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<第一部 マンハッタン島編 第五章『ラフ・メンバーズ』シーン7-3>

(シーン7-3)

「9階に持ち込むものは最低限とし、個人の荷物は極力この部屋に置いていくこと。10時になったらこの部屋を施錠する。さっきも言ったが、トラブルは避けろ。秘密任務であるという意識は常に持ち続けてくれ。明朝、午前6時からこの部屋で朝食を食べられるようにする。午前8時から講義を開始…デモス君たちに小テストを受けてもらっていないから、それをやらねばな」

メンバーたちは聞いているような聞いていないような雰囲気だが、かまいはしない。サイディスが完璧に記憶してくれているはずだ。


午後7時6分9秒。

「では、解散だ。みんな自由にしてくれ」

そう言ってバーナビーは、明日以降の予定を確認するために手帳を開いた。

(明日合流予定のメンバーは、すでにニューヨーク市に入っているはずだ。遅刻はないだろう。…だからやはり、セナ・グレイウィンドが最大の未知数だ)

1時間38分前に、退出していくパールマンが別れ際に言ってきたことが思い出される。

”ラフな学生たちだけど、バーナビーさんなら上手くやれますよ。自信をもってください”

何を根拠に言ってるのかはわからないが、激励として受け取った。


Roughなメンバーたち…。アーロンが持ってきていた、テディ・ルーズベルトの従軍記『The Rough Riders』。物資不足で馬を配備されなかった騎兵隊は、徒歩で戦い続け、それでも活躍し英雄になった。勇気と根性としか言いようのない力が、テディ・ルーズベルトと隊員たちにはあった。

(私はテディ・ルーズベルトにはなれない。アーロンも、おそらくはなれない)

懐中時計を裏返し、文字盤ではない側を久々に見つめる。ハイスクール時代に先輩がナイフで刻んでくれた文字が、――新品だった時計に勝手に刻まれたのだが――20年近くたってもまだ残っている。

『ONE FOR ALL, ALL FOR ONE』

所属していたフットボール部がモットーとしていた言葉だ。

(マーティン先輩に相談してみようか?…あの時期以来、会っていないが)

刻まれた文字を親指でぬぐってその凹凸をたしかめ、さらにもう一度、表側で時間を確認してから、バーナビーは今日のぶんの報告書を書く作業を始めた。

午後7時11分24秒。その時計は、今夜も1秒を1秒として刻む。


<第一部第五章『ラフ・メンバーズ』完。1918年9月23日終了。翌日の第六章へ続く>

1918年9月23日の解説パートを明日投稿します。本編の続きはまだ書けていませんので、再開までしばらくかかります。年内に再開できればいいな、くらいの感じです。→11月12日に再開できることになりました(20251111追記)

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