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<第一部マンハッタン島編 第一章『冒険への召命』 シーン6-1>

(シーン6-1) 

1918年9月19日木曜日 午後5時ごろ

マンハッタンの街を歩きながら、不思議がるアーロン。

(面会場所はブリーカーストリート177A…The Sanctum‐House?通りかかったことはあるが、そんな名前の店あったかな…?)

マニング先輩に頼んだのに、ついて来てはくれなかった。

"一言だけアドバイスだ。ロッジ議員は共和党の大物だ。アメリカの政界では二番目の権力者と言って良い。断る選択肢も与えてくれるだろうが、その権力はお前の想像を絶している。その意識でいろ"

と、恐ろしげな助言をしてくれた。今までの先輩とは違う迫力があり、軍情報部の仕事をしているという話は聞けずじまいだった。そういえば、DDの家賃のこともだ。明日会えるなら、もう一度頼んでみないといけない。


住所に到着すると、おごそかで神秘的な館だった。ノックしても返事はない。扉が重いが鍵はかかっておらず、開けてみる。重たいのに、きしむ音はなく静かに開いていく。外から差し込む夕日が空中のホコリを輝かせている。一万年くらい使ってそうなペルシャ絨毯が敷かれている。古いのに美しく見えて、靴の泥をできるだけ落としてから踏み込むことにした。

絨毯だけでなく、館内には威厳を感じる高級そうな調度品が並べられている。あれはジャパンのかな?インドのかな?オリエンタルな雰囲気の品々には、どこの文明か判別できないものも多い。どの調度品も場所になじんでいて、一万年はともかく千年前からこの館にあったという印象を持たせる。

マニング先輩も来たらよかったのに。ロシアや東欧に詳しいから、少しは解説してくれたかも。

「ネイバーフッド君」

正面に見える階段の、上のほうから呼びかけられた。

「こっちだ」

階段を昇ると、ヘンリー・カボット・ロッジ上院議員がいっそう神秘的な雰囲気をまとい待ち受けていた。高級ブランドっぽいスーツ。整えられた口ひげ。暗い部屋の中でほんのり輝いてるようにすら見える。 大物政治家って、実際に会うとこんなにオーラのある感じなんだなぁ…。


うながされて、椅子に座る。二席あるのはどうしてだろうか?もう一人来るのか?

「君の論文、読ませてもらった」

うわー、はずかしい。

「光栄に、ぞ、ぞんじます…」

「論理展開は少々稚拙だが、着眼点が良い」

うわわわ、きわめて真っ当な批判と曖昧なお褒めが同時に来た。もっとはずかしい。

「とくに重要なのは、ウィルソンの十四か条を儀礼手順に例えていた箇所だ」

「バチカンは十四か条に書いてありませんでしたが…?」

用意していた疑問を尋ねてみると、ロッジ議員がニヤリと笑った気がした。

「さすがコロンビアの院生だ。私からどういうことを言われるのか、ある程度推測を立てている」

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