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<第一部 マンハッタン島編 第五章『ラフ・メンバーズ』シーン4-5>

(シーン4-5)

アーロン、エリス、デモスの3人も、「へぇー」という顔をしている。

ラガーディア下院議員は共和党の国会議員の中でも有名なほうだ。若く、活動的で、愛国心あふれる言動を積極的に行い、現在は戦地でパイロットとして従軍している、前代未聞の"空飛ぶ国会議員"。イタリア系出身であるので主流になりきれていないが、今後の活躍次第ではテディ・ルーズベルトのように大統領にまでなるかもしれない。低身長の外見も特徴的であり、政治に興味のない若者にもアイドル的な人気がある。


「ロッジ議員とラガーディア議員が協力して外交官育成!共和党の未来は明るいですなぁ!」

「共和党のみならず、合衆国のためですよ」

興奮しているオグデンと、卒のないパールマン。

ラガーディアが十四か条調査団の一員というのは真実なのだろうか?ロッジの計画の全貌を知らないバーナビーには判断できない。


「そして 若き天才たち――神童サイディスも含まれているらしい――をヨーロッパへ派遣してウィルソン大統領への提言を行い、政権奪還を狙う!これはやはり、私自身が行くべきですかな!?」

「まぁ、報道はご自由に、と言いたいところですが、ミスター・リードにそのお暇はないかと思いますよ」

「お、何かまた別の事情をご存知のようですね?パールマンさん」

場の主導権はパールマンに移ったようだ。パールマンをどこまで信用していいのか、成り行きを見守るしかないバーナビー。


「ラガーディア議員が来月帰国されます。私にだけ電報が届きました」

「…なるほど!選挙までには戻るだろうと思っていましたが、ついに"革張りの椅子"に戻られるわけだ」

なるほど。少なくともオグデンをニューヨークにとどめておける理由にはなる。

『私のかわりにカプロニ複葉機で戦う勇士が別にいるのなら、私は議院の革張りの椅子に戻るだろう』

――政務より軍務を優先しての長期不在が問題視され、辞職要求運動をされたときにはイタリアでそう言い放ったというラガーディア。 それから半年以上たった今も下院議員の席は保持されている。留守を任されているのは表向きにはワシントンにいるシーゲル下院議員だが、ラガーディア本拠地のニューヨークを実質的に切り盛りしているのは、ラガーディアの秘書たちとパールマンだ。


「今日はそれをお伝えしにきたんですよ。ミスター・リードを探していたら、5階に行ったと聞いたものですから、追いかけてきたのです。『英雄ラガーディア帰還』のニュースは、他の新聞社よりニューヨーク・トリビューン社に最初に報じてもらいたいのです」

「それはわざわざ…ありがとうございます」

「それともう一つ、意外な特ダネというわけでもないのですが、先ほどジョン・リードが起訴されました」

ジョン・リード、ハーバード大学の後輩。今では過激な社会主義者として有名になってしまった。先週逮捕されてすぐ保釈されていたはずだ。

「個人的に社会主義者には目を光らせていますので、情報をつかんだのは記者さんたちと私はほぼ同時かと思います。本社にお戻りになったほうがよろしいかと?」

「…ふむ!たしかに長居しすぎていますな。外交官育成計画については、日曜日出航とのことですから、また数日後に取材に来ますよ」

素早く丁寧に全員へ挨拶をし、オグデン・ミルズ・リードは去っていった。


午後4時08分44秒。

パールマンはその場に残っている。まだ少し、バーナビーと話をしたいらしい。


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