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少子化対策に恋愛はいらない

作者: 稀Jr.

皆様もご存じのように本邦では人口が減少しています。特に若年層の人口減少が著しく、将来的な労働力不足や社会保障制度の維持に深刻な影響を及ぼすことが懸念されています。この問題に対処するためには、少子化対策が不可欠です。

そこで、政府や東京都は婚活サイト立ち上げました。しかし、婚活サイトだけで少子化問題が解決するとは限りません。そもそも婚活とは何かというのが若者たちには分からなかったのです。単なる出会いサイトとして扱われては困ります。婚活は結婚を前提してからこそ、婚活サイトなのであって、結婚をしないのであればそれでは単なる出会いサイトに過ぎません。出会いサイトならば、別に政府がやる必要はありません。税金の無駄遣いです。民間にやって頂きましょう。それこそ民営化ということです。

そうなると、婚活サイト以前の問題として、恋愛サイトあるいは恋愛指南が必要なわけです。相互に恋愛に落とし込み、きっちりと婚活してもらわないと少子化対策になりません。恋愛にしても少子化対策にならない恋愛では意味がありません。ロマンス詐欺にしても、きっちりと少子化対策がされていれば、そこには助成金がでるかもしれません。しかし、ロマンス詐欺は少子化対策にはならないのです。なぜならば、外国からの交信とか宇宙からの交信とかに限られるだけです。せめて船からの交信であって、帰国してから少子化に貢献してくださればいいのですが、ロマンス詐欺ではそうはいきません。届かないのです。


「では、議長、第1回 少子化恋愛サイト対策会議を開会します。みなさま、婚活サイトの前に、恋愛が必要だということで、ご意見を収集したいと思っています」

「え? ちょっと待ってください。それって、婚活には恋愛が必要だという前提なのでしょうか?」

「はい、その通りです。婚活サイトを利用する前に、まずは恋愛が必要となります」

「しかし、恋愛と結婚は別物ではないでしょうか? 恋愛がなくても結婚はできると思いますが・・・」

「確かに・・・古来より、恋愛のない結婚も存在しますし、恋愛のない少子化対策も存在します。まして、少子化対策が必ずなされている少子化対策もあるとは思いますが、別に少子化対策をしない結婚もあるのではないかと思う次第です」

「いや、恋愛のない少子化対策はどうなのでしょうか? それはイリーガルな現象ではないでしょうか?」

「いえ、そんなことはないでしょう。古来より、ミジンコやらアメーバーやらの恋愛を描いたものもあります。さらに言えば、寄生虫による恋愛を描いた小説もあります。それから考えれば、寄生虫をもとにした恋愛のなかで、寄生虫同士は恋愛しているのか否か、という問題が残るのです」

「なるほど、寄生虫同士は恋愛しているが寄生されているヒトは恋愛していないという場合もありそうですね」

「はい、そうです。例えば、寄生虫がロミオとジュリエットであり、寄生されている組織がキャピュレット家とモンタギュー家である場合、寄生虫同士は恋愛しているが、寄生されている組織は恋愛していない、ということもあり得ます。ヒトと集団を分化するのが、ヒトの世界ではありますが、実のところはヒトは組織に属していないと生きていけない種族であり、そういう意味では、ロミオもジュリエットも寄生虫と言えるでしょう」

「主体としては、組織な訳ですね。つまりは、アリや蜂と同じ社会形態をもつということでしょうか?」

「ええ、その通りです。ですから、組織の思い通りにいかないものが寄生虫でもあり、寄生虫の思い通りにいかないのが組織ということです」

「そうなると、組織同士は恋愛をしているけれども、寄生虫は恋愛をしていないという例もあるということですね」

「そうです。多民族国家という組織がそれにあたります。国家あるいは連邦あるいは合衆国の中では組織ごとは密接にくっつきあっていちゃこらしている訳ですが、そこに住むヒトは恋愛を好むわけではありません。むしろ、二つの新しい組織を作って争いあうこともしているのです。これはゆゆしきことですね」

「ええ、組織に属している寄生虫が、あらたに組織となる体制を作ってしまうというわけです。まるで、プラナリアの分化のようです。外部的な要因でなくても、全体の組織が別の組織へと変質してしまうことがあります。これにより、組織の意図とは違った形で、寄生虫自身が別の組織を立ち上げて移動して去ってしまうこともあるのです」

「それは、ヒトという寄生虫が恋愛をして、新しい少子化対策をすることに至ることを阻害することになるのではないしょうか?」

「はい、その通りです。ですから、恋愛サイトという匂いをかがせて、寄生虫同士が少子化対策できるように促すのです。最初は、暴力的な少子化対策をしないようにドメインで区切ったあとに、ゆるゆると婚活サイトへと誘導するのがよいでしょう」

「なるほど、そうなると出会い系サイトにならなずにすむというわけですか」

「そうです、その通りです。ですから、まずは恋愛サイトを立ち上げて、そこから婚活サイトへと誘導するのがよいでしょう。そうすることによって組織が安定化するのです」


どーん、寝返りを打って俺は床に落ちた。

椅子を三つならべて寝ていたのだが、どうも寝返りを打った拍子に椅子から落ちたらしい。

「ううっ、いたたたたた・・・」

モニタには作成途中のサイトの HTML が表示されている。

いや、もう無理だ。明日、辞表をだしてこの仕事は辞めさせてもらおう。これじゃぁ、まるでブリーダーゲームじゃないか。モニタには地球が廻っていた。


【完】


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