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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

悪女にされた令嬢は、婚約破棄され、殺人犯にしたてあげられました

掲載日:2024/09/21

異世界恋愛短編のはずが、ミステリー要素が強まり過ぎて。流石にジャンルは変えました。

これを恋愛にするのは、流石に無理だった。タイトルはその名残です。

「アーボ様。激務が続いておりますが、お体の方は大丈夫でしょうか?」


 宮殿の第三皇子。その執務室で、私はこの部屋の主に問いかけた。

 アルトコロ帝国、第三皇子。アーボ・エライ―ノ。

 整った顔や政治の手腕から人気が高く。


 兄二人を差し置いて、次期皇帝の期待が高まっているほどだ。

 私にとっては、三日後に結婚する相手となっている。

 勿論、政略結婚なのだけど……。


「アイリス。何度言えば気が済む。俺の事に口を出すな」


 アーボ様は私を見るなり、不機嫌な声を上げた。

 その理由は察している。彼は私の事を憎んでいるのだ。

 彼だけじゃない。宮殿の皆も、国民も私の事を悪女だと思っている。


 卑怯な手で、アーボ様と婚約を取り付けて、卑劣な令嬢。

 それが私の世間一般的評価だ。

 叔父が勝手に取り付けた婚約に逆らえず。こんな悪評を得てしまった。


 それにアーボ様には、心を通わせた幼馴染が居た。

 隣の王国の王女。カーラ・ケンリョ様。

 隣国の友好のため、多くの人が当然二人が結婚するものだと思っていたのだろう。


「私だって、そう思っていたのに……」


 私は知らないが、叔父が破格の条件を国王に提示したらしい。

 そのせいで私はアーボ様と、婚約させられた。

 私はひっそりと暮らしたいタイプなのだけど。一気に有名になっちゃった。


 溜息を吐きながら、執務室を離れる私。

 周囲の人間は私を見るなり、片目を半分閉ざす。

 宮殿中の人間も、私の事は良く思っていない。


「今日も鬱陶しがられた?」


 唯一の例外が、宮殿にいる事だけが救いだ。

 私に話しかけた青年は、ゴミガ・イチと言う。

 私と同じ爵位の人間であり、古くからの友でもある。


 私の事を良く知る彼だけが、私の味方でいてくれた。

 ゴミガは士官学校を卒業し、騎士として宮殿で働いている。

 戦士としては頼りない一面があるが。いつも優しく、周囲に気が利くのだ。


「しょうがないよ……。アーボ様からしたら私は、幼馴染との結婚を潰した悪女なのだから」 

「そう。みんな君の事を知れば、きっと仲良くなれるのに。表面だけしか見ないんだね」


 ゴミガは立場が悪くなるのが分かっているのに。

 いつも私を弁明してくれた。

 そのせいで、彼も騎士団の中で悪く言われている。


 そんなの気にしない素振りで、ゴミガはいつも私に語り掛けてくれる。

 彼が居るから、私は何とかやれているようなものだ。

 

「今日、カーラ様が訪れるらしい」

「そう……。道理で私が訪ねると、不機嫌なはずだわ」

「良くない事が起きそうな気がする。警戒した方が良いよ」


 ゴミガは兜に手を当てながら、私に警告した。

 確かに。このタイミングでカーラ様の来訪は怪しいものだ。

 

「アーボ様。正直何か企んでそうだし」

「考えすぎじゃないかな? 国民から人気の皇子だよ?」

「そうだけど……。僕は正直、あの人嫌いだな」


 その言葉を発するゴミガの表情は。どこか怒りが籠っていた。

 ゴミガは宮廷の警備兵。執務室籠りっきりのアーボ様と接する機会はあまりないはず。

 それなのに、彼がここまで怒る理由はなんであろうか?


「何かあったら、駆け付けるよ。僕じゃ、頼りないかもしれないけど……」


 少し自信なさげに言うゴミガに、私は微笑した。


──────────────────────────────


 数時間後。私は皇帝の間に呼び出された。

 広場には皇帝陛下と、アーボ様、更にカーラ様。

 叔父様まで揃っている。これは何事だろうか?


「何度も言わせるな。この婚約はなかったことにする」

「こ、皇帝陛下! 何とか! 約束だったではないですか!」


 叔父様と皇族が何やら、もめているようだ。

 アーボ様が放った一言が、私の胸を貫いた。

 『この婚約はなかったことにする』と、彼は間違いなく言った。


 どういう事だろうか? 皇帝との密約がある限り。

 アーボ様の一存で、そんなことは出来ない。

 だから私も耐え続けたというのに。どうしていきなりそんなことを。


「皇帝陛下! お約束を……。お約束をお忘れですか!?」

「私とて契約違反はしたくない。だがこうなった以上……」

「何かあったのですか?」


 事情を聞くために、私は皆に問いかけた。

 すると護衛に騎士達が一斉に、私の事を睨む。

 その威圧感で、私は背筋を伸ばす。


「良くおめおめと、顔を出せたものだな! この貪欲殺人鬼が!」

「は、はあ? さ、殺人鬼?」


 私は何のことか分からず、頭が真っ白になった。


「アイリス。お前には殺人の嫌疑がかかっている」


 冷たい口調で、アーボ様が口にした。

 殺人? 嫌疑? 私は何のことか分からず、体が震えだす。


「先ほど、宮殿の地下図書館で。第二皇子が死体で発見された」

「え……?」

「死因はアレルギーによる、アナフラキシーショックだ」


 第二皇子は、アレルギーがあったはずだ。

 口にしない限り、体内に入らないけど。

 万が一体内に入れば、微小な数でも死に至るという。


「彼のアレルギーを知っていたのは。父上と兄上。俺とお前、料理人達だけだ」


 確かに第二皇子のアレルギーは、そこまで知られていない。

 身内と料理人以外に、明かす事でもないからだろう。


「料理人には全員アリバイがある。父上と兄上、俺が犯人なのはあり得ない」


 アーボ様は見下す様に、私を見た。


「よってお前が犯人だ。殺人鬼を嫁にするわけにはいかない」

「そんな! いくら何でも、横暴ではないですか!?」

「貴様は皇族に、疑いをかけるというのか?」


 私はハッとした。私が犯人なのはあり得ない。

 ならば犯人は皇族の誰かと言う事になる。

 でもそれを私が言い出すことは出来ない。


 そんなことを口にして、有罪になれば間違いなく処刑される。

 私は事件の事を詳しく知らない。勝てるはずがない。

 それに私の言葉を信じてくれる者など。この場には居ない。


 何故なら私は悪女なのだから。

 絶対に周囲からの信頼を得られない。


「だが事を荒げたくない。俺は温情だ」


 アーボ様は近くに立つカーラ様に、腕を寄せた。


「お前が罪と婚約破棄を認め、帝国から出ていくならそれで許してやっても良い」

「すまない、アイリス。私は君の叔父との密約を、知られたくないのだ」


 私はこの提案を受け入れるしかないのだろう。

 どうして? 何故私がこんな目に遭わないといけないの?

 私だって、アーボ様との婚約を望んだ訳じゃないのに!


 どうして私ばかり憎まれなけばならないの!

 いくら何でもあんまりだ!


「ちょっと待ったぁ!」


 誰かが皇帝の間の、扉を開いた。

 逆光を浴びながら部屋に入る人物。それはゴミガだった。

 彼は息を切らしながら、私の横に立つ。


「それはいくら何でも、横暴過ぎます!」

「ゴミガ! 皇帝陛下達に、何てこと言うんだ!」


 ゴミガの上司なのか、一人の騎士が彼を睨む。

 彼はそんなことも気にせず、深呼吸をする。


「彼女が犯人かどうか。話し合いもせずに決めるのは、どうかと思いますよ?」

「ならお前は。我ら皇族を疑うというのか?」

「はい」


 ゴミガは躊躇なく、その一言を発した。

 こんな事言えば、ゴミガだってタダで済まないのに。


「僕は事件の捜査をしていました。その上で、彼女が犯人にしては、不自然な点が多くあります!」

「ふん。良いだろう。ならこの場に居る全員で、議論してみるか?」


 アーボ様とカーラ様が前に出た。

 二人に指示を出されて、護衛代表も前に出る。

 更には叔父に皇帝陛下まで。このメンバーで話合いをする気だろうか?


「言っておくが、お前に味方はいないぞ」


 この場に居る全員が、ゴミガを睨んでいる。


「そいつも、自分の罪を認めている」

「まだ自供は取れていませんよ?」

「沈黙は認めたも同然だろ?」


 ゴミガとアーボ様は睨み合う。


「待て、アーボ。まずは彼の言い分を聴こう」


 あくまで公平性を重視する、皇帝陛下は中立だ。

 彼の許可をいただき、ゴミガは頭を下げた。


「それで騎士よ。どこが不自然だというのだ?」

「まずは事件の概要を説明したいと思います。この場に居る全員が、詳細を知りませんので」


 ゴミガはメモ帳を取り出した。

 こっそり覗き込むと、文字がぎっしり書いている。


「被害者は地下図書館で死体として発見されました。入口付近でね」


 入口付近で? なんでそんなところで、アナフラキシーで倒れているのだろうか?


「被害者の歯には何も付着していません。被害者は直前まで、食事をとっていなかった事になります」


 あれ? それっておかしくない?

 粉末は大きいので、吸ってもアレルギー反応は弱い。

 口から入らない限り、絶対に致死量には至らないはず。


「被害者に争った形跡はなく。服装は綺麗でした」


 無理矢理飲まされた訳じゃないって事ね。

 

「妙な事に、図書館全体に焦げ跡が広がっていました」

「それは事件と関係ないだろう」

「どうでしょう? 現段階では何も言えませんよ?」


 アーボ様は何が何でも、私を犯人にしたいようだ。

 そうすれば、私と婚約破棄出来るからだろう。


「どこに話し合う余地がある? どう考えても、そいつが犯人だ」

「まずはどうやって、被害者がアレルギー物質を飲み込んだのか。それを話し合いましょうか」


 ニヤリと笑うゴミガに、アーボ様は舌打ちした。


「父上。時間の無駄です。そろそろお開きにしましょう」

「いや。疑問点があるなら、話し合うべきだろう。例え、身内で争う事になってもな」

「ちっ……」


 先ほどまで追放一色だった、私の旗色が変わった。

 ゴミガ、いつもより頼りに見える。


「どうやって、アレルギー物質を飲み込んだかですな。普通に考えれば口からですが……」


 叔父様はミステリーが好きなのか、ノリノリで議論に参加している。


「だが、息子の歯には何も付着していなかったというぞ?」

「しかし鼻から入っても、体内には入りませんわ」


 ここにきて、カーラ様も初めて声を出した。


「ふん。考えるまでもない。歯に残らないように、口から入れたんだ」


 威圧的な態度で、周囲を見下すアーボ様。

 

「でも口から入れれば、歯に何か付着するだろう」

「飲み物に含んだのだろう。そうすれば歯に付着せずに済む」

「違うと思いますよ」


 アーボ様の発言に、ゴミガが強気で反論した。

 下っ端兵士に口を挟前れて、アーボ様は不快そうな表情をする。


「被害者のアレルギーは、少量で致死量に至ります」

「それがなんだ?」

「少し飲んだだけで、倒れますね。飲み物をこぼして」


 ん? 待って。被害者の状況って確か……。


「飲み物をこぼせば。当然衣服に付着しますよね?」

「ならこういうのはどうだ? 底にだけ物質が混ざり。最後の一口を飲んだら……」

「それもあり得ません。そもそも飲み物だったら、飲むために容器が必要すよね?」


 現場には割れた容器が、存在しなかったのだろう。 

 だとしたらアーボ様の言う、飲み物で飲んだは無理がある。

 液体は手からこぼれるし。地下室には水道がない。


「ふ、ふん! だからなんだ? その女は既に、罪を認めている」


 少しバツが悪そうに、アーボ様は口にした。


「殺害方法など、どうでも良いだろ!」

「まだ自供は取れていないと言ったはずですよ?」

「認めるよな? なあ! アイリス!」


 威嚇する獣の様に、私を睨むアーボ様。


「お前、認めなかったらどうなるか。分かっているだろうな?」


 反逆の罪で処刑。私は手が震えた。

 ゴミガを裏切りたくはないけど……。まだ死にたくない。

 そんな私の手を、ゴミガがギュッと握ってくれた。


「大丈夫。僕を信じて。君と僕なら、真相にたどり着けるさ」


 ゴミガは優しく私に語り掛ける。

 彼は私が犯人じゃないと信じてくれている。

 自分だって反逆の罪で処刑されかねないのに。


 ここまで信用してくれた彼を、私も裏切る訳にはいかない。

 それに。やられっぱなしって言うのも、性が合わないものだ。


「皇帝陛下! 私は犯人じゃありません!」

「アイリス……! 貴様!」

「アーボ様。私はもう、貴方の言う通りにはなりません!」


 確かに周囲は私の事を、信じてくれないだろうけど。

 ゴミガが信じてくれれば十分だ。

 私は彼と共に、自分の無実を証明して見せる。


「しかし、そうなると。色々謎だな。誰が犯人か? それに殺害方法はどうしたのか?」

「父上! 我が子を疑うのですか! これはアイリスの陰謀だ!」

「公平な判断を下す。それが皇帝たる私の役目だ」


 まだ中立的だけど、何とか皇帝陛下に弁明は通ったようだ。


「それに疑問点があるなら、徹底的に追及する。それが帝国捜査の流儀だ」

「まあ良いでしょう。疑問点があっても、この場の全員が犯人を、分かっているがな!」

「早計は良くないぞ、アーボ。しかし次は何を話し合えば良い?」


 皇帝はゴミガの方を振り向いた。既に彼を頼りにしているらしい。

 幼馴染が顎に手を当てている。これは考え事をしている時の癖だ。


「その前に聴いておきます。皇族の皆さんの得意魔法は?」

「なんだ藪から棒に? 私は火属性だが?」

「第一皇子殿は、水属性でしたな」


 この場に居ない皇子の代わりに、何故か叔父が口を出した。

 私の得意魔法は土属性。それはゴミガも知っているはずだ。


「アーボ様。貴方の得意魔法は?」

「……。風属性だ。だがそれがなんだ?」

「へえ。やっぱりそうだったんですか」


 ゴミガは分かっていたかのように、にやりと笑った。

 もしかしたら彼は既に。事件の真相を見抜いているのかもしれない。

 それを敢えて一気に話さないのは。犯人を追い詰めるためだろう。


「全員の得意魔法など聞いて、どうしたというのだ?」

「今回の事件。魔法が使われたと考えられます。だから念のために」


 魔法が使われたら、証拠は残りにくいけど。

 魔力が付着した証拠が残るはず。

 なんの魔法が使われたかまでは、特定できないらしいが。


「先ほどの続きを話し合いましょう。どうやってアレルギー物質を飲み込んだかです」

「しかし十分議論されつくしたのでは?」

「ですがこれが明らかにならないと。先には進めませんよ」


 確かにそうだ。犯人を特定するためにも。

 今度は私も議論に参加しよう!


「飲み物も食べ物の不可能となると。後は直接流し込むしかありませんなぁ」


 叔父は相変らず、ノリノリで議論に参加している。


「いや、直接流し込むって……」


 一緒に議論に参加している、ゴミガの上司が引いている。


「例えばナイフとかに塗って、刺し入れたとか?」

「被害者に外傷はありませんでしたわ。それは不可能では?」


 叔父様の意見を、カーラ様が即座に否定する。

 

「液体と固体が無理なら、気体ならどうだろうか?」

「父上。あの物体を気化させるのは、容易ではありませんよ」

「なら粉末上のまま、飛ばしたか」

「ですから! 粉末の状態では、体内に入らないのですって!」


 皇帝陛下の推理に、ツッコミを入れ続けるアーボ様。

 私は一つだけ気になることがあった。それを発言しても良いものか?

 チラリとゴミガを見た。彼は無言で頷く。


「ちょっと待って下さい。確かに通常の粉末状態では、体内に入りませんが……」


 普通なら鼻から入る前に、遮られるが。

 

「微細化した粒子なら。体内に入る可能性があります」

「微細化した粒子だと? ふん」


 アーボ様に鼻で笑われた。


「包丁で粒子を切ったとでも言うのか?」

「いやいや! そんなことしなくても……。粉末爆破でも起きれば……」


 私は自信を無くしていき、声が小さくなる。

 でもこれってあり得るんじゃないかしら。

 粉末が爆発すれば、衝撃で微細化するらしいし。それに……。


「地下図書館が焦げていたのは。爆破の影響だったりして……」

「お前はバカなのか? そんなことをしたら、部屋吹き飛ぶだろ!」


 確かに。焦げるどころの騒ぎではなくなる。

 う~ん。良い線行っていたと思ったんだけど……。


「いや。そうとも限らないよ」

「え?」


 ゴミガが私の横から、言葉を発した。


「極所的な粉末爆破なら。周囲に熱が広がる程度で済みます」

「極所的粉末爆破だと? そんな都合よく起きるものか!」


 ちょっと待って。、確か物が燃える時って。

 あるものが必要だったんじゃなかった?

 だったら、粉末爆破が周囲に広がるには……。


「そうか! 極所的に酸素濃度を高めたのね?」

「うん。僕もそう思うよ。粉末爆破には、十分な酸素が必要だからね」


 炎が燃えるには酸素が必要になる。

 瓶に入れたらロウソクが消えるのと、同じ原理ね。


「でも爆破が起きたなら。火種が必要だろ?」


 皇帝陛下の言う通りだ。粉末を爆発させるにも、火種が必要だ。

 熱がないと、燃えないから。

 確か粉末爆破を引き起こすとして、注意されていたものがあったはず。


「犯人は静電気を起こしたんじゃないでしょうか?」


 静電気が起きれば、火花が飛ぶ。

 火花が原因となって、熱が広がり。

 爆発が起きるはずだ。


「だが静電気を起こすには。帯電した物質が必要だぞ」

「粉末にプラスチックを混ぜたんじゃないでしょうか? プラスに帯電し易いですし」


 粉上のプラスチックなら、見た目では分からない。

 多分私が犯人だと決めつけているから。

 ゴミガ以外はロクに捜査もしていないはずよ。


「マイナス方面は。手すりでも擦れば、帯電しますしね」


 ゴミガが私の意見に、補足を付け加えた。

 プラスに帯電したプラスチック粉末が、手すりに近づけば。

 静電気を引き起こすことは可能だろう。


「それに酸素濃度が下がれば、爆発で発生した火も勝手に消えます」

「なるほどな。それなら、微細化した粒子を、鼻から吸った可能性は高そうだ」


 う~ん。自分で推理しておいてなんだけど。

 なんだか違和感があるような……。

 確かアレルギー物質って、空気より重いんじゃなかったっけ?


「このトリックを仕掛けるには。繊細な気体制御が必要になります」


 ゴミガの言う通りだ。酸素濃度をコントロールするほどの、気体制御が必要になる。

 気体とは空気。空気の流れは風となる。

 そうなると必然的に犯人は……。


「そうですよね? アーボ様」


 ゴミガはアーボ様を指した。

 先ほどまでとは一転。アーボ様は額に汗を浮かべている。


「ちょ、ちょっと待て! なんで俺になるんだよ……」

「先ほど貴方が宣言しましたよね? 風魔法が得意だと」


 その通りだ。気体制御には、風魔法が必要になる。

 風属性の魔法を得意としたアーボ様なら。

 十分可能な犯行ともいえるだろう。


「さ、酸素濃度を操るくらい、得意じゃなくても……」

「ただ操るだけじゃない。図書館が火事にならない様に、精密に操る必要がある」


 確かに図書館が火事になったら、トリックどころじゃなくなる。

 

「そんな事出来るのは、風魔法が得意な人物だけだ」

「ま、待てって! 静電気が起きたなんて、空想だろ? そんな証拠……」

「現時点で捜査が必要なのは、明らかになりました。騎士団が本格的に、捜査を始めますよ」


 ゴミガは強い怒りを込めて、アーボ様を睨んだ。


「当然現場に飛び散った粒子も、調べます。そこに付着した魔力もね」

「ぐっ! だけど……。その……」

「貴方は自分の手で、第二皇子を殺害したんだ。その罪をアイリスに、被せてね!」


 ゴミガは歯ぎしりをしながら、苛立ちを示す。

 反対にアーボ様は、冷汗が服にしみこんでいる。


「彼女の悪評を利用して。捜査させずに、事件を終わらせようとしたんだ!」

「あ、アイリスは俺の婚約者だ! そ、そんな酷い事をするわけ……」

「どの口が言う。そもそも彼女の悪評が広がる様に仕向けたのは貴方でしょ?」

「え?」


 ゴミガは確信をもって、口にしているようだ。

 アーボ様が私の悪評を広めた?

 一体どうやったというのだろうか?


「政略結婚であることを見え見えにして。大々的に婚約を発表したり。家臣に悪口を言ったりね」

「ほう。面白い話だな。アーボよ。それは本当か?」


 皇帝陛下がアーボ様を、威圧するように見つめる。

 彼は焦って掌を開き、前に突き出した。


「父上! そんなはずありません! この澄んだ瞳を、ご覧ください!」

「私には曇り切った瞳に見えるがな」

「あ、アイリス! 何とか言ってくれ! 俺はそんなことする奴じゃないよな?」


 私にまで助けを求めて来るなんて。相当焦っているのだろう。

 

「確かにお前の心を無視した、私にも非がある。だが私は、嫌なら拒否しても良いと言ったはずだぞ」


 私は初耳だった。アーボ様も無理矢理、婚約を決められたものかと。

 でもだったらなぜ、彼は拒否権を行使しなかったのだろうか?


「政略結婚の話が来たときに、思いついたからですね? 兄を殺すトリックを」

「どういうことだ? ゴミガ君、説明しなさい」

「アーボ様。貴方は次期皇帝になるために、兄二人が邪魔だった。そうですよね?」


 ま、まさか……! 兄を殺すために、政略結婚を受け入れたと言うの?

 私の悪評を流したのも。この状況を作り出すため?

 周囲に私が犯人だと決めつけて、罪をなすりつけるためだったの?


「皇帝の事を大事にしたくないという、心理を貴方は利用したんだ」

「ほう。この私を利用するとは、良い度胸だな……」

「そ、そんなことしないもんね! 俺はそこまで悪じゃないもんね! バーカ!」


 あのアーボ様が子供っぽくなるまで、動揺している。

 隣にいるカーラ様が、冷ややかな目線で彼を見つめている。


「そんな人とは思いませんでしたわ。どうやら貴方との関係を、考え直した方が良いですね」

「おおおおおおおお! うおおおおお!」


 アーボ様は首を振り回しながら、ショックを表現している。

 恋が冷めるとは、こういう事を言うのだろうか。

 いや、それとも……。


「アーボよ。どうやらお前には、じっくり話を聞いた方が良さそうだな」

「父上! ち、違うんです……。お、俺は……」

「アイリスよ。こんな騒動を起こして、申し訳なかった」


 帝国の一番偉い人が、私に頭を下げた。

 確かに一連の事は、アーボ様にしか仕掛けられないけど……。

 なんだろう? このまま終わらせてはいけないような……。


 まだ明らかになっていない謎があるような気がする……。

 ここで話し合いを終わらせてはいけないような……。


「ま、待って下さい! ま、まだ私の疑いは晴れてません!」

「アイリス? どうしたんだ?」


 ゴミガが私に弁明のチャンスをくれたのだけど。

 私はこの違和感を残して、終わることが出来ない。


「わ、私も得意魔法は風魔法なんです! だから、アーボ様が犯人とは言い切れないはずです!」

「……」


 この場で得意魔法を口にしていないのは、私だけ。

 ゴミガ以外は私の得意魔法を知らないはず。

 お願い、ゴミガ! 私の意図に気が付いて!


「ああ。そういえば、そうだったね。君の得意魔法を忘れていたよ」

「ゴミガ……!」

「どうやら、結論を出すのは早かったようですね。申し訳ございません」


 ゴミガは頭を下げて、周囲に謝罪した。

 私の気持ちに気付いてくれたようだ。流石幼馴染。


「あ、アイリス……? な、何故……?」


 殆ど放心状態のアーボ様が、言葉を発するが無視をする。

 私にとっては諸刃の刃だけど。真実を明らかにしないのは、スッキリしない。


「ふむ。だが確かにアーボが、犯人とは言い切れないが……。この状況を見れば明らかじゃ?」

「アーボ様は意外と心が弱いお方なんです。疑われ続けた事で、精神が参ったようで」

「だが彼が犯人でないとなると。君が犯人と言う事になるが……」


 当然だけど、私は犯人じゃない。

 そもそも風魔法は苦手に分類されるから。

 

「今までの情報の中で、まだ明らかになっていない事があります!」

「それはなんだ?」

「第二皇子様が何故、地下図書館に向かったのかです!」


 このトリックは、第二皇子が地下図書館に行くこと前提で組まれている。

 でもその理由がまだハッキリしていない。


「そ、そうだ! あの人は私のいう事など聞かないぞ!」

「お前は黙っていろ、アーボ」

「はい……」


 皇帝陛下から冷たくあしらわれた、アーボ様。

 正直無様すぎるが、この際無視で良い。


「でもアイリスの言う通りですね。誰でも良いわけじゃなく、第二皇子様が行かないと成立しません」

「アレルギーを持っておられるのは、第二皇子様だけですから」


 ゴミガも議論を続ける事に、納得してくれているようだ。

 "どうやって"も重要だけど。"いつ"も重要になってくる。


「まさか運に任せた訳じゃあるまいし」

「被害者に、そういうルーティーンがあるとかはどうでしょうか?」

「息子にそんなルーティーンはなかった」


 叔父様さっきから、ことごとく反論されている。

 被害者に決まったルールがないなら。

 その場所を訪れる、きっかけがあったはずよ。


「普通に考えたら。誰かに呼び出されたか、呼び出したかだよね?」


 ゴミガの言う通りだ。地下図書館に用事があるとしたら、どちらかだろう。

 あそこは利用者が殆どいないから。密会場所になっているらしいし。

 現に私も利用したことは一度もない。


「いや、兄上は警戒心が高いから。呼び出してもいかないはず……。だけど……」


 アーボ様が弱々しく発言した。彼はチラリと、横を見つめる。

 視線の先には、カーラ様が居るけど……。


「もしかして、アーボ様。カーラ様から、何か聞きました?」

「え? う~ん。これを認めたら、俺が犯人になるしなぁ……」

「もう殆ど認めているじゃないですか!」


 アーボ様はカーラ様から、被害者が地下図書館に行くことを聞いたのかも。

 待てよ。被害者が人の言う事を聞かないと、前提すると……。


「もしかしてカーラ様……。貴方、第二皇子様に呼び出されたのでは?」

「わ、私ですか!? 何故そこで私に来るのです!?」

「では隣の人に聞きましょうか。どうなんですか?」


 私に指されて、アーボ様は唖然とした。


「あ、ああ……。俺はカーラから、兄上が図書館に来ると聞いた……」

「もしかしたら、アーボ様。貴方は真犯人ではないかもしれない」

「え? ええええええ!?」


 アーボ様だけじゃなく、周囲が大声を上げた。

 最初に感じた違和感。もしかしたらそこに答えがあるのかもしれない。


「アーボ様! 隠し事なしで教えて下さい! 貴方がトリックを仕掛けたのは、被害者が来る何分前ですか?」

「……。十分前だ……。爆音が聞こえたらバレるし」

「え!?」


 ゴミガもある事実に気が付いたのだろう。

 こうなったら間違いない。


「アーボ様。粒子は空気より重いので。十分もしたら、全て床に落ちますよ?」

「ん? あああああ!」

「床に落ちた粒子を、ドアを開けて吸う事はありません」


 これが違和感の正体だ。

 被害者はドアを開けた瞬間にアナフラキシーが起きた。

 でもトリックが仕掛けられた時間を考えると。そんなことはあり合えない。


「粒子が再び宙に舞うには。強い風が必要ですね」

「で、でも俺は風なんて使用してないぞ……」

「そうでしょう。いくらなんでも、その場にいないで、風を起こすのは不可能ですから」


 時間が分かったとしても、遠くから魔法を放つには魔力が居る。

 アリバイはないけど、本人の証言がある。

 だとしたら、真犯人は別に居るはずだ!


「カーラ様……。もしかして……。被害者を殺したのは、貴方では?」

「な、何故私なのですか!? 私には彼を殺す動機がありませんわ!」

「じゃあ、何故呼び出されたんです?」


 第二皇子が他国の王女を呼び出して、密会なんて。

 相当重要な事のはずだ。


「そ、それは機密事項ですわ!」

「もしかして。第一皇子と浮気していたりしてね」


 ゴミガが何気ない一言を呟いた。

 するとカーラ様明らかに、肩が跳ねている。


「おっと。カマをかけたら、良い反応をしてくれた」

「くっ!」


 ナイス、ゴミガ。これで彼女の動機もハッキリした。


「貴方は浮気が第二皇子にバレた。その秘密を隠すために、彼を殺害したのですね!」

「更にある程度バレても。アーボ様の罪になる。どっちにしろ、皇帝の妻になれるね」


 ゴミガの言う通りだ。彼女はアーボ様を愛していたわけではない。

 皇帝の妻と言う立場が欲しかっただけなのだ。

 つまり事件が暴かれても、そうでなくても。彼女に都合が良いように出来ている。


「ほ、本当なのか、カーラ? 本当に……」

「お、おほほ……。そんなわけないですわ! 私が愛しているのは……」

「まあ、アーボ様だけを愛していても。どのみち不倫になるけど」


 ゴミガの冷たい一撃が、カーラ様を貫いた。

 なるほど。そういう攻め方もあるのね。


「一つ反論がありますわ。貴方の推理では、強い風が起きないと、粉末は飛ばないのでしたね?」

「はい。だからアーボ様に犯行は不可能です」

「でしたら、私にも犯行は不可能ですわ! だって私はその時、地下には居ませんでしたから!」


 証言があるみたいね。だとしたら、カーラ様は。

 地下室に行かずに、風を起こしたという事になる。


「そういえば、彼女の得意魔法まで聞いていなかったなぁ」

「ええ。まあこの状況で、素直に答えるとは思えないけど」


 彼女の得意魔法か……。もしかしたら、そこから逆算すれば。

 風を起こすトリックが分かるのではないだろうか。


「ねえ、ゴミガ。地下室ってことはさ。空気を流す通気口がある訳」

「うん。酸素を供給するためにね。確か図書館にもあったはずだよ」


 図書館は炎が消えるほど、酸素が薄くなっていた。

 地下室に空気を供給するには、通気口が必要。

 そうか。それが答えだったのね!


「カーラ様。貴方は通気口を、塞ぎましたね?」

「なっ! わ、私はそんなこと……!」

「では聞きます。貴方は被害者が死んだ時間。どの部屋にいましたか?」


 後で証言を集めれば分かることだ。


「もし地下へ空気を送る通気口があればどうでしょう?」

「な、何が言いたのかしら?」

「もし通気口が塞がれたとしたら。開いた途端に、薄まった空気が一気に吹き出します」


 酸素の供給がないから。通気口を開けば、一気に酸素が流れるあろう。

 その時に強い風が下向けに発生するはずだ。


「そうなれば、遠隔で風を起こすことは可能です」

「そ、そのトリックなら、アーボでも行えるじゃない!」

「いや。通気口を塞いだ方法が、重要なんです!」


 ようやく見えてきた。事件の真相が!


「貴方は風船を使って、通気口を塞ぎましたね?」


 風船なら割るだけで、空気の通り道が出来る。


「だから! それならアーボでも出来るでしょ!」

「アイリス。通気口はいくつも繋がっていて。一部だけ塞いでも意味がないよ」

「ええ。だから図書館への道だけを、塞いだのよ! 静電気の反発力を使ってね!」


 空気の通り道は一つじゃない。通気口の構造は複雑だ。

 だけど図書館側から、通気口を塞ぐことは出来ない。

 粉塵爆破を起こすには、酸素も必要だし。仕掛け中にアーボ様に気付かれる。


「見たことあるでしょ? 反発力で風船を浮かべる芸を!」

「通気口を通すほどの静電気を、どうやって起こすのよ!」

「もしかして。貴方が得意なのは電気魔法では?」


 カーラ様は明らかに動揺して、香水を目に掛けた。

 

「ち、違う……! 私が得意なのは……」

「ならアーボ様! 幼馴染の貴方なら知っているでしょ!」

「……。君の言う通り……。カーラの得意魔法は、電気魔法だ……」

「アーボぉ! アンタぁ!」


 カーラ様は香水を叩きつける。


「まあ、通気口を調べれば。風船が出てくるだろうね」

「ぐっ!」

「そこに魔力が残っていたら。確定じゃないかな?」


 騎士団が捜査すれば、直ぐに分かることね。


「もうおしまいです! カーラ様! 最後に私が事件の全貌を、皆さんにお説明します!」


 もう一度事件の流れを説明して。

 皇帝陛下やみんなに納得してもらおう!


「まずカーラ様は被害者に呼び出された。現場である地下図書館にね」


 被害者が自ら現場に足を入れるとすると、それしか考えられない。


「でもカーラ様は。以前からアーボ様が、第二皇子殺害を企てているのを知っていた」


 私と婚約中も、お二人は会っていたから。

 直接話さなくても、察することは出来ただろう。


「それをカーラ様は利用しようと考えた。アーボ様に被害者が、地下図書館を訪れると告げたんだ」


 婚約まで後三日。アーボ様にとっても、チャンスだった。

 

「そしてアーボ様は、被害者殺害トリックを仕掛けた」


 私に罪を着せて、婚約破棄を正当化するために……。


「アーボ様は手すりを擦って帯電させ。図書館の一部の酸素濃度を上げた」


 爆発の勢いをコントロールするには。

 風魔法が得意である必要があった。


「次にプラスチックを混ぜた、アレルギー物質粉末を部屋に散らばらせた」


 プラスに帯電する、プラスチックを混ぜる必要があったはずよ。


「プラスチックと手すりで静電気を起こし。粉末爆破を引き起こした」


 地下室が崩壊したら大変だから。

 相当気を使って、酸素を操ったはずよ。


「普通なら爆音で気づくけど。規模が小さいうえ、地下室は利用者が少ないから。誰も気づけなかったのよ」 


 部屋の一部が燃える程度の爆発だったみたいだし。

 音もそこまで大きくなっただろう。


「爆破の影響で、微細化した粒子が部屋に散らばった」


 普通の大きさなら、体内に入ることはないけど。

 微細化したことで、侵入を許した。


「きっちり捜査をすれば、分かるトリックだけど。アーボ様は捜査をさせない策を使った」


 この策を使うためだけに、私との婚約を結んだのだ。


「私の悪評と、皇族を疑う訳にはいかない。騎士団の二つの心理を利用したのよ」


 犯人が明らかならば、そこまでしっかりした捜査は行われない。

 例え粒子に気が付いたとしても。


「でもアーボ様のこの作戦には、穴があった。正確には、わざと穴を作らされたんだ」


 爆発と近い時間だと、音で被害者に気付かれる可能性がある。

 だからカーラ様は、敢えて時間がズレるよう、誘導したのだ。


「粉末は時間が経って、床に落ちた。空気より重いから、勝手に上がることもない」


 微細粒子故、見た目では気づけないはず。


「そこでカーラ様は、地下室の通気口を利用した」


 爆破の影響で、酸素が薄くなっている事に注目した。


「静電気で風船を操り、図書館の通気口を塞いだ」


 その影響で空気が供給されなくなった。


「後は被害者が地下室に向かったのを確認して。強い静電気で風船を割れば……」


 カーラ様は電気魔法の達人だ。

 静電気の強弱を操る事も、可能だろう。


「通気口から空気が噴き出して、粒子が飛ぶ」


 しかも通気口は下向きだ。風向きも同方向となるだろう。


「そして、何も知らない被害者が図書館に入った途端。微細化した粒子を吸って、亡くなったのよ」


 私は真犯人に向けて、人差し指を向けた。


「全ては浮気の口封じのためだった。そうですよね? カーラ・ケンリョ様」


 これが事件の全貌。私を罠に嵌めた、仕掛けだった。


「言い逃れが出来るなら。やってみてください」

「うっ! ううう……。痛い!」


 バチっという音が、カーラ様の首筋から聞こえてきた。

 更に手元や、足元からも聞こえてくる。

 動揺で魔法が暴走して、静電気を食らっているのだろう。


「痛! 痛、痛ぁ! わ、私は皇帝の嫁になる存在! こんな……」


 次々と静電気が発生して、カーラ様を痛めつける。


「あああああ! どりゃああ!」


 静電気の痛みに耐えきれず、カーラ様はノックアウトした。

 これで本当に終わった。私は追放を免れたのだ。


──────────────────────────────


「カーラが全て認めたよ」


 数時間後。ゴミガが私に報告をしてきた。

 

「動機はやっぱり、浮気の口封じみたいだ。最悪、アーボ様に、罪を着せるつもりだったらしい」

「そう……。お二人はどうなるのかしら?」

「アーボ様は殺人未遂で投獄。カーラ様は他国の皇子殺害だからな。治外法権も効かんだろう」


 二人共王族とはいえ、帝国の法に則って裁かれるのね。

 それにしても生きた心地がしなかった。

 私が殺人犯として疑われるなんてね……。


「ゴミガ」

「ん?」

「ありがとう」


 私は短い言葉でお礼を告げた。これで十分だ。

 ゴミガが居なければ、私は追放を受け入れていただろう。

 彼が立場を危険にさらしてまで、議論にもっていってくれたから……。


「いや。君の方こそ。見事な推理だったよ。僕も騎士として、まだまだだなぁ」

「いや、アンタなら、時間があれば気づいたんじゃない?」

「現場を見てすらいない君に言われてもねぇ」


 私達は微笑み合いながら、お互いを褒め合った。

 ふと、近くで話し合っている皇帝陛下と叔父様が居た。

 二人の話が自然と耳に入ってくる。


「皇帝陛下! 事件を解決した姪っ子を! どうか!」

「悪いな。やはり政略結婚は受け入れられない」


 今回は政略結婚を利用した、事件だったからだ。

 当面皇族が政略結婚することは、ないだろう。

 本当に愛し合っている人達が、婚約する。その方が良い。


「それに……。あの二人は良いコンビだからな」


 皇帝は微笑みながら、そう告げたのが聞こえてきた。

 これで私の宮廷生活は終わりだろう。

 でもそれで良い。悪評も覆ったし。


 私も本当に愛し合える人を、探さないとね!

 また道具にされたら、たまらないから!

前書きの通り。元々恋愛の予定でしたので。

トリックが雑で穴だらけで、すいませんでした。


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[一言] 逆転裁判、思い出しました。
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