表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界独立戦争 ~継承された守護魔道~  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/38

第一話

 核戦争から二百五十年後。

 魔界公国──旧四国の旧高知に位置する辺境集落、ムカイハラ。

 ここは、中央人界帝国──旧九州の旧熊本──の魔導書研究を隠す偽装農業施設だった。

 強制移住された住民は労働者として協力し、研究者たちが極秘に技術を開発していた。

 空は灰色の霧に覆われていた。

 それは魔素と呼ばれる核の遺産。

 放射性ナノ粒子の変異物質。

 体内に取り込むことで、新たな力を生み出すことができる。

 変異魔力が血を熱くし、魔力という潜在力を引き出した。

 ソウマ・ツキヤマは工房の窓から外を見た。

 魔素が体内に染み込み、魔力を呼び覚ました。

 結晶植物は魔素の毒を中和し、淡い青い光を放った。

 彼は結晶植物の光に手を伸ばした。

 指先にまとわりつく冷たさが、心に希望と不安を呼び起こす。

 彼は子供の頃から、夜ごと星を眺めては、外の世界を想像した。

 村人たちは光を頼りに暮らしていた。

 子どもたちは結晶の欠片で遊んだ。

 農夫たちはマスクを着けて収穫に励んだ。

 戦争の長期化で物資が途絶えていた。

 自給自足の日々が続いた。

 それは彼の好奇心を苛立たせた。

 父のリュウジ・ツキヤマは、戦争開始から四十二ヶ月後。

 帝国から守護魔導書を携えてムカイハラへ送られた。

 彼は秘密研究者だった。

 古い核技術を基に、変異魔力を利用した魔法を開発していた。

 ソウマは傍らで学んでいた。

「ソウマ、今日もその巻物か? 五十年前の移住の話は、皆知り尽くしているぞ」

 工房の薄暗いランプの下で、リュウジが笑いながら言った。

 テーブルの上には、古びた羊皮紙が広げられていた。

 そこには記録があった。

 人口爆発と資源不足を理由に、支配者たちが未開発の魔界へ民を強制移住させた。

 魔界民は搾取され、孤立無援の開拓を強いられた。

 そして不満が爆発した。

 クロノミヤが「魔界公国」を宣言した。

 魔力独占欲が引き金となった。

 争いは散発的な衝突として始まった。

 それ以来、ゲリラ戦が続き、徐々に深刻化していた。

 ソウマは巻物を指でなぞった。

 幼い頃、祖母は膝に彼を乗せ、霧の向こうを指差して言った。

「あそこに、新しい畑ができるよ。帝国は私たちを捨てたけど、ここで花を咲かせるの」

 だが、巻物の記録を読むたび思う。

 帝国が先祖を未開発地に送り込んだ。

 搾取した歴史に、怒りが込み上げる。

 ソウマは呟いた。

「祖母の言葉、信じたいけど……この記録見ると、全部帝国の策略じゃん。父さん、どう思う?」

 リュウジは優しく諭した。

「そうだな、ソウマ。歴史は残酷だが、お前が変えられる。俺の研究が、その鍵だよ」

「人間界は、ただの『未開発地の労働力』としてしか見てないんだ。魔界の物資を独占しようとしてるくせに」

 彼は帝国への不信を感じた。

 村を守りたいという思いが、互いにぶつかる。

 リュウジは肩をすくめ、笑顔を浮かべた。

 彼は時折、夜中に工房で独り言を呟いていた。

「たしかに、あいつらは俺たちを道具としてしか見ない。でも、この書で家族を守るんだ」

 家族の安全を祈りながら研究に没頭していた。

「あの頃、俺たちを魔界に放り込んだ。飢え、獣に追われ……。だが、俺はこの研究で、村を守るんだ。お前も、いつか継いでくれ」

 リュウジは棚から魔導書を取り出した。

 表紙の刻印が、冷たい空気の中で淡く輝いた。

 触れると指先に波動が走り、古い記憶が肌に染み込んだ。

 魔導書は公国製の高度な装置だ。

 魔力を源に活性化し、プログラムで魔素を自在に形成する。

「この書は力になるが、扱いを間違えれば……」

 彼は鋭い視線を向けた。

「これが完成すれば、魔界の未来が変わる」

 それは最先端技術だった。

 鎧に武器や防御を追加し、多様な魔法を発動できる。

「お前のような若者が、そんな過去に縛られる必要もなくなるはずだ。テストは今日だ。手伝ってくれ」

 ソウマは父の言葉が胸に刺さるのを感じた。

 とはいえ、もし戦争が本格化したら……。

 彼は工房の隅で古い地図を広げた。

「父さん、クロノミヤの都市はどんなところ? 独立したら自由になれる?」

 リュウジは苦笑した。

「お前が継げば、わかるさ」

 ソウマは頷き、父の指示に従って呪文の準備を始めた。

 工房の外では、村人たちが秘密施設の労働者として結晶植物を栽培していた。

 日常作業に追われていた。

 帝国の監視ドローンが上空を飛ぶ。

 戦争の接近による緊張が漂っていた。

 ユナ・ホシノは結晶の籠を抱えていた。

 彼女の家族は農園を営む。

 魔素を抑える術を知っていた。

「なんか、空気が重い……ソウマ、どこにいるんだろう。今日も工房かな」

 遠くから住人の声が聞こえてきた。

「ユナ! 霧が濃くなってきたぞ、早く戻れ!」

 ユナは急いで帰路に就いた。

「夜が騒いでいる、なんか怖いな」

 彼女の声は震えていた。

 誰も知らなかった。

 数時間後、運命が迫っていることを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ