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<第一部マンハッタン島編 第一章『冒険への召命』 シーン1>

(シーン1)

1918年9月19日木曜日午前6時、アーロンはマンハッタン島・ロウワーイーストサイドのテネメント(安アパート)で目覚める。この物語の主人公、アーロン・J・ネイバーフッドはニューヨークのコロンビア大学に通う、23歳の若き宗教史学者だ。


妙な夢だった。

なぜウィルソン大統領と戦ってるのがレーニンだとわかったんだろう?新聞のぼやけた写真でしか顔を見たことがないのに…。そう思いながら顔を洗う。


出かける前に気づいたが、自室のドアの下には紙が差し込まれていた。同じテネメントに住むDDからのメッセージ。

『二週間くらい帰れない。家賃を建て替えといてくれ。DD』

はぁ?月末にさらに16ドル必要だって?いや、今月からは17ドルだったか?僕の食費がなくなっちゃう…。シュナイダー教授に頼んでみようかな。マニング先輩は貸してくれなさそうだなぁ。“ドクター”は僕より貯金がなさそうだし…。


部屋から出て階段を下りる。下の階のアイルランド系の主婦とあいさつをする。

「また家賃が上がるらしいですね」

「きついよねぇ」

工場労働者の多いこの集合住宅で、学生のアーロンは起きるのが遅いほうだ。


人通りの多い交差点まで歩き、いつものごとく新聞売りの少年から新聞を買う。黄色い紙を使っているからなのか、ほかの新聞よりはるかに安価なイエロー・ジャーナル紙。もっと多種の新聞を同時並行に読むべき、とは父が言っていたしDDも言ってるが、だったら一番安いこの新聞を読むのも無駄にはならないだろう?


レーニンの記事が載っている。が、暗殺未遂で重傷を負ったという、すでに報じられている以上のことはわからない。写真もないので、レーニンの顔が確かめられない。

「なんで撃たれたかとか、書いてほしいよな」

「ロシアのことを気にするなんて、国際派だな、兄さん!変な夢でも見たのかい?」

新聞売りのイエロー・キッドが歯の抜けた口を開いて笑う。


元気な老人が早足で近づいてきた。普段ならすれ違うだけだが、今日はキッドの露店の前で考え事をしていたので、「おはよう!すまんが避けてくれんかね!」と声をかけられて、慌てて避ける。

「あ、すみません・・・いつもすごい速さで歩いてるよね、あのおじいさん」

「すげぇよな!毎朝マンハッタン島を一周してるらしいぜ。しかも、昔は歩いて大陸横断したんだってよ!ギャハハ!」

甲高い声で無茶なことを言う。10代前半にも見えるが、イエロー・キッドはニューヨークのことをなんでも知ってるみたいで、アーロンにいつも真偽不明なトリビアを教えてくれる。新聞記者の人ともよく話をしているのを見かける。情報交換をしているのだろう。

 (いつか学者として成功して余裕ができたら、キッドの言うことを確かめていく研究がしたいな…)とアーロンは思う。しかし、成功した学者って余裕があるものなのだろうか?デューイ教授はいつも忙しそうだ。いや、デューイ教授が特例かもしれない。

「地下鉄の次発はあと2分で発車だ!急ぎなよ、兄さん!」

キッドは交通事情も異様に詳しいのがとてもありがたい。

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