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南 遊 記  作者: 原 海象
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第八回 霊耀天界を離れ勧善大師に弟子入りする

初めまして!原海象と申します。


今回は 中国四大遊記の一冊である神魔小説『南遊記』の八回目を編訳したものを投稿致しました。

なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。

原作は明から清の時代に書かれたとされております。

また本書は別名は「五顕霊官大帝華光天王伝」といいます

第八回  霊耀 天界を離れ華光天王と名乗り勧善老師に弟子入りする


 さて卯日宮の鄧天君とうてんくん霊耀れいようが瓊花会を騒がしたこと、それを金鎗皇太子から玉帝へ上奏されてしまったこと、官位を落とされて自分の部下になること等を知って大いに喜びました。


霊耀れいようは私の昔日せきじつ以来の仇敵。それが今日から私の部下になるのだ! これは霊耀が私に謁見しに来たなら、まずは殺威棒を四十鞭べん食らわし軽々しく許してはならぬと部下どもに言いつけねば」

そうして部下どもに言いつけ終えますと、ちょうど霊耀れいようがやってきました。


鄧天君とうてんくんは霊耀に卯日宮に入るように促し、二人が互いに挨拶を終えますと、鄧天君は知らないふりをして霊耀に訊ねました。


「大元帥殿が此方にいらっしゃるとは一体何をお知らせにいらしたのです? 衣冠も整えずに、どのようなお手柄を立てられたので?」


 そこで霊耀は瓊花会を騒がした一件の一部始終を話しました。それを聞いて鄧天君は大いに怒り狂い、威張りちらして申しました。


「それならば、私が貴様をしつけてやる! なぜ跪かないのだ?」


霊耀はやむを得ず跪き、鄧天君は部下に霊耀を押さえ込ませ、殺威棒で四十鞭べんあまりも打ち据えました。

霊耀は痛みに耐えきれず言いました。

「俺はまだ悪さしたわけじゃない! なんでこんなに叩く? 貴様は卑怯者だ」


 鄧天君は笑いながら

「貴様は既にあんな無茶苦茶に暴れているじゃないか。まあいい、これからは貴様が法を犯したら、私が貴様を打ってやる。私はこれから毎日本堂で卯の刻に点呼をとる。貴様は必ず本堂にいても返事をしろ。もし返事がなければ、四十鞭打つ。また太陽の運行にも必ず付いてこい。もしいなかったら、やはり四十鞭打つ」


 霊耀はこれを聞き終えて、すごすご自分の部屋へ帰りました。

霊耀は心の中怒りに燃えてました。


「鄧天君の無法者め。アイツと俺は昔から仲が悪いが奴は未だに過去にこだわってんな。

一計を案じて分身を作り、そっちは太陽を昇らせるのに付き合わせて、俺自身は本堂にいて卯の刻の点呼を聞こう。あの野郎、俺を一体どうするか?」



 さて鄧天君の手下で、名を金鷄という者がおりますが、鄧天君は金鷄にかまわず霊耀をどんどんこき使い、もし霊耀が失敗したらすぐ鄧天君に知らせるように命じました。

しかし意外にも霊耀は神通力を顕わして分身を作り上げたので、失敗は全くありません。金鷄は霊耀がちっとも失敗しないのを見ると、どうにかして失敗させようと考えて霊耀にこう申しました。

「俺は家に帰って母上の世話を見ねばならん。今日は来ないから、鄧天将軍に従って点呼を受けるもいいし、太陽の運行に付いていくのも良かろう」


 しかし霊耀は相手の考えを見抜いていました。

「この野郎、俺をだます気だな。なんでこの俺様が鄧天君たちから怒りを買わなきゃならない? こんな面倒な日々ともおさらばだ。腹いせに卯簿(出勤簿)に詩でも数句書いていって、下界に降って大人しく正道を生きていくとするか」


 そこで早速、卯簿を取り出すと、四句をしたためました。


恨めしいのは我が運の尽き

とうとう天羅地網に陥った

今こそ卯簿にクッキリ記す

華光天王、卯日宮に背く



 さて霊耀が詩を書き終えて出ていった後、金鷄が帰ると霊耀の姿が見えません。

金鷄は慌てて鄧天君に報告いたしました。そこで鄧天君が点呼をとろうと卯簿を持ってこさせますと、そこには四句の謀反を意味する詩が書いてありました。


それを読んだ鄧天君は怒り狂い、卯日宮の天馬を駆り立てると、霊耀を引っ捕らえに向かいました。


ちょうど霊耀が南天宝得関を出ようとしていたその時、鄧天君はようやく霊耀に追いつきました。鄧天君が大声で罵って申しますには、


「貴様は何という恥知らずだ!元々は貴様の不埒な真似をしたが原因で、玉帝陛下が死罪を免じて下さり我が部下に来たのだろう。それなのに貴様は心根を改めずあまつさえこんな詩まで書いてどこへ行こうというのだ? 大人しく縛られればよし、だが少しでも口答えしようものなら、その命無いものと思え!」


 これに対して霊耀は、


「この無法者め、いつまでも恨みを抱いて俺の点呼をとったり、太陽に付き合わせたりと、散々こき使いやがって。もし俺がこうでもしなきゃあ一生お前に付き合わされるのは御免だね!」


 これを聞いて鄧天君は問答無用とばかりに宝刀で斬りつけました。霊耀も大いに武勇を奮って戦います。しかし鄧天君はしきりに立ち向かいましたが、旗色が悪くなると天馬を返して逃げ出し玉帝陛下へ上奏しに行きました。


 さて鄧天君を退けた霊耀は、下界へ降りていきました。すると目の前には立派な寺山がありました。この寺山は火炎王光仏の朝真山洪玉寺でした。


 寺の中では火炎王光仏が鳳笙ほうしょうの修行を行っているところでした。霊耀はこの曲に聞き入り、洪玉寺まで行って火炎王光仏に会うことに致しました。


 この火炎王光仏は又の名を勧善大師とも申しますが、その大師が禅壇の上に正座していると突然霊耀が入ってきました。霊耀は謁見の礼を致しました。


勧善大師が訊ねて申します、

「華光天王は天界で大元帥の官職を手に入れられ、尽きせぬ富と名誉を受けているとうかがっておりました。今日どうしてこの山寺に光臨なされましたのは、一体どういうご用です?」


 そこで霊耀は瓊花会を騒がしたこと、金鎗皇太子を打ったこと、華光天王と号したこと、大元帥の職を削られて卯日宮で働かされたこと等を一通り話しました。


勧善大師曰く「それでは一体なぜここへ?」

「私は霊耀から華光天王と号を名乗りました。その為思いがけなくもあの鄧天君という野郎は、私に恨みを抱いて私の点呼をとったり、太陽に付き合わせたりさせるのです。

そこで私はこのままではいつまで経ってもこんな日々が続くと思い、一時の苛立ちから四句の謀反詩を書き付けて下界へ逃げ出したのです。老師の法戒の噂はかねがね耳にしておりました。私を老師の弟子入りしたく思うのですが、お許し下さいますでしょうか?」


 勧善大師は大変喜び、早速華光天王に以前のような振る舞いはせず、老師の法戒に従うように言いつけました。


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