操縦桿を握った。
キオウの指が砲撃スイッチを押す準備をした。
公国軍の地上隊がその巨体を盾に前進を開始した。
帝国の防衛線がさらに後退を強いられた。
戦場全体の空気が圧迫感に満ちた。
ジンが戦術マップを睨んだ。
「ソウマ、ナラクテンマに撃たせるな! クルー、全員で援護だ! ……ソウマ、投擲のタイミングを調整しろ。カズマのエンビがアメノハバキリに同期する瞬間を狙え──三秒発射しろ!」
ソウマにジンの命令が響いた。
ヘルメットのディスプレイにカウントダウンが投影された。
ソウマは息を整えた。
「了解、ジンさん! 三秒……二……」
クルーたちが動き出した。
カズマとリョウタが砲撃を準備した。
ミコトが回線を強化した。
ノゾミが弾幕をかいくぐり、中心へ突き進んだ。
その矢先、霧の奥からカゼダンが再び現れた。
絡縛の腕を伸ばし、ソウマの進路を阻んだ。
「撤退したんじゃ……!」
レイのゴウライから、無線が飛ぶ。
「サラ、何をしている! ……下がれ、下がれと言ってるだろ!」
レイは冷徹を装っていたが、わずかに震えていた。
コックピット内で、彼の指が操縦桿を強く握りしめる。
サラの行動は予測外──いや、予測できなかったわけではない。
サラはいつも「守る」ために命令を無視する。
そんなサラの姿が、胸を抉った。
サラの無線が震えた。
「レイ、ごめんなさい。でも、この少年が戦争を終わらせる鍵よ。これは、私の役目! 今引いたら誰も勝てなくなるわ!」
サラは凛としていたが、研究所の記憶が滲む。
コックピット内でサラは拳を握りしめる。
焦りが攻撃を激しくさせた。
レイは一瞬、言葉を失う。
命令を無視するサラを止めるべきだった。
レイ自身が一番わかっていた。
だが、止められなかった。
八本の触手が再び包囲した。
「邪魔をして! 人がたくさん死ぬんだぞ!」
サラが吠える。
「あなたが言わないで!」
ソウマは指輪を握った。
「こっちにも、引けない理由があるんだ!」
ソウマは二本を切り裂いた。
残りの六本が退路を封鎖した。
ソウマはワイヤーを展開し、一本に絡みついた。
サラの機体がバランスを崩した。
「こざかしい手を……!」
サラの焦りが無線に漏れた。
ソウマは隙を突き、三本目を切り裂いた。
ジンが即座に割り込んだ。
「ソウマ! カゼダンは追いつけない! 旋回してナラクテンマに向かえ!」
ソウマは「了解!」と応じ、刃を振り抜いた。
だが、遠くでナラクテンマの砲口が再び輝きだした。
「要塞は終わりだ! よくぞ耐えた!」
キオウの哄笑が無線で轟いた。




