第十九話
レイのゴウライがハガネハラの出口を捉えた。
だがその時、メイジン部隊の残党三機が現れた。
機体は損傷が激しい。
装甲にひび割れが入っていた。
彼らはメイジンの最後の命令を守っていた。
帝国軍の進路を阻むために残ったのだ。
レイの無線に、通信が入った。
「レイ少佐……シキ様の指示でカゲトリデへ向かうと聞きましたが……私たちはここで戦います。最後の一機まで、侵入者を食い止めます!」
レイの眉が僅かに動いた。
「君たちは……誰だ?」
無線から、クニトラが即座に応じた。
「クニトラです、少佐! メイジン大佐の仇を討つまで、死にません!」
続いて、カレンが回線を繋いだ。
「カレンです。援護は任せてください」
最後に、若手のテツヤが迷いながら加わった。
「テツヤです……僕も、従います」
レイは三機を睨む。
「勝ち目はない。ここで死ぬのは誇りではないぞ」
彼らは譲らなかった。
「少佐! 私たちはメイジン大佐の部下です。あの人は最後の瞬間まで、ここを守れと命じました……死ぬまで、従います!」
レイは一瞬沈黙した。
家族の形見のペンダントを握った。
部下たちの熱意が、彼の冷静な仮面を揺らした。
「容認できない。無駄死にだ」
だが、三機が一斉に声を重ねた。
「奴らを討ち果たすまで、絶対に倒れません!」
レイは熱意に負けた。
「……分かった。だが、生き残れ。撤退の指示には必ず従え。お前らが、俺の戦いに付き合え」
レイは彼らを引き連れた。
レイは三機を天井と壁に分散配置した。
地雷を天井と床に仕掛けさせた。
さらに、損傷したライセンを活用し、魔素トラップを展開させた。
彼らの忠誠が、レイの戦術を補完した。
そんな中、無線がブリッジに届いた。
レイの挑発的な通信が響き渡る。
「この坑道はお前らの墓だ!」
ジンは即座に立ち上がり、戦術マップを睨んだ。
「敵の待ち伏せだ。全員、戦闘態勢! ミコト、解析を急げ。ノゾミ、船体を岩陰に固定──リンカ、ゼツエイを出撃させて入口を確保しろ! ソウマ、フォローだ。カズマ、リョウタ、援護射撃を準備!」
クルーたちが一斉に動き出した。
カズマが毒づきながら補助魔導書を準備し、リョウタが静かに榴弾砲の照準を調整した。
クニトラが先頭を切り、熱く叫んだ。
「少佐、俺が囮になります!」
カレンが冷静に応じた。
「配置完了。トラップ準備完了」
テツヤが後を追った。
「地雷まで追い込みます!」
リンカのゼツエイが出撃した。
彼女は即座に魔導書を発動。
「私が先陣切るわ。ソウマくん、フォローして!」
ゼツエイを坑道内に滑り込ませた。
ソウマは飛び出した。
「リンカさん、待って! 一緒にいくよ! シロガラス、起動!」
だが、ノゾミの分析が即座に警告を発した。
「待って! 天井と地面に地雷の反応あり!」
クルーたちは即応した。
カズマがパルス砲で入口の地雷を焼き払った。
リョウタが遠距離から敵を狙った。
リンカはゼツエイの魔導盾を展開した。
トラップの魔素波を防ぎながら進んだ。
「みんな、連携よ! ノゾミ、弱点マークお願い!」
リンカがワイヤーを展開した。
「ソウマくん、フォローよろしく!」
ソウマは低空を滑走し、地雷を回避した。
リンカのワイヤーが天井の一機を絡め取った。
カズマがパルス砲で援護した。
「この人数で強襲はありえねぇ! 伏兵に気を付けろよ!」
クニトラがトラップを発動しようとした。
だが、リョウタの精密砲撃が天井の岩盤を直撃した。
崩落の岩塊がクニトラの機体を押し潰した。
粉砕音が反響した。
クニトラが最後に叫んだ。
「少佐、仇を……!」
ノゾミの指示がヘルメットに表示された。
ひび割れた弱点をマークした。
ノゾミが冷静に指示を出した。
「二機目、右肩損傷あり──リョウタ、そこを狙って!」
リョウタの追撃砲が命中した。
カレンの機体がよろめいた。
リンカがワイヤーで拘束した。
ゼツエイの魔導剣を展開し、一閃でコアを貫通した。
「二機目ダウン! 次よ!」
カレンの機体が爆発した。
「少佐、申し訳……」
最後のライセンはソウマを狙って鋼糸を放った。
ソウマはそれを掴んだ。
スラスターを吹かし、引っ張り地雷に投げつけた。
テツヤが爆風に飲み込まれた。
絶叫が最後に漏れた。
「僕、負け……!」
メイジン部隊は全滅した。
「ソウマくん、ナイス連携! クルーのみんな、完璧よ!」
リンカが明るく通信を飛ばした。
ソウマは頷いた。
「リンカさんのおかげです……」
その時、ゴウライの魔導レーザーがソウマを狙った。
レイは無線で低く笑う。
「これは趣味ではないのだがな!」
ゴウライのレーザーが天井の爆弾を直撃した。
轟音とともに崩落が始まった。
大量の岩塊が落下し、坑道を二つに分断した。
ソウマの前に巨大な瓦礫の壁が立ちはだかった。
リンカたちの通信がノイズに掻き消された。
「リンカさん!? みんな……!」
ソウマの叫びが虚空に響いた。
レイの声が響く。
「二人きりだな、シロガラス! 淋しくて鳴くなら今の内だぞ、少年!」
ゴウライのスラスターを最大出力で噴射した。
レイは戦鎌型魔導剣を展開し、ソウマの鎧に斬りかかった。
互いの刃が激突した。
ソウマは後退しながら、レイの側面を攻撃した。
ゴウライに深い傷が入った。
レイはレーザーを近距離で放った。
ソウマはガードしたが、壁に叩きつけられた。
「この出力……重すぎる!」
鎧の肩部が過度な攻撃で破損した。
プログラムが自動で分散処置を発動した。
レイの無線が響く。
「仲間がいないとこんなものか!」
ソウマが無線に向かって叫んだ。
「俺だって、やってやるさ!」
ソウマは壁を蹴った。
カウンターがゴウライの脚部を掠めた。
ソウマがコアを狙った。
レイは咄嗟にスラスターで回避した。
ソウマの追撃がコアをかすめた。
レイの戦鎌がそれを弾き返した。
互いの剣戟が火花を散らした。
ソウマの息が荒くなった。
その時、ゼツエイが瓦礫を砕いて現れた。
「ソウマくん、お待たせ!」
ソウマが一瞬の隙を突いた。
ゴウライの脚部を貫いた。
多勢に無勢の状況に、レイの冷静さが崩れる。
「あれは公国の機体か……! ふざけたことを」
リンカのゼツエイがワイヤーを放った。
レイはスラスターを吹かし避けた。
だがゴウライの脚部が損傷したせいで機動が鈍くなった。
警報音がコックピットに響いた。
エネルギー残量が急減する警告が画面に赤く点滅する。
「エネルギー……不足か! こんなところで……!」
レイは歯を食いしばり、残存出力を振り絞って旋回を試みた。
ソウマとリンカの連携が容赦なく迫る。
ソウマの攻撃が再び脚部を抉り、リンカのワイヤーがスラスターに絡みついた。
ゴウライの巨体が軋みを上げた。
バランスを崩して壁に寄りかかるように傾いた。
レイは最後の手段を悟り、脱出ポッドを稼働した。
煙幕を噴射して坑道の奥へ逃げ込んだ。
視界が白く閉ざされた。
追撃の隙はなかった。
ソウマは鎧を解除した。
リンカもハッチから飛び降りてソウマに駆け寄った。
「ソウマくん、無事!?」
リンカは明るくハイタッチした。
ソウマは息を切らして笑った。
「リンカさんこそ……援護がなかったら、危なかった」
格納庫の薄暗いランプの下。
クルーたちが輪になって集まった
リンカが皆の輪に加わった。
ソウマの隣に腰を下ろした。
「ふふ、みんなお疲れ!」
リンカは明るく笑った。
ユナがソウマの傷を手当てした。
「ソウマ、あのレイってやつ……怖かった。煙幕の向こうで、まだ私たちを睨んでた気がする」
リンカがユナの肩を軽く叩いた。
「ユナ、心配しすぎよ!」
カズマが壁に寄りかかり、煙草をくわえた。
「次はもっと厄介な罠を仕掛けてくるぜ」
リョウタが静かに頷いた。
「レイの執念は、俺たちの想像を超えてる」
ミコトがログをスクロールした。
「残渣から、カゲトリデで合流する可能性が高い。脱出ポッドの軌道が、要塞方面に向かってる……」
ノゾミが拳を握った。
「みんな、怖いよね。でも、テツカガミはみんなの絆でここまで来たんだ。レイが来ても、出力最大でぶっ飛ばすわよ!」
ジンが皆を見回し、低く言った。
「お前たちの結束が、俺の誇りだ。次なる戦いに備えよう」
ソウマは皆の顔を見渡し、胸の熱さを抑えきれず頷いた。
「みんなを守るために、絶対に負けない。この不安を、力に変える」
リンカがソウマの背中をポンと叩いた。
「それでこそ! 一緒に決着つけましょ!」と笑顔で締めくくった。
格納庫に静かな決意の溜息が広がった。
船はメッカイサイへの道を再開した。




