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魔界独立戦争 ~継承された守護魔道~  作者: 川合 佑樹


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第二話

 平穏は突然破られた。

 レイ・チギリは、漆黒の対魔素装甲の魔導騎兵「テッカイ」を率いた。

 待ち伏せを開始した。

 テッカイ三機で構えていた。

「防衛システムを叩け。先に目を潰す」

 レイの冷徹な命令が下る。

 魔導航空機から降下中のテッカイが一斉に魔導パルスを放った。

 監視ドローンを部分的に無力化した。

 自動砲台も無力化した。

 魔導ロケット砲で制御タワーを狙った。

 乱気流でわずかに外れ、二次射撃を要した。

 施設は無防備に晒された。

 警報システムが甲高い警告音を鳴らせた。

 住民たちが作業の手を止めた。

 空を見上げた瞬間、黒い影が降下してきた。

 漆黒の闇が地面を深く抉り、衝撃で小屋が傾いた。

 悲鳴が上がった。

 公国が生み出した魔導騎兵。

 魔力を原動力とする人型兵器。

 霧圏の戦闘に適応した機動性を誇る。

 関節から漏れる青い煙が不気味に瞬いた。

 指揮するのは、黒い甲冑をまとった公国軍のエース魔導士。

 レイ・チギリ少佐だ。

 名門チギリ家の末裔。

 家族を奪った戦争の記憶が瞳に冷たく燃えていた。

 彼は帝国の新兵器のデータを狙い、襲撃を指揮した。

 霧の向こうで、レイのコックピットは静寂に包まれていた。

 彼の指が操縦桿を強く握りしめた。

 帝国の実験施設の記憶が、脳裏をよぎった。

 仲間が無意味に殺されていった。

 苦痛に歪む顔。

「怖いよ……レン」

 あの仲間の叫びが、今も胸を抉る。

 あの日から、レイは公国軍となった。

 部下から通信が届いた。

「少佐、……本当にこれで帝国を止められるんですか?」

「止められるさ。俺の家族を奪った連中だ。迷うな、皆で終わらせるんだ」

 レイが部下に死の命令を下した。

「帝国の新技術が完成すれば、公国は滅ぶ。俺たちの手で全てを終わらせる」

 魔導騎兵が村中心へ進撃した。

 警報システムがソウマの心臓を締め付けた。

 工房のランプが揺れた。

「今の音は、何だ……!?」

 リュウジは即座に立ち上がった。

 窓辺に駆け寄って外を睨んだ。

 黒い輪郭が降下するのを捉え、顔を強張らせた。

「魔導騎兵だ……! 隠れろ!」

 彼は工房の扉を固く閉めた。

 棚から守護魔導書を掴んだ。

 ソウマを隅の隠し扉へ引きずり込んだ。

「父さん、村が……みんなが危ない! 俺、何かできないの!?」

「今は隠れろ、ソウマ。お前が生き残れば……世界が守れるんだ」

 リュウジは魔導書をソウマの手に強く押し付けた。

 刻印が微かに輝いた。

 父の瞳に疲れた決意が宿る。

「この書はお前が継げ。生きろ。世界を……守れ」

 リュウジの願いは揺るぎない。

 ソウマの胸に刻まれた。

 一瞬、父は息子を抱きしめた。

「父さん……!」

 ロケット砲が工房に着弾した。

 二人は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 木造の壁が砕け散り、炎が畑を飲み込んだ。

 魔素溜まりが生じて視界を閉ざした。

 ソウマは父の体を抱き起こそうとしたが、熱風がそれを許さなかった。

「父さん……なぜ、こんなことに」

 リュウジの瞳はすでに光を失い、ソウマの叫びは炎の咆哮に掻き消された。

 数秒の永遠のような沈黙の後、視界の端で魔導書の刻印が微かに光った。

 砲撃が小屋を次々と砕いた。

 結晶植物が不規則に燃え上がった。

 村人たちは逃げ惑った。

 農夫が子どもを背負って泥濘を這った。

 老婆が杖を落とし、炎に足を舐め取られた。

 一部の戦闘員は即席のバリケードを築いた。

 投石で応戦を試みたが、機銃に晒された。

「効くかよぉ原始人ども!」

 パイロットの咆哮が漏れ聞こえた。

 井戸を砲撃で崩壊させ、水しぶきが蒸気となった。

 ユナの母は結晶植物の籠を胸に抱きしめた。

 必死に立ち上がろうとした。

 だが、砲撃の衝撃波が彼女の体を吹き飛ばした。

 その姿が、ソウマの目に永遠に焼き付いた。

 住民の大半は無差別攻撃に息絶えた。

 彼らの断末魔──「助けて!」「家族が!」──が、耳に執拗に響き続けた。

 ソウマは工房の瓦礫の下から這い出した。

 咳き込みながら立ち上がった。

 目の前で、炎に包まれた父の姿が揺らめいた。

 動かなくなっていた。

「父さん! 父さん!」

 彼は声が枯れるまで絶叫した。

 胸の怒りと喪失が混じった。

 涙が熱い頰を伝う。

 ふと、視界の端で瓦礫の中に守護魔導書が転がっているのが見えた。

 その刻印が、微かに光っていた。

「俺が、取り戻す……!」

 熱風が頰を焼いた。


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