<第一部 マンハッタン島編 第五章『ラフ・メンバーズ』シーン4-4>
(シーン4-4)
オグデンとの間の空気は、まだ揺れている。バーナビーは、これ以上は受け身でいられないと判断した。バーナビー自身の考えを整理する機会でもある。
午後3時59分26秒。
時計を確かめてから、バーナビーは発言を始めた。
「ウィルソン大統領の十四か条演説は、字義どおりにとると無理や矛盾があります。ヨーロッパの現実にそのまま適用できるとは、思えない。大統領本人が妥協点をどこに想定しているかは分かりませんが」
「それで、バーナビーさんたちが急いでヨーロッパへ行かれるわけだ?」
「その通りです。若く優秀な知性の持ち主たちに、ヨーロッパの現実を見てもらう。大統領の政索の補強提案を、我々共和党はしていかねばなりません」
「素晴らしい。全面的に賛同します」
オグデンは納得してくれたようだ。バーナビーも、ある程度まではロッジの計画の重要性に納得することができた。しかし問題はここからだ。
「その調査旅行に、我が社の記者を同行させてもらってもよろしいですかな?」
「それは…」
「いや、できれば関わる人間を増やしたくないでしょう。それなら、私自身が行ってもいい」
これが問題だ。マスコミを関わらせることやメンバーを増やすことは、さすがにロッジの判断を仰がねばならない。なぜロッジはバーナビー1人にこの計画を任せているのか、そこはまだバーナビーも理解しきれていない。
バーナビーが迷っていると、部屋の外から咳払いが聞こえた。
「そろそろ、扉を開けたままする話ではなくなっていますよ」
廊下から別の男が会話に加わってきた。
「おお、ミスター・パールマン」
「ミスター・リード、ミスター・バーナビー、失礼ながら、数分前から聞かせてもらっていました」
現れたのは、バーナビーとオグデンより5歳年下の弁護士ネイサン・D・パールマン。去年は州議会議員を務めていた、ニューヨーク共和党の若手代表格だ。
「パールマンさんも、この計画に関わってらっしゃる?」
「はい。まだ内密にお願いしますよ」
平然と答えたパールマンだが、バーナビーには初耳だ。
「そして、ラガーディア議員もです」
それも初耳だ。
「なんと、なんと!」
興奮するオグデンの隙をついて、パールマンはバーナビーにだけウィンクを送ってきた。ハッタリなのか?




