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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪女にされた令嬢は、婚約破棄され、殺人犯にしたてあげられました

異世界恋愛短編のはずが、ミステリー要素が強まり過ぎて。流石にジャンルは変えました。

これを恋愛にするのは、流石に無理だった。タイトルはその名残です。

「アーボ様。激務が続いておりますが、お体の方は大丈夫でしょうか?」


 宮殿の第三皇子。その執務室で、私はこの部屋の主に問いかけた。

 アルトコロ帝国、第三皇子。アーボ・エライ―ノ。

 整った顔や政治の手腕から人気が高く。


 兄二人を差し置いて、次期皇帝の期待が高まっているほどだ。

 私にとっては、三日後に結婚する相手となっている。

 勿論、政略結婚なのだけど……。


「アイリス。何度言えば気が済む。俺の事に口を出すな」


 アーボ様は私を見るなり、不機嫌な声を上げた。

 その理由は察している。彼は私の事を憎んでいるのだ。

 彼だけじゃない。宮殿の皆も、国民も私の事を悪女だと思っている。


 卑怯な手で、アーボ様と婚約を取り付けて、卑劣な令嬢。

 それが私の世間一般的評価だ。

 叔父が勝手に取り付けた婚約に逆らえず。こんな悪評を得てしまった。


 それにアーボ様には、心を通わせた幼馴染が居た。

 隣の王国の王女。カーラ・ケンリョ様。

 隣国の友好のため、多くの人が当然二人が結婚するものだと思っていたのだろう。


「私だって、そう思っていたのに……」


 私は知らないが、叔父が破格の条件を国王に提示したらしい。

 そのせいで私はアーボ様と、婚約させられた。

 私はひっそりと暮らしたいタイプなのだけど。一気に有名になっちゃった。


 溜息を吐きながら、執務室を離れる私。

 周囲の人間は私を見るなり、片目を半分閉ざす。

 宮殿中の人間も、私の事は良く思っていない。


「今日も鬱陶しがられた?」


 唯一の例外が、宮殿にいる事だけが救いだ。

 私に話しかけた青年は、ゴミガ・イチと言う。

 私と同じ爵位の人間であり、古くからの友でもある。


 私の事を良く知る彼だけが、私の味方でいてくれた。

 ゴミガは士官学校を卒業し、騎士として宮殿で働いている。

 戦士としては頼りない一面があるが。いつも優しく、周囲に気が利くのだ。


「しょうがないよ……。アーボ様からしたら私は、幼馴染との結婚を潰した悪女なのだから」 

「そう。みんな君の事を知れば、きっと仲良くなれるのに。表面だけしか見ないんだね」


 ゴミガは立場が悪くなるのが分かっているのに。

 いつも私を弁明してくれた。

 そのせいで、彼も騎士団の中で悪く言われている。


 そんなの気にしない素振りで、ゴミガはいつも私に語り掛けてくれる。

 彼が居るから、私は何とかやれているようなものだ。

 

「今日、カーラ様が訪れるらしい」

「そう……。道理で私が訪ねると、不機嫌なはずだわ」

「良くない事が起きそうな気がする。警戒した方が良いよ」


 ゴミガは兜に手を当てながら、私に警告した。

 確かに。このタイミングでカーラ様の来訪は怪しいものだ。

 

「アーボ様。正直何か企んでそうだし」

「考えすぎじゃないかな? 国民から人気の皇子だよ?」

「そうだけど……。僕は正直、あの人嫌いだな」


 その言葉を発するゴミガの表情は。どこか怒りが籠っていた。

 ゴミガは宮廷の警備兵。執務室籠りっきりのアーボ様と接する機会はあまりないはず。

 それなのに、彼がここまで怒る理由はなんであろうか?


「何かあったら、駆け付けるよ。僕じゃ、頼りないかもしれないけど……」


 少し自信なさげに言うゴミガに、私は微笑した。


──────────────────────────────


 数時間後。私は皇帝の間に呼び出された。

 広場には皇帝陛下と、アーボ様、更にカーラ様。

 叔父様まで揃っている。これは何事だろうか?


「何度も言わせるな。この婚約はなかったことにする」

「こ、皇帝陛下! 何とか! 約束だったではないですか!」


 叔父様と皇族が何やら、もめているようだ。

 アーボ様が放った一言が、私の胸を貫いた。

 『この婚約はなかったことにする』と、彼は間違いなく言った。


 どういう事だろうか? 皇帝との密約がある限り。

 アーボ様の一存で、そんなことは出来ない。

 だから私も耐え続けたというのに。どうしていきなりそんなことを。


「皇帝陛下! お約束を……。お約束をお忘れですか!?」

「私とて契約違反はしたくない。だがこうなった以上……」

「何かあったのですか?」


 事情を聞くために、私は皆に問いかけた。

 すると護衛に騎士達が一斉に、私の事を睨む。

 その威圧感で、私は背筋を伸ばす。


「良くおめおめと、顔を出せたものだな! この貪欲殺人鬼が!」

「は、はあ? さ、殺人鬼?」


 私は何のことか分からず、頭が真っ白になった。


「アイリス。お前には殺人の嫌疑がかかっている」


 冷たい口調で、アーボ様が口にした。

 殺人? 嫌疑? 私は何のことか分からず、体が震えだす。


「先ほど、宮殿の地下図書館で。第二皇子が死体で発見された」

「え……?」

「死因はアレルギーによる、アナフラキシーショックだ」


 第二皇子は、アレルギーがあったはずだ。

 口にしない限り、体内に入らないけど。

 万が一体内に入れば、微小な数でも死に至るという。


「彼のアレルギーを知っていたのは。父上と兄上。俺とお前、料理人達だけだ」


 確かに第二皇子のアレルギーは、そこまで知られていない。

 身内と料理人以外に、明かす事でもないからだろう。


「料理人には全員アリバイがある。父上と兄上、俺が犯人なのはあり得ない」


 アーボ様は見下す様に、私を見た。


「よってお前が犯人だ。殺人鬼を嫁にするわけにはいかない」

「そんな! いくら何でも、横暴ではないですか!?」

「貴様は皇族に、疑いをかけるというのか?」


 私はハッとした。私が犯人なのはあり得ない。

 ならば犯人は皇族の誰かと言う事になる。

 でもそれを私が言い出すことは出来ない。


 そんなことを口にして、有罪になれば間違いなく処刑される。

 私は事件の事を詳しく知らない。勝てるはずがない。

 それに私の言葉を信じてくれる者など。この場には居ない。


 何故なら私は悪女なのだから。

 絶対に周囲からの信頼を得られない。


「だが事を荒げたくない。俺は温情だ」


 アーボ様は近くに立つカーラ様に、腕を寄せた。


「お前が罪と婚約破棄を認め、帝国から出ていくならそれで許してやっても良い」

「すまない、アイリス。私は君の叔父との密約を、知られたくないのだ」


 私はこの提案を受け入れるしかないのだろう。

 どうして? 何故私がこんな目に遭わないといけないの?

 私だって、アーボ様との婚約を望んだ訳じゃないのに!


 どうして私ばかり憎まれなけばならないの!

 いくら何でもあんまりだ!


「ちょっと待ったぁ!」


 誰かが皇帝の間の、扉を開いた。

 逆光を浴びながら部屋に入る人物。それはゴミガだった。

 彼は息を切らしながら、私の横に立つ。


「それはいくら何でも、横暴過ぎます!」

「ゴミガ! 皇帝陛下達に、何てこと言うんだ!」


 ゴミガの上司なのか、一人の騎士が彼を睨む。

 彼はそんなことも気にせず、深呼吸をする。


「彼女が犯人かどうか。話し合いもせずに決めるのは、どうかと思いますよ?」

「ならお前は。我ら皇族を疑うというのか?」

「はい」


 ゴミガは躊躇なく、その一言を発した。

 こんな事言えば、ゴミガだってタダで済まないのに。


「僕は事件の捜査をしていました。その上で、彼女が犯人にしては、不自然な点が多くあります!」

「ふん。良いだろう。ならこの場に居る全員で、議論してみるか?」


 アーボ様とカーラ様が前に出た。

 二人に指示を出されて、護衛代表も前に出る。

 更には叔父に皇帝陛下まで。このメンバーで話合いをする気だろうか?


「言っておくが、お前に味方はいないぞ」


 この場に居る全員が、ゴミガを睨んでいる。


「そいつも、自分の罪を認めている」

「まだ自供は取れていませんよ?」

「沈黙は認めたも同然だろ?」


 ゴミガとアーボ様は睨み合う。


「待て、アーボ。まずは彼の言い分を聴こう」


 あくまで公平性を重視する、皇帝陛下は中立だ。

 彼の許可をいただき、ゴミガは頭を下げた。


「それで騎士よ。どこが不自然だというのだ?」

「まずは事件の概要を説明したいと思います。この場に居る全員が、詳細を知りませんので」


 ゴミガはメモ帳を取り出した。

 こっそり覗き込むと、文字がぎっしり書いている。


「被害者は地下図書館で死体として発見されました。入口付近でね」


 入口付近で? なんでそんなところで、アナフラキシーで倒れているのだろうか?


「被害者の歯には何も付着していません。被害者は直前まで、食事をとっていなかった事になります」


 あれ? それっておかしくない?

 粉末は大きいので、吸ってもアレルギー反応は弱い。

 口から入らない限り、絶対に致死量には至らないはず。


「被害者に争った形跡はなく。服装は綺麗でした」


 無理矢理飲まされた訳じゃないって事ね。

 

「妙な事に、図書館全体に焦げ跡が広がっていました」

「それは事件と関係ないだろう」

「どうでしょう? 現段階では何も言えませんよ?」


 アーボ様は何が何でも、私を犯人にしたいようだ。

 そうすれば、私と婚約破棄出来るからだろう。


「どこに話し合う余地がある? どう考えても、そいつが犯人だ」

「まずはどうやって、被害者がアレルギー物質を飲み込んだのか。それを話し合いましょうか」


 ニヤリと笑うゴミガに、アーボ様は舌打ちした。


「父上。時間の無駄です。そろそろお開きにしましょう」

「いや。疑問点があるなら、話し合うべきだろう。例え、身内で争う事になってもな」

「ちっ……」


 先ほどまで追放一色だった、私の旗色が変わった。

 ゴミガ、いつもより頼りに見える。


「どうやって、アレルギー物質を飲み込んだかですな。普通に考えれば口からですが……」


 叔父様はミステリーが好きなのか、ノリノリで議論に参加している。


「だが、息子の歯には何も付着していなかったというぞ?」

「しかし鼻から入っても、体内には入りませんわ」


 ここにきて、カーラ様も初めて声を出した。


「ふん。考えるまでもない。歯に残らないように、口から入れたんだ」


 威圧的な態度で、周囲を見下すアーボ様。

 

「でも口から入れれば、歯に何か付着するだろう」

「飲み物に含んだのだろう。そうすれば歯に付着せずに済む」

「違うと思いますよ」


 アーボ様の発言に、ゴミガが強気で反論した。

 下っ端兵士に口を挟前れて、アーボ様は不快そうな表情をする。


「被害者のアレルギーは、少量で致死量に至ります」

「それがなんだ?」

「少し飲んだだけで、倒れますね。飲み物をこぼして」


 ん? 待って。被害者の状況って確か……。


「飲み物をこぼせば。当然衣服に付着しますよね?」

「ならこういうのはどうだ? 底にだけ物質が混ざり。最後の一口を飲んだら……」

「それもあり得ません。そもそも飲み物だったら、飲むために容器が必要すよね?」


 現場には割れた容器が、存在しなかったのだろう。 

 だとしたらアーボ様の言う、飲み物で飲んだは無理がある。

 液体は手からこぼれるし。地下室には水道がない。


「ふ、ふん! だからなんだ? その女は既に、罪を認めている」


 少しバツが悪そうに、アーボ様は口にした。


「殺害方法など、どうでも良いだろ!」

「まだ自供は取れていないと言ったはずですよ?」

「認めるよな? なあ! アイリス!」


 威嚇する獣の様に、私を睨むアーボ様。


「お前、認めなかったらどうなるか。分かっているだろうな?」


 反逆の罪で処刑。私は手が震えた。

 ゴミガを裏切りたくはないけど……。まだ死にたくない。

 そんな私の手を、ゴミガがギュッと握ってくれた。


「大丈夫。僕を信じて。君と僕なら、真相にたどり着けるさ」


 ゴミガは優しく私に語り掛ける。

 彼は私が犯人じゃないと信じてくれている。

 自分だって反逆の罪で処刑されかねないのに。


 ここまで信用してくれた彼を、私も裏切る訳にはいかない。

 それに。やられっぱなしって言うのも、性が合わないものだ。


「皇帝陛下! 私は犯人じゃありません!」

「アイリス……! 貴様!」

「アーボ様。私はもう、貴方の言う通りにはなりません!」


 確かに周囲は私の事を、信じてくれないだろうけど。

 ゴミガが信じてくれれば十分だ。

 私は彼と共に、自分の無実を証明して見せる。


「しかし、そうなると。色々謎だな。誰が犯人か? それに殺害方法はどうしたのか?」

「父上! 我が子を疑うのですか! これはアイリスの陰謀だ!」

「公平な判断を下す。それが皇帝たる私の役目だ」


 まだ中立的だけど、何とか皇帝陛下に弁明は通ったようだ。


「それに疑問点があるなら、徹底的に追及する。それが帝国捜査の流儀だ」

「まあ良いでしょう。疑問点があっても、この場の全員が犯人を、分かっているがな!」

「早計は良くないぞ、アーボ。しかし次は何を話し合えば良い?」


 皇帝はゴミガの方を振り向いた。既に彼を頼りにしているらしい。

 幼馴染が顎に手を当てている。これは考え事をしている時の癖だ。


「その前に聴いておきます。皇族の皆さんの得意魔法は?」

「なんだ藪から棒に? 私は火属性だが?」

「第一皇子殿は、水属性でしたな」


 この場に居ない皇子の代わりに、何故か叔父が口を出した。

 私の得意魔法は土属性。それはゴミガも知っているはずだ。


「アーボ様。貴方の得意魔法は?」

「……。風属性だ。だがそれがなんだ?」

「へえ。やっぱりそうだったんですか」


 ゴミガは分かっていたかのように、にやりと笑った。

 もしかしたら彼は既に。事件の真相を見抜いているのかもしれない。

 それを敢えて一気に話さないのは。犯人を追い詰めるためだろう。


「全員の得意魔法など聞いて、どうしたというのだ?」

「今回の事件。魔法が使われたと考えられます。だから念のために」


 魔法が使われたら、証拠は残りにくいけど。

 魔力が付着した証拠が残るはず。

 なんの魔法が使われたかまでは、特定できないらしいが。


「先ほどの続きを話し合いましょう。どうやってアレルギー物質を飲み込んだかです」

「しかし十分議論されつくしたのでは?」

「ですがこれが明らかにならないと。先には進めませんよ」


 確かにそうだ。犯人を特定するためにも。

 今度は私も議論に参加しよう!


「飲み物も食べ物の不可能となると。後は直接流し込むしかありませんなぁ」


 叔父は相変らず、ノリノリで議論に参加している。


「いや、直接流し込むって……」


 一緒に議論に参加している、ゴミガの上司が引いている。


「例えばナイフとかに塗って、刺し入れたとか?」

「被害者に外傷はありませんでしたわ。それは不可能では?」


 叔父様の意見を、カーラ様が即座に否定する。

 

「液体と固体が無理なら、気体ならどうだろうか?」

「父上。あの物体を気化させるのは、容易ではありませんよ」

「なら粉末上のまま、飛ばしたか」

「ですから! 粉末の状態では、体内に入らないのですって!」


 皇帝陛下の推理に、ツッコミを入れ続けるアーボ様。

 私は一つだけ気になることがあった。それを発言しても良いものか?

 チラリとゴミガを見た。彼は無言で頷く。


「ちょっと待って下さい。確かに通常の粉末状態では、体内に入りませんが……」


 普通なら鼻から入る前に、遮られるが。

 

「微細化した粒子なら。体内に入る可能性があります」

「微細化した粒子だと? ふん」


 アーボ様に鼻で笑われた。


「包丁で粒子を切ったとでも言うのか?」

「いやいや! そんなことしなくても……。粉末爆破でも起きれば……」


 私は自信を無くしていき、声が小さくなる。

 でもこれってあり得るんじゃないかしら。

 粉末が爆発すれば、衝撃で微細化するらしいし。それに……。


「地下図書館が焦げていたのは。爆破の影響だったりして……」

「お前はバカなのか? そんなことをしたら、部屋吹き飛ぶだろ!」


 確かに。焦げるどころの騒ぎではなくなる。

 う~ん。良い線行っていたと思ったんだけど……。


「いや。そうとも限らないよ」

「え?」


 ゴミガが私の横から、言葉を発した。


「極所的な粉末爆破なら。周囲に熱が広がる程度で済みます」

「極所的粉末爆破だと? そんな都合よく起きるものか!」


 ちょっと待って。、確か物が燃える時って。

 あるものが必要だったんじゃなかった?

 だったら、粉末爆破が周囲に広がるには……。


「そうか! 極所的に酸素濃度を高めたのね?」

「うん。僕もそう思うよ。粉末爆破には、十分な酸素が必要だからね」


 炎が燃えるには酸素が必要になる。

 瓶に入れたらロウソクが消えるのと、同じ原理ね。


「でも爆破が起きたなら。火種が必要だろ?」


 皇帝陛下の言う通りだ。粉末を爆発させるにも、火種が必要だ。

 熱がないと、燃えないから。

 確か粉末爆破を引き起こすとして、注意されていたものがあったはず。


「犯人は静電気を起こしたんじゃないでしょうか?」


 静電気が起きれば、火花が飛ぶ。

 火花が原因となって、熱が広がり。

 爆発が起きるはずだ。


「だが静電気を起こすには。帯電した物質が必要だぞ」

「粉末にプラスチックを混ぜたんじゃないでしょうか? プラスに帯電し易いですし」


 粉上のプラスチックなら、見た目では分からない。

 多分私が犯人だと決めつけているから。

 ゴミガ以外はロクに捜査もしていないはずよ。


「マイナス方面は。手すりでも擦れば、帯電しますしね」


 ゴミガが私の意見に、補足を付け加えた。

 プラスに帯電したプラスチック粉末が、手すりに近づけば。

 静電気を引き起こすことは可能だろう。


「それに酸素濃度が下がれば、爆発で発生した火も勝手に消えます」

「なるほどな。それなら、微細化した粒子を、鼻から吸った可能性は高そうだ」


 う~ん。自分で推理しておいてなんだけど。

 なんだか違和感があるような……。

 確かアレルギー物質って、空気より重いんじゃなかったっけ?


「このトリックを仕掛けるには。繊細な気体制御が必要になります」


 ゴミガの言う通りだ。酸素濃度をコントロールするほどの、気体制御が必要になる。

 気体とは空気。空気の流れは風となる。

 そうなると必然的に犯人は……。


「そうですよね? アーボ様」


 ゴミガはアーボ様を指した。

 先ほどまでとは一転。アーボ様は額に汗を浮かべている。


「ちょ、ちょっと待て! なんで俺になるんだよ……」

「先ほど貴方が宣言しましたよね? 風魔法が得意だと」


 その通りだ。気体制御には、風魔法が必要になる。

 風属性の魔法を得意としたアーボ様なら。

 十分可能な犯行ともいえるだろう。


「さ、酸素濃度を操るくらい、得意じゃなくても……」

「ただ操るだけじゃない。図書館が火事にならない様に、精密に操る必要がある」


 確かに図書館が火事になったら、トリックどころじゃなくなる。

 

「そんな事出来るのは、風魔法が得意な人物だけだ」

「ま、待てって! 静電気が起きたなんて、空想だろ? そんな証拠……」

「現時点で捜査が必要なのは、明らかになりました。騎士団が本格的に、捜査を始めますよ」


 ゴミガは強い怒りを込めて、アーボ様を睨んだ。


「当然現場に飛び散った粒子も、調べます。そこに付着した魔力もね」

「ぐっ! だけど……。その……」

「貴方は自分の手で、第二皇子を殺害したんだ。その罪をアイリスに、被せてね!」


 ゴミガは歯ぎしりをしながら、苛立ちを示す。

 反対にアーボ様は、冷汗が服にしみこんでいる。


「彼女の悪評を利用して。捜査させずに、事件を終わらせようとしたんだ!」

「あ、アイリスは俺の婚約者だ! そ、そんな酷い事をするわけ……」

「どの口が言う。そもそも彼女の悪評が広がる様に仕向けたのは貴方でしょ?」

「え?」


 ゴミガは確信をもって、口にしているようだ。

 アーボ様が私の悪評を広めた?

 一体どうやったというのだろうか?


「政略結婚であることを見え見えにして。大々的に婚約を発表したり。家臣に悪口を言ったりね」

「ほう。面白い話だな。アーボよ。それは本当か?」


 皇帝陛下がアーボ様を、威圧するように見つめる。

 彼は焦って掌を開き、前に突き出した。


「父上! そんなはずありません! この澄んだ瞳を、ご覧ください!」

「私には曇り切った瞳に見えるがな」

「あ、アイリス! 何とか言ってくれ! 俺はそんなことする奴じゃないよな?」


 私にまで助けを求めて来るなんて。相当焦っているのだろう。

 

「確かにお前の心を無視した、私にも非がある。だが私は、嫌なら拒否しても良いと言ったはずだぞ」


 私は初耳だった。アーボ様も無理矢理、婚約を決められたものかと。

 でもだったらなぜ、彼は拒否権を行使しなかったのだろうか?


「政略結婚の話が来たときに、思いついたからですね? 兄を殺すトリックを」

「どういうことだ? ゴミガ君、説明しなさい」

「アーボ様。貴方は次期皇帝になるために、兄二人が邪魔だった。そうですよね?」


 ま、まさか……! 兄を殺すために、政略結婚を受け入れたと言うの?

 私の悪評を流したのも。この状況を作り出すため?

 周囲に私が犯人だと決めつけて、罪をなすりつけるためだったの?


「皇帝の事を大事にしたくないという、心理を貴方は利用したんだ」

「ほう。この私を利用するとは、良い度胸だな……」

「そ、そんなことしないもんね! 俺はそこまで悪じゃないもんね! バーカ!」


 あのアーボ様が子供っぽくなるまで、動揺している。

 隣にいるカーラ様が、冷ややかな目線で彼を見つめている。


「そんな人とは思いませんでしたわ。どうやら貴方との関係を、考え直した方が良いですね」

「おおおおおおおお! うおおおおお!」


 アーボ様は首を振り回しながら、ショックを表現している。

 恋が冷めるとは、こういう事を言うのだろうか。

 いや、それとも……。


「アーボよ。どうやらお前には、じっくり話を聞いた方が良さそうだな」

「父上! ち、違うんです……。お、俺は……」

「アイリスよ。こんな騒動を起こして、申し訳なかった」


 帝国の一番偉い人が、私に頭を下げた。

 確かに一連の事は、アーボ様にしか仕掛けられないけど……。

 なんだろう? このまま終わらせてはいけないような……。


 まだ明らかになっていない謎があるような気がする……。

 ここで話し合いを終わらせてはいけないような……。


「ま、待って下さい! ま、まだ私の疑いは晴れてません!」

「アイリス? どうしたんだ?」


 ゴミガが私に弁明のチャンスをくれたのだけど。

 私はこの違和感を残して、終わることが出来ない。


「わ、私も得意魔法は風魔法なんです! だから、アーボ様が犯人とは言い切れないはずです!」

「……」


 この場で得意魔法を口にしていないのは、私だけ。

 ゴミガ以外は私の得意魔法を知らないはず。

 お願い、ゴミガ! 私の意図に気が付いて!


「ああ。そういえば、そうだったね。君の得意魔法を忘れていたよ」

「ゴミガ……!」

「どうやら、結論を出すのは早かったようですね。申し訳ございません」


 ゴミガは頭を下げて、周囲に謝罪した。

 私の気持ちに気付いてくれたようだ。流石幼馴染。


「あ、アイリス……? な、何故……?」


 殆ど放心状態のアーボ様が、言葉を発するが無視をする。

 私にとっては諸刃の刃だけど。真実を明らかにしないのは、スッキリしない。


「ふむ。だが確かにアーボが、犯人とは言い切れないが……。この状況を見れば明らかじゃ?」

「アーボ様は意外と心が弱いお方なんです。疑われ続けた事で、精神が参ったようで」

「だが彼が犯人でないとなると。君が犯人と言う事になるが……」


 当然だけど、私は犯人じゃない。

 そもそも風魔法は苦手に分類されるから。

 

「今までの情報の中で、まだ明らかになっていない事があります!」

「それはなんだ?」

「第二皇子様が何故、地下図書館に向かったのかです!」


 このトリックは、第二皇子が地下図書館に行くこと前提で組まれている。

 でもその理由がまだハッキリしていない。


「そ、そうだ! あの人は私のいう事など聞かないぞ!」

「お前は黙っていろ、アーボ」

「はい……」


 皇帝陛下から冷たくあしらわれた、アーボ様。

 正直無様すぎるが、この際無視で良い。


「でもアイリスの言う通りですね。誰でも良いわけじゃなく、第二皇子様が行かないと成立しません」

「アレルギーを持っておられるのは、第二皇子様だけですから」


 ゴミガも議論を続ける事に、納得してくれているようだ。

 "どうやって"も重要だけど。"いつ"も重要になってくる。


「まさか運に任せた訳じゃあるまいし」

「被害者に、そういうルーティーンがあるとかはどうでしょうか?」

「息子にそんなルーティーンはなかった」


 叔父様さっきから、ことごとく反論されている。

 被害者に決まったルールがないなら。

 その場所を訪れる、きっかけがあったはずよ。


「普通に考えたら。誰かに呼び出されたか、呼び出したかだよね?」


 ゴミガの言う通りだ。地下図書館に用事があるとしたら、どちらかだろう。

 あそこは利用者が殆どいないから。密会場所になっているらしいし。

 現に私も利用したことは一度もない。


「いや、兄上は警戒心が高いから。呼び出してもいかないはず……。だけど……」


 アーボ様が弱々しく発言した。彼はチラリと、横を見つめる。

 視線の先には、カーラ様が居るけど……。


「もしかして、アーボ様。カーラ様から、何か聞きました?」

「え? う~ん。これを認めたら、俺が犯人になるしなぁ……」

「もう殆ど認めているじゃないですか!」


 アーボ様はカーラ様から、被害者が地下図書館に行くことを聞いたのかも。

 待てよ。被害者が人の言う事を聞かないと、前提すると……。


「もしかしてカーラ様……。貴方、第二皇子様に呼び出されたのでは?」

「わ、私ですか!? 何故そこで私に来るのです!?」

「では隣の人に聞きましょうか。どうなんですか?」


 私に指されて、アーボ様は唖然とした。


「あ、ああ……。俺はカーラから、兄上が図書館に来ると聞いた……」

「もしかしたら、アーボ様。貴方は真犯人ではないかもしれない」

「え? ええええええ!?」


 アーボ様だけじゃなく、周囲が大声を上げた。

 最初に感じた違和感。もしかしたらそこに答えがあるのかもしれない。


「アーボ様! 隠し事なしで教えて下さい! 貴方がトリックを仕掛けたのは、被害者が来る何分前ですか?」

「……。十分前だ……。爆音が聞こえたらバレるし」

「え!?」


 ゴミガもある事実に気が付いたのだろう。

 こうなったら間違いない。


「アーボ様。粒子は空気より重いので。十分もしたら、全て床に落ちますよ?」

「ん? あああああ!」

「床に落ちた粒子を、ドアを開けて吸う事はありません」


 これが違和感の正体だ。

 被害者はドアを開けた瞬間にアナフラキシーが起きた。

 でもトリックが仕掛けられた時間を考えると。そんなことはあり合えない。


「粒子が再び宙に舞うには。強い風が必要ですね」

「で、でも俺は風なんて使用してないぞ……」

「そうでしょう。いくらなんでも、その場にいないで、風を起こすのは不可能ですから」


 時間が分かったとしても、遠くから魔法を放つには魔力が居る。

 アリバイはないけど、本人の証言がある。

 だとしたら、真犯人は別に居るはずだ!


「カーラ様……。もしかして……。被害者を殺したのは、貴方では?」

「な、何故私なのですか!? 私には彼を殺す動機がありませんわ!」

「じゃあ、何故呼び出されたんです?」


 第二皇子が他国の王女を呼び出して、密会なんて。

 相当重要な事のはずだ。


「そ、それは機密事項ですわ!」

「もしかして。第一皇子と浮気していたりしてね」


 ゴミガが何気ない一言を呟いた。

 するとカーラ様明らかに、肩が跳ねている。


「おっと。カマをかけたら、良い反応をしてくれた」

「くっ!」


 ナイス、ゴミガ。これで彼女の動機もハッキリした。


「貴方は浮気が第二皇子にバレた。その秘密を隠すために、彼を殺害したのですね!」

「更にある程度バレても。アーボ様の罪になる。どっちにしろ、皇帝の妻になれるね」


 ゴミガの言う通りだ。彼女はアーボ様を愛していたわけではない。

 皇帝の妻と言う立場が欲しかっただけなのだ。

 つまり事件が暴かれても、そうでなくても。彼女に都合が良いように出来ている。


「ほ、本当なのか、カーラ? 本当に……」

「お、おほほ……。そんなわけないですわ! 私が愛しているのは……」

「まあ、アーボ様だけを愛していても。どのみち不倫になるけど」


 ゴミガの冷たい一撃が、カーラ様を貫いた。

 なるほど。そういう攻め方もあるのね。


「一つ反論がありますわ。貴方の推理では、強い風が起きないと、粉末は飛ばないのでしたね?」

「はい。だからアーボ様に犯行は不可能です」

「でしたら、私にも犯行は不可能ですわ! だって私はその時、地下には居ませんでしたから!」


 証言があるみたいね。だとしたら、カーラ様は。

 地下室に行かずに、風を起こしたという事になる。


「そういえば、彼女の得意魔法まで聞いていなかったなぁ」

「ええ。まあこの状況で、素直に答えるとは思えないけど」


 彼女の得意魔法か……。もしかしたら、そこから逆算すれば。

 風を起こすトリックが分かるのではないだろうか。


「ねえ、ゴミガ。地下室ってことはさ。空気を流す通気口がある訳」

「うん。酸素を供給するためにね。確か図書館にもあったはずだよ」


 図書館は炎が消えるほど、酸素が薄くなっていた。

 地下室に空気を供給するには、通気口が必要。

 そうか。それが答えだったのね!


「カーラ様。貴方は通気口を、塞ぎましたね?」

「なっ! わ、私はそんなこと……!」

「では聞きます。貴方は被害者が死んだ時間。どの部屋にいましたか?」


 後で証言を集めれば分かることだ。


「もし地下へ空気を送る通気口があればどうでしょう?」

「な、何が言いたのかしら?」

「もし通気口が塞がれたとしたら。開いた途端に、薄まった空気が一気に吹き出します」


 酸素の供給がないから。通気口を開けば、一気に酸素が流れるあろう。

 その時に強い風が下向けに発生するはずだ。


「そうなれば、遠隔で風を起こすことは可能です」

「そ、そのトリックなら、アーボでも行えるじゃない!」

「いや。通気口を塞いだ方法が、重要なんです!」


 ようやく見えてきた。事件の真相が!


「貴方は風船を使って、通気口を塞ぎましたね?」


 風船なら割るだけで、空気の通り道が出来る。


「だから! それならアーボでも出来るでしょ!」

「アイリス。通気口はいくつも繋がっていて。一部だけ塞いでも意味がないよ」

「ええ。だから図書館への道だけを、塞いだのよ! 静電気の反発力を使ってね!」


 空気の通り道は一つじゃない。通気口の構造は複雑だ。

 だけど図書館側から、通気口を塞ぐことは出来ない。

 粉塵爆破を起こすには、酸素も必要だし。仕掛け中にアーボ様に気付かれる。


「見たことあるでしょ? 反発力で風船を浮かべる芸を!」

「通気口を通すほどの静電気を、どうやって起こすのよ!」

「もしかして。貴方が得意なのは電気魔法では?」


 カーラ様は明らかに動揺して、香水を目に掛けた。

 

「ち、違う……! 私が得意なのは……」

「ならアーボ様! 幼馴染の貴方なら知っているでしょ!」

「……。君の言う通り……。カーラの得意魔法は、電気魔法だ……」

「アーボぉ! アンタぁ!」


 カーラ様は香水を叩きつける。


「まあ、通気口を調べれば。風船が出てくるだろうね」

「ぐっ!」

「そこに魔力が残っていたら。確定じゃないかな?」


 騎士団が捜査すれば、直ぐに分かることね。


「もうおしまいです! カーラ様! 最後に私が事件の全貌を、皆さんにお説明します!」


 もう一度事件の流れを説明して。

 皇帝陛下やみんなに納得してもらおう!


「まずカーラ様は被害者に呼び出された。現場である地下図書館にね」


 被害者が自ら現場に足を入れるとすると、それしか考えられない。


「でもカーラ様は。以前からアーボ様が、第二皇子殺害を企てているのを知っていた」


 私と婚約中も、お二人は会っていたから。

 直接話さなくても、察することは出来ただろう。


「それをカーラ様は利用しようと考えた。アーボ様に被害者が、地下図書館を訪れると告げたんだ」


 婚約まで後三日。アーボ様にとっても、チャンスだった。

 

「そしてアーボ様は、被害者殺害トリックを仕掛けた」


 私に罪を着せて、婚約破棄を正当化するために……。


「アーボ様は手すりを擦って帯電させ。図書館の一部の酸素濃度を上げた」


 爆発の勢いをコントロールするには。

 風魔法が得意である必要があった。


「次にプラスチックを混ぜた、アレルギー物質粉末を部屋に散らばらせた」


 プラスに帯電する、プラスチックを混ぜる必要があったはずよ。


「プラスチックと手すりで静電気を起こし。粉末爆破を引き起こした」


 地下室が崩壊したら大変だから。

 相当気を使って、酸素を操ったはずよ。


「普通なら爆音で気づくけど。規模が小さいうえ、地下室は利用者が少ないから。誰も気づけなかったのよ」 


 部屋の一部が燃える程度の爆発だったみたいだし。

 音もそこまで大きくなっただろう。


「爆破の影響で、微細化した粒子が部屋に散らばった」


 普通の大きさなら、体内に入ることはないけど。

 微細化したことで、侵入を許した。


「きっちり捜査をすれば、分かるトリックだけど。アーボ様は捜査をさせない策を使った」


 この策を使うためだけに、私との婚約を結んだのだ。


「私の悪評と、皇族を疑う訳にはいかない。騎士団の二つの心理を利用したのよ」


 犯人が明らかならば、そこまでしっかりした捜査は行われない。

 例え粒子に気が付いたとしても。


「でもアーボ様のこの作戦には、穴があった。正確には、わざと穴を作らされたんだ」


 爆発と近い時間だと、音で被害者に気付かれる可能性がある。

 だからカーラ様は、敢えて時間がズレるよう、誘導したのだ。


「粉末は時間が経って、床に落ちた。空気より重いから、勝手に上がることもない」


 微細粒子故、見た目では気づけないはず。


「そこでカーラ様は、地下室の通気口を利用した」


 爆破の影響で、酸素が薄くなっている事に注目した。


「静電気で風船を操り、図書館の通気口を塞いだ」


 その影響で空気が供給されなくなった。


「後は被害者が地下室に向かったのを確認して。強い静電気で風船を割れば……」


 カーラ様は電気魔法の達人だ。

 静電気の強弱を操る事も、可能だろう。


「通気口から空気が噴き出して、粒子が飛ぶ」


 しかも通気口は下向きだ。風向きも同方向となるだろう。


「そして、何も知らない被害者が図書館に入った途端。微細化した粒子を吸って、亡くなったのよ」


 私は真犯人に向けて、人差し指を向けた。


「全ては浮気の口封じのためだった。そうですよね? カーラ・ケンリョ様」


 これが事件の全貌。私を罠に嵌めた、仕掛けだった。


「言い逃れが出来るなら。やってみてください」

「うっ! ううう……。痛い!」


 バチっという音が、カーラ様の首筋から聞こえてきた。

 更に手元や、足元からも聞こえてくる。

 動揺で魔法が暴走して、静電気を食らっているのだろう。


「痛! 痛、痛ぁ! わ、私は皇帝の嫁になる存在! こんな……」


 次々と静電気が発生して、カーラ様を痛めつける。


「あああああ! どりゃああ!」


 静電気の痛みに耐えきれず、カーラ様はノックアウトした。

 これで本当に終わった。私は追放を免れたのだ。


──────────────────────────────


「カーラが全て認めたよ」


 数時間後。ゴミガが私に報告をしてきた。

 

「動機はやっぱり、浮気の口封じみたいだ。最悪、アーボ様に、罪を着せるつもりだったらしい」

「そう……。お二人はどうなるのかしら?」

「アーボ様は殺人未遂で投獄。カーラ様は他国の皇子殺害だからな。治外法権も効かんだろう」


 二人共王族とはいえ、帝国の法に則って裁かれるのね。

 それにしても生きた心地がしなかった。

 私が殺人犯として疑われるなんてね……。


「ゴミガ」

「ん?」

「ありがとう」


 私は短い言葉でお礼を告げた。これで十分だ。

 ゴミガが居なければ、私は追放を受け入れていただろう。

 彼が立場を危険にさらしてまで、議論にもっていってくれたから……。


「いや。君の方こそ。見事な推理だったよ。僕も騎士として、まだまだだなぁ」

「いや、アンタなら、時間があれば気づいたんじゃない?」

「現場を見てすらいない君に言われてもねぇ」


 私達は微笑み合いながら、お互いを褒め合った。

 ふと、近くで話し合っている皇帝陛下と叔父様が居た。

 二人の話が自然と耳に入ってくる。


「皇帝陛下! 事件を解決した姪っ子を! どうか!」

「悪いな。やはり政略結婚は受け入れられない」


 今回は政略結婚を利用した、事件だったからだ。

 当面皇族が政略結婚することは、ないだろう。

 本当に愛し合っている人達が、婚約する。その方が良い。


「それに……。あの二人は良いコンビだからな」


 皇帝は微笑みながら、そう告げたのが聞こえてきた。

 これで私の宮廷生活は終わりだろう。

 でもそれで良い。悪評も覆ったし。


 私も本当に愛し合える人を、探さないとね!

 また道具にされたら、たまらないから!

前書きの通り。元々恋愛の予定でしたので。

トリックが雑で穴だらけで、すいませんでした。


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[一言] 逆転裁判、思い出しました。
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