第四回 霊光公子 兜率宮にて転生する
初めまして!原海象と申します。
今回は 中国四大遊記の一冊である神魔小説『南遊記』の四回目を
編訳したものを投稿致しました。
なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。
原作は明から清の時代に書かれたとされております。
また本書は別名は「五顕霊官大帝華光天王伝」といいます
<南遊記>
第四回 霊光公子 兜率宮にて転生する
「私はこの辺りは有名な霊山や洞天福地が多いと聞いております。出来れば母上のもとを去り、この辺りの道観や寺院を観てまわりたいのです」
葉王妃はそれを聞き、ため息をつき霊光公子によく言い聞かせました。
「妾には貴方を引き留めることは出来ません。ですがただ怖いのは禍が貴方に降りかかるかもしれません。そこで、妾の信頼する従者をつけますから、いろいろなことを学び早く帰ってきなさい。母として貴方の帰りを待ちわびてます」
霊光は早速母に別れを告げると、嬉々として遊山に旅立ちました。三里と行かぬうちに、鐘の音が聞こえてまいりました。
霊光公子はこの鐘の音は何か従者に尋ねました。
すると従者は
「この鐘の音はあそこにある霊虚殿からなる音です。霊虚殿には三元賜福天官・北極紫微大帝陛下がいらっしゃるところです」
これを聞くと早速霊光は霊虚殿を拝観に行きました。
さてこの時北極紫微大帝はまだ玉帝の霊霄殿から帰っておらず、留守を申しつけられた朱衣仙官と羽衣仙官が霊虚殿を守っておりました。
するとそこに突然霊光公子が現れ、自分が馬耳大王の息子で今日はこの大帝陛下の宮殿を拝観したくて来た旨を告げました。
二仙官はひれ伏して申します。
「あなたが本当に馬耳大王のご子息ならば、我々が宴席の用意をして貴方様をおもてなしいたしますのでお待ち下さい。なお、くれぐれも後ろの宮殿には行かれませんように」
こう言い終えると二人は厨房へ行って料理の支度を始めました。
二仙官の言った後ろの宮殿が気になり、二仙官がいないことからこの隙に霊光は早速後ろの宮殿へ向かいました。
見ると扉は固く閉ざされ、表には梵字にて封印されていました。霊光公子は封印を打ち開いて中へ進みました。すると中には二匹の小鬼がいました。この小鬼は江南八十一州の火の精で、小鬼どもは霊光の姿を見つけると大声で叫びました。
「若様! どうか私等をお助け下さい、そうしたら一生ご恩は忘れません!」
と言われて霊光は、
「ここにはお前らを見張ってる奴なんかいないぞ。何でお前らは逃げ出さないでわざわざ俺に助けを求める?」
「それはこの金鎗のせいなのです。この金鎗は魔を降だし妖を伏す金鎗でして、コイツが私等をここへ縛り付けているのです。若様がこの金鎗を持ってくだされば、私等は逃げ出せます。また、この金鎗は若様が持ってくだされば、この金槍は後々の為に使えます」
これを聞いて霊光が金鎗を掴むと、二匹の小鬼は拝謝しながら逃げだし、そしてあまねく天下の人々に害を及ぼしました。
霊光は金鎗を盗み出すと、宴席を待たずに逃げ出しました。あの二仙官は後ろの宮殿から物音が聞こえたので慌てて見に行くと、霊光も小鬼も金鎗も全てなくなっていました。二人が悩んでいると、ちょうどそこへ大帝が帰ってきて二仙官に訊ねました。
「おいあの小鬼どもは何処へ行った?」
二仙官は泣きながら今までのことを告げました。
大帝は怒り心頭に発し。
「よくもこのような無礼を働き、余の金鎗を盗み、小鬼どもを逃がしたな! よし、余の九曲珠を馬耳山に変じ、奴が変化した余の九曲珠に逃げ込み、素直に鎗を返せば許し。しかしもし金鎗を返さぬならば、彼奴を九曲珠の中で殺してやろう!」
一方、霊光は大帝が追ってくるのを恐れて、従者に金鎗を持たせると先に洞に帰しました。
さて出発しようとした霊光でしたが、そこへ霊光は大帝の九曲珠をくらい、逃げ出すことが出来ずに霊光は九曲珠の中へ捕まってしまいました。
紫微大帝の「九曲珠の法」によって霊光は霊虚殿に連れ戻されてしまいました。
北極紫微大帝が申すには、
「この畜生が、よくも余の金鎗を盗んだ上、あの小鬼どもを逃がしたな! すぐに金鎗を返せば許してやるが、返さないならば九曲珠の中で死んでもらうぞ!」
「何言ってやがる、俺はアンタの金鎗なんぞ見たこともないぞ」
「お前は従者を先に洞に帰しておいて、余をだませると思っているのか?」
しかし霊光は「知らぬ」と何度も言い大帝は激怒して真言を唱えると珠に映っていた霊光を消してしまい 霊光はたちまち九曲珠の中で悶死し、その魂魄は空中に放り出され、漂うようになりました。
その頃、八景宮というところに大恵盡慈妙楽天尊という天尊がいました。天尊が座禅をしていたところ突然空中に一筋の魂魄が見え、空中をさまよっていました。
天尊はしばらく考え、
(どうやら何とかしてやらねばならんようだ。そうだ、兜率宮の炎玄大王のところへ生まれ落ちさせてやろう)
そこで霊光の魂魄を手招きし、袖へ入れてしまうと兜率宮へ向かいました。
さて炎玄大王が玉座っていると突然、妙楽天尊がやって来ました。
炎玄大王は慌てて拝礼をすると天尊が申しました。
「実はワシが今日ここへ来たのは他でもない、あなたに御子を一人授けようと思ったのです。そこで生まれてきたとき、ワシがその子の体に付けた目印をお教えしましょう」
それを聞いて炎玄大王は訊ねました。
「いったい何処を見ればいいのですか?」
「まもなく炎玄大王の奥方がご出産なさるでしょう。その時生まれたのが男の子で、左の手のひらに『霊』の文字・右の手のひらに『耀』の文字があり、さらに三つの目を持っていればそれはワシが贈った子供です。もしこの三つの印がなければ、それはワシが贈った子供ではありません」
そう言った瞬間、公主が男の子を出産したという知らせが入り、果たして三つの印を持っていたのでした。大王は大喜びで天尊に拝謝し、彼にこの子の名前を付けてもらうようお願いしました。そこで天尊は、
「ではこの子を『三眼霊耀』と名付けましょう。成長するのを待って、いつかワシの弟子として受け取りに参ります」
大王はこれまた大喜びで、天尊に別れを告げました。
光陰矢の如し、月日は流れて霊耀が13歳になると妙楽天尊は約束どおり霊耀を弟子にするため再び兜率宮へやって来ました。天尊は炎玄大王に返礼をし、さっそく霊耀を弟子にもらい受けに来た旨を伝えました。大王は喜んで霊耀に天尊を師匠として拝ませました。霊耀は父の言葉通り両親に別れを告げると、天尊と共に八景宮に帰りました。
八景宮で修行して霊耀は武芸十八般を学び、変化の術を操り、また大恵盡慈妙楽天尊から五口冒火丹を賜りました。
ある日のことです、天尊は玉帝の御前に行かねばならない用があり、この機会に霊耀の力量を試してやろうと、霊耀に聞こえるよう大きな声で「金刀の見張りをするよう」童子に言って出かけた。
天尊が出発すると、さっそく霊耀は童子に訊ねました。
「おい、師父が出かける前にお前に何か言ってなかったか?」
しかし童子は「お前に言う必要はないね」
と言うばかりです。
だけど霊耀が再三詰問するので、仕方なく童子はこう答えました。
「師父は僕に金刀を見守るように言われた。でもお前は知らなくていいことさ」
それを聞いて当然霊耀は金刀を見たがりますが、童子は一向に取り合いません。
霊耀が思うに、
(あいつは俺が見たいって言ってもとても聞きそうにないな、ここは一つ俺が師父に変化するか)
そこでひとまずその場を離れると、呪文を唱えて妙楽天尊に変化し、童子を呼んでこう申しました。
「すまんがワシの金刀を取ってきてくれ。天界の宝比べに出るのに、あの金刀を持っていかねばならん」
童子はそれを霊耀だと見抜くことが出来ず、言われた通り金刀を持ってきて渡してしまいました。まんまとだまし取った霊光は火を発すると、金刀を焼いて練り上げて三角形の金磚(きんせん:煉瓦)に変え、それを懐へしまい込んでしまいました
それからしばらくして天尊が八景宮に帰ってまいりました。戻ってきた師父を見て童子が、
「あれ? 師父は金刀を持って宝比べに向かったはずなのに、帰りは何でなんにも持たずに帰ってきたのですか?」
「弟子や、ワシは金刀を取りに戻ったりしてはおらんぞ」
「さてはあれは師父なんかじゃなくて霊耀だな!」
「いったいどうしたのだ?」
「実は三日ほど前、霊耀が金刀を見せてくれとせがんだのですが聞き入れなかったんです。そのために、霊耀は師父に化けて金刀をだまし取ったのでしょう」
「なるほど分かった、すぐに霊耀をここに呼んでおいで」
童子はすぐに霊耀を呼び出すと天尊の前に連れてきました。
天尊に審問され、霊耀は仕方なく全てを白状いたしました。
「俺は金刀を練ってこの金磚を作ってしまい込みました。いつか天上界の宝比べに、師父と一緒に参加してコイツを披露するつもりだったのです」
天尊は深く追求したりはせず、こう申しつけました。
「この宝貝は変化窮まることなく、よく陣を守り、戦を助けることが出来るだろう。大事にしまっておいて、なくすんじゃないぞ」
そういうと、天尊どこかへ行ってしまいました。
南遊記(編訳版)はいかがでしょうか?
このまま、原作重視すべきか、変更するか迷っております。
できれば、編訳者のモチベーションを維持するため、反響を聞きたいので
感想や☆を頂ければ幸いです。
宜しくお願い致します