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南 遊 記  作者: 原 海象
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第七回 霊耀 瓊花会を乱し、華光天王と号する

初めまして!原海象と申します。

今回は 中国四大遊記の一冊である神魔小説『南遊記』の七回目を編訳したものを投稿致しました。


なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。

原作は明から清の時代に書かれたとされております。

また本書は別名は「五顕霊官大帝華光天王伝」といいます

<南遊記>

第七回目 霊耀 瓊花会を乱し、華光天王と号する


揚州には后土聖母娘々(女神)というご利益があることで有名な土地神がおり、その后土聖母娘々の宝像のある廟の前が突然水浸しになり、更にこの土地の百姓達がやってきては廟を拝んで霊験あらたかな后土聖母娘々によってこの水難を退けるように祈りました。 

この訴えを聞いた聖母娘々は大変驚いて、すぐに天上界に上奏に向かいました。


天門にはいると、玉帝は昇殿し、文武百官と朝見を終えたところでした。后土聖母娘々が上奏して申しました。

「玉帝陛下に上奏申し上げます。東海の老竜王が、私の土地、揚州に水を湧き出させて、百姓を苦しめております。願わくば、人々を苦しみからお救い下さい」


玉帝はこれを聞くと、

「后土聖母娘々はひとまずご自分の廟に戻りなさい。朕が玉旨を伝え、すぐに四土星君に天兵を率いて東海の老竜王討伐と水難を退きに向かわせよう」


四土星君は玉旨を受けると、天兵を連れて朝廷を出発しました。すると雲の上で老竜王が神水を湧き出させ揚州を洪水にしているのを発見しました。そこで四土星君は宝貝を使い土嚢を積んで水難を防ぐと、老竜王や水族水兵に打ちかかりました。

そして大敗した老竜王達は慌てて東海の水晶宮へと逃げ帰りました。



 四土星君は将兵を引き連れて后土聖母娘々の元へ向かいました。后土聖母娘々は喜んで仙茶で四土星君をもてなした後、このように語りました。


「私の廟の前には瓊花の仙木があるのですが、その仙木は今まで花を咲かせたことはありませんでした。ですが今、あの神水に浸って一つの仙花を開いたのです。この仙花の芳しさといったら類い希なるもので、上は三十三天、下は五湖四海と、三界どこでもその香りを嗅ぐことが出来るのです。よろしければ此度の御礼としてこの仙花を玉帝陛下に献上しようと思うのですが、いかがでしょう?」

 

これを聞いて四土星君は、

「この仙花は、素晴らしい宝石にも勝っております。玉帝陛下に献上して何がいけないことがありましょう」

 こう言われて、后土聖母娘々も何の心配もなく。玉帝陛下に献上することを決めました。

 さて玉帝が霊霄殿に昇り、文武百官たちも礼を終えると、揚州の后土聖母娘々と四土星君が水を退け、勝ち鬨を上げ帰参してまいりました。玉帝も大いに喜び、四土星君たちに褒美を賜りました。

そして后土聖母娘々が奏上致しますには、

「私の廟の前に一本の瓊樹がございますが、未だかつて花を咲かせたことはございませんでした。ですがこの度水を浴びせられ、それが退いてからはたちまち一枝の瓊花を咲かせ、その香りを三界に漂わせております。恐れながら私このことを包み隠さずお話しし、かの花を我が君に献上いたしたく存じます」


 この后土聖母娘々の言葉に玉帝も大変ご満悦、すぐに后土聖母娘々に金花と美酒を賜り、臣下の者たちにこう申しました。


「この花は大変類い希なるものであるな。朕は今から『瓊花会』という会を起こし、文武百官の中でも功績著しい者にはこの花を髪に挿して美酒三杯を賜ろう。ただし功績無き者が『功がある』と偽らぬように」


 そうして、宴主には皇太子の金鎗皇太子が選ばれたのでした。


 金鎗皇太子は玉旨を受けるとすぐに文武百官を集めにかかりました。みな次々と会場に集まり、ほぼ全員が集まったところで金鎗皇太子が玉旨を伝えました。


「余は陛下よりこの瓊花会を設けて宴主を務め、皆を集めるように命じられた。もし何か功績ある者があれば名乗りを上げよ。さすればこの花を髪に挿し美酒を飲むことを許そう」


 金鎗皇太子は群臣に順々に自分の功績について訊ねましたが、皆恐縮と遠慮からか、口を揃えて「自分に功などございません」と言っては名誉を受けようとは致しませんでした。


やがて霊耀の順番がやって来ましたが、霊耀も功をひけらかすことは致しませんでした。

しかし、金鎗皇太子は誰も仙花も美酒も受けようとしないので、自分の髪に仙花を挿すと、美酒を数杯ほど飲み干してしまいました。これを見た霊耀は心中怒り、皇太子に具申致しました。


「殿下は宴主であって、玉帝陛下は殿下に功臣を推薦させる為の宴主なのに殿下が自分の髪に花を挿し、勝手に美酒を飲むのは如何なものでしょうか」



 これに対して金鎗皇太子は、


「群臣ども皆功績がないと言うのだ!だから余自身に花を挿した。何が問題だ」

「ならば俺には立派な功績があるぞ、俺にこそその花を与えるべきだ」

「おまえに何の功があるというのだ?」

「俺は風火二判官を捕縛し人々を苦しみから救い出した、これが功でなく何というんだ?」

その言葉も言い終わらぬうちに、すかさず仙花を奪い取ると自分の髪に挿し、また美酒を三杯飲み干しました。


金鎗皇太子はこれに激怒し

「この戯者が、そのように大胆不敵なことを申して陛下を欺こうというのか!」

霊耀はそれには答えず、いきなり金鎗皇太子に打ちかかりました。

金鎗皇太子も霊耀に打ち返しましたが、仙官たちになだめられて皇太子は逃げ出しました。


霊耀は瓊花会を騒がし皇太子を退けたことから後に、自らを「華光天王」と号しました。


霊耀は瓊花会を騒がしたことに思い悩んでいました。

「一時の苛立ちで金鎗皇太子をぶん殴ったが、もし玉帝陛下に知られたら当然懲罰は免れんぞ」


さて金鎗皇太子は霊霄殿へと逃げ帰ると、玉帝陛下の前で泣きながら上奏いたしました。

「余は陛下の玉旨により宴主を任されましたが、霊耀は玉旨を尊ばず、瓊花会を荒らして余をひっぱたき、自ら『華光天王』と号し、とても余の手には負えません。どうか今からでも遅くはありません陛下が宴主をなさって下さい」


 玉帝は息子の言葉を聞くと大いに怒り、すぐに霊耀に謁見するよう命じました。

玉帝は霊耀に瓊花会を騒がした理由を詰問しました。

「そなたは臣下で、我が皇太子は宴主なるぞ、何故このようなことをしたのだ?」


 霊耀は上奏して曰く、

「私は陛下の臣下の一人。金鎗皇太子は宴主でございます。臣下が宴主を打つなどということがありましょうか? 私は金鎗皇太子にしこたま殴られましたが、手も動かしませんでした。もしお疑いなら、他の仙臣たちにおたずね下さい。そうすれば白黒はっきり致しましょう」


 そこで玉帝が臣下の者たちに問いかけると、皆口を揃えて「お二人とも全く手は動かさず、口で言い争っただけでございます」と言うばかりでした。


これを聞いて玉帝は、

「たとえ手を動かさなかったとしても、金鎗皇太子と罵り合うべきではなかろう。汝が金鎗太子に功を認めさせようとしただけなら、何故こうなったのだ?

本来なら死罪を免れぬところだが、臣下の証言があるので死罪だけは許してやろう。代わりに現在の職を剥奪し、位を落として卯日宮で働き、その後何か功績があれば免罪してつかわす」


 華光は拝礼して感謝を申し上げると、朝廷から退出して鄧天君とうてんくんに謁見しに行くために卯日宮へおもむいた。


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