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<第一部 マンハッタン島編 第七章『最大公約数』シーン2-5>

(シーン2-5)


マケルロイの演説はどんどん盛り上がり、両腕も大きく動かしながら熱弁を振るっている。

「アメリカの軍人たちは勇敢に戦い、カイザーの独善的支配を打ち砕き、世界はいま、まさに民主主義の福音によって覆われつつある。そしてこの戦争は、我々の——“聖なる民主主義の十字軍”の――勝利のうちに終わろうとしている!!」

バーナビーは真剣な表情でときおりうなずき、ソロモンもメモをとりつつ、大人しく聞き続けている。昨日の人種平等議論のときみたいに“反証可能性がいくつもある。論証して見せろ”みたいなことは言わなさそうだ。

(…民主主義の十字軍って、なんだ?十字軍はキリスト教のために進軍したけど、民主主義もまた宗教なのか?)

(たた)えよ!大統領の決断を!讃えよ!合衆国民の団結力を!讃えよ!民主主義による進軍を!!!」

1万人の聴衆に呼び掛けているかのような声量だ。

(共和党の宗教力…ウィルソン大統領の宗教力…NSLの宗教力…)


「そして君たちがッッッ!!!」

いきなり、話題の主語がアーロンたちになった。すごい勢いで指を突きつけられ、ビクッ、と体を震わせてしまう。

「――君たちという、才能あふれる若き愛国者たちが、ヨーロッパに渡り、疲弊し傷ついた彼の地にて、“民主主義の再建を(うなが)す宣教師”となる。それこそが、神がこの時代に君たちへ与えた使命だ。……まことに喜ばしく、(うるわ)しく、そして気高い行為である」

恍惚とした表情だ。いやそれ、絶対ちがうんだけど。


(バーナビーさんとは打ち合わせしてなくて…ロッジ議員からの申し送りとは()()()()異なる…なるほど…)

明らかに、十四か条調査団の目的をマケルロイは誤解して乗り込んできていた。民主主義の再建を促すのは確かに気高いけど、ロッジから言われたのは“ウィルソンの野望を調査しろ”なのだ。


(最大公約数は1。英語をしゃべってることかな、アメリカ人であることかな…)

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