第十一話
ミコトがセンサーを睨んだ。
「敵です! 魔導航空騎兵部隊……識別照合します。シユウ・クロノの部隊!」
彼女の指がディスプレイを高速で操作した。
タイムラグを挟みながら、レーダー波がようやく敵を捉えた。
画面に浮かぶ漆黒のシルエット。
マガイの重厚な輪郭とシックウの鋭い機影を交互に映し出した。
編隊の規模が十機以上であることを示した。
ミコトの額に汗が光った。
敵の速度が毎秒四十メートルを超えていた。
高台からの待ち伏せを確信させるデータが次々と蓄積された。
シユウの金髪がヘルメットの隙間から零れた。
唇の笑みが傲慢を映した。
斥候からの暗号回線が入電した。
「高台陣地、ミサイルロックオン完了。標的熱源、確認」
計算尽くめの罠だった。
マガイ──重武装の魔導航空騎兵──が、急降下した。
マガイの巨体が青白い排気炎を長く引きずった。
魔導機銃の初弾が木々を薙ぎ払った。
シユウは自信に満ちた笑みを浮かべた。
コックピットで無線を叩いた。
「パイロット諸君、クロノ家の名誉を!」
放送のノイズがテツカガミに届いた。
シユウの笑みがモニターを睨んだ。
胸のクロノ家の紋章が青く脈打った。
挑発は部下の士気を高めた。
応答の「名誉に懸け、粉砕せよ!」が響いた。
後方には、軽量で機敏なシックウがいた。
隊列を組み、低空旋回した。
魔導爆弾が投下され、森を焼いた。
直径二十五メートルの火球が膨張した。
熱波が空気を沸騰させた。
結晶樹木の幹が内圧で爆裂した。
余波がテツカガミを揺らした。
外壁に飛び散る破片が金属を叩いた。
ジンが叫んだ。
「シールドを展開しろ!」
障壁を展開した。
ジンの目はマップの包囲予測線を睨んだ。
「まだ耐えろ! 反撃の隙を待て!」
クルーの動きが変わった。
ミコトがコンソールを確認した。
「マガイが正面、シックウが左右から包囲!」
報告がマップに即反映された。
マガイの重圧とシックウの死角攻撃が視覚化された。
カズマがパルス砲を発射した。
シックウの翼を焦がした。
彼の目はマップの弱点を睨んだ。
「リョウタ、挟撃崩すぞ!」
リョウタは榴弾砲を構えた。
「あぁ、いつでもいける!」
ユナは格納庫のソウマに駆け寄った。
ソウマの肩にそっと手を置いた。
「ソウマ、あの放送……あなたを狙ってるの?」
ソウマは額をユナの肩に寄せた。
「ユナ、俺も怖い。……この力が、みんなの未来を壊す道具になるんじゃないかって。でも、君がいるから、守れる気がする。一緒に、生き延びよう」
ユナはソウマの手を握った。
二人の共有した不安が、ソウマの胸に静かな炎を灯した。
「俺……行くよ。離れてて」
彼は立ち上がり、戦闘準備に動いた。
ソウマを銀粒子が包み込んだ。
「ジンさん! いつでもいけます!」
ハッチを開く準備をした。
シユウが部下に命じた。
「シックウ、左右から挟撃!」
命令がプライベート周波で伝わった。
「了解! ルート確認!」
シックウが加速し、テツカガミを狙った。
シユウは睨んだ。
「マガイ、全速前進せよ!」
マガイが急降下し、爆弾を連射した。
センサーを乱した。
シユウの陣形が天蓋を覆い、機銃が岩を削った。
航空優勢の包囲だった。
時間稼ぎの戦いが闇を深めた。




