表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/114

<第一部マンハッタン島編 第一章『冒険への召命』 シーン5-2>

(シーン5-2)

院内ではアーロンはとくに優秀なほうではない。だが、学者の卵として学長に侮られたくはないので、必死で頭を回転させる。回転の前に、自分の書いた論文の内容を思い出さなくてはならないが。

「ウィルソン大統領が、バチカンで何かやろうとしてるのですか?」

「Cプラス」

バトラー学長が冷静に採点してくる。方向性は合ってるらしい。

「ローマ法王と会う(のか?)…その会談は秘密裏でおこなわれる予定(なのか?)…」

たしか、ウィルソン大統領の十四か条演説には、現法王ベネディクト15世の提言を参考にしたと思える条項がいくつかあった…はず。

「Bマイナスだ。まぁ、いいだろう。要するに、ウィルソン大統領より先にバチカンを調査する必要があると、ロッジ議員は考えている」

「議員からは、私が行くように、と言われていたのだがね。私はジャパンとチャイナで別件がある」と、デューイ教授。

「なぁしかし、やはりマニング君が行くべきではないか?」

「まだ戦争がつづいているし、昨日も言ったが情報部の仕事を投げ出すわけにはいかんだろう。マニング君は後方担当を頼む」

…What?情報部?

「アーロン君とマニング君は仲が良いようでもあるしな」

マニング先輩のほうを見る。黙ったまま、ウィンクをしてくる。ぎこちないウィンク。情報部って、あの情報部か?偵察とか暗号とか外国人の調査とかの?軍事機密…ってさっき言ってたような…。


「待ってください、マニング先輩が後方担当って、僕が前線ってことですか?」

「そうだ」

「イタリア語はしゃべれませんよ。それに…えーっと」

それに、宗教史専攻なのに、あまり伝統的キリスト教には詳しくない。アーロンはバージニア大学時代、アーサー王伝説を必死で調べて、それが評価されてコロンビア大学院のMA(修士)課程に入れた。でも、それを今言うと、デューイ教授とバトラー学長という、この学校の権力者二人に強い失望を与えかねない。

「君がカトリックに詳しくないのは知っている」

アーロンが言い淀んだことを、デューイ教授がそのまま言ってくる。知ってるのかよ!

「その余白が重要になるかもしれん。伝統的な見解ではない推察を伴う行動が求められる。言語の問題は、現地で通訳を用意する。イタリアだけではなく、最初はフランスだ。長い旅になるぞ。学籍は保証する。まずは今日の午後5時にロッジ議員に会ってほしい」

まくし立てられて、アーロンには、長い旅になるということしか分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ