最終回 華光 仏道に帰依する
初めまして!原海象と申します。
今回は 中国四大遊記の一冊である神魔小説『南遊記』の最終回を編訳したものを投稿致しました。
なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。
原作は明から清の時代に書かれたとされております。
また本書は別名は「五顕霊官大帝華光天王伝」といいます。
<南遊記>
第三十二回 華光 仏道に帰依する
さて霊鷲山の世尊はある日、十六羅漢たちに申しました。
「華光の愚か者が、あの日、竜瑞王を追いかけて我が霊鷲山まで押しかけ、わしを悩ますものだから、天眼を取り上げてやった。
わしは華光に『お前が仏道に帰依するのならば、天眼を返してやろう』と言うと、奴は『母親を探しに行かなくてはいけないから、見つかって逢えたら帰依しに来る』という。
それで経文を唱えて金磚を返してやった。そして奴は母親を捜し出しても仏門に帰依しなかったら、六根(眼根・耳根・鼻根・舌根・身根・意根)が揃わなくとも良いと天に誓ったのだ。
だが奴は今や母親を救い出し、功も成ったというのに、いまだ中界で因循姑息している。
このままでは、中界で『仏門の弟子が仏道に帰依しないとは』と悪評が立ってしまう。
そこでお前達に頼みたいのだが、胡人に化けて中界に向かい、各々が法力を披露し、そのなかで手足を切り落としてみせよ。華光がそれを見たら、必ずお前達にその術の教えを請うはずだから、そうしたら奴を騙して脚を切り落とさせるのだ。
それを青鬣獅子にくわえて、わしのいる霊鷲山まで持ってこさせれば、華光もそれを追いかけてくる。そして、ここに来たらわしが奴に仏門に帰依するように諭す」
弟子達はこの命を受けてそれぞれが霊山を発つと、胡人に化け、切り落とした腕を竜に、脚を獅子に変化させる法術を披露しておりますと、どんどん観客が集まってまいりました。
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さて華光が勧善懲悪の旅を続けておりますと、遙か前方に胡人が法術を披露しておりました。近寄ってみれば、何とも見事な技。すっかり華光は感心いたしました。
そこで華光は胡人に尋ねます。
「もし、お尋ねしたいのですが、貴方はこの技を他人に教えては下さいませんか?」
その胡人が答えて、
「教えるよ」
「ぜひ私に教えて下さい!」
「もしわしに習いたいなら、金百両で教えてやろう」
華光はこれが如来の策だとは知りませんから、ためらうことなく金百両を差し出しました。
胡人曰く、
「金百両を受け取ったからには、教えてやろう。
まずはお前さんの脚を切り落とさせてもらうぞ」
華光は驚きながら、
「そんなことしたら痛いですよ」
「師匠が痛くないと言っているのだ」
華光の左脚が切り落とされましたが、果たして、ちっとも痛くありません。
華光が今度は右脚を切り落としてもらおうとすると
胡人は、今度は自分で切ってみろと申しました。
そこで自分で切ってみますと、痛くはないのですが、ただグラグラして落ち着きません。
華光は不安になりながら言いました。
「お師匠様、これじゃあ不安定ですよ。脚を戻して下さい」
胡人は、「この脚はお前が切ったのではないか」
そう言って胡人は華光の脚を青鬣獅子にくわえさせました。
青鬣獅子は華光の右脚をくわえたまま霊鷲山まで飛んで行ってしまいました。
そして、あの胡人達も本性を現し、紫色の瑞雲に乗って飛び去ってしまいました。華光はこれを見て大慌てです。
「 胡人達は、霊鷲山の仏弟子だったのか!」
やむを得ず風火二輪に乗って、霊鷲山まで急ぎました。
さて、霊鷲山では如来の元に十六羅漢が帰ってまいりました。青鬣獅子もちゃんと華光の脚をくわえております。如来が喜んで何か言いかけたところに、華光がやってきました。
華光は殿前に五体投地して、如来に助けを求めました。
如来は諭すように言いました。
「お前は前に、母親を捜し終えたらここに戻って仏道に帰依すると誓ったではないか。
『もし戻らねば、六根が揃わずとも構わぬ』と。だからわしはお前の六根を欠いてやったのだ」
華光は何度も拝礼して今までのことを説明しました。
「師父が私の脚を返して下されば、すぐにも帰依しますとも!」
「まあ、そう言うことならしばらくは返してやろうか」
ところが華光は心根を改めず、如来が脚を返してくれたのを確認するや、あっと言うまに逃げ出しました。
如来は笑って、
「こいつめ、何処へ行く気だ?」
「唵!」
と経文を唱えました。
如来が「脚よ、山門の下で踏みとどまれ」と言うと
逃げ出した華光が山門のところまで走ってきますと、そこから脚がぴくりとも動きません。
どうしようもなくて、華光はいやいやながら如来の元まで戻りました。
如来は満面の笑顔を浮かべ、
「華光、どうして逃げ出したのに戻ってきたのだ?」
華光は不承不承ながら如来に言いました。
「どうか、私に仏道へ帰依させて下さい。もう決して逆らったり致しませんから」
「うん、どうやらもう逃げ出すことは無さそうだな。ならば天眼を返し、脚も戻してやろう」
如来の言葉に、華光は拝して感謝いたします。
如来は、三千世界を見渡す慧眼をもって華光に言いました。
「お前は出家して修行し、今や上仙として有名だが、その功徳はお前にだけでなく広くに渡っておる。
布施輪廻簿を見てみると、かつてお前の父母として登録されておった者たちは、生きていたときには色々苦労もあったが、今日お前が華光菩薩に帰依したことによって共にその魂魄は西方に至り、輪廻の輪を抜け出し成仏することが出来た。
第一に、吉芝陀聖母は、今や邪を改め正に帰し、人も食べなくなり、やはり西方に至った。
第二に、その瓊娘は孝順の徳が非常に高く、西方にて仙女となるに至った。
第三に。前の母の范夫人は誠実にして孝順なる人物である。一時は無念の死を遂げたが、閻魔王によって朝廷の大臣、鄧尚書の家に投胎するように送られ、既に七歳になる。
范氏はたゆまず善心を保ったため、彼女の成長を待って西方に至らせる。
第四に、馬耳山の 葉夫人と比丘公子もまた修行により道を得た。
今又お前が仏道に帰依したため、やはり西方に至るであろう」
如来は一通の手紙を玉帝に宛ててしたため、華光を玉帝はその功績が天地に等しいものとみなし『玉封仏中上善王顕頭官大帝』に封じるように上奏いたしました。これに伴い、華光にまつわる多くの人々も、共に如来の上奏によって西方へ送られたのでした。
こうして華光天王は永く中界を護り、世継ぎの男子を生めない妻は離縁されて当然という儒教(『礼記』の「嫁して三年、子なきは去る」)の男尊女卑の考えに苦しんだ女性たちに男子を求めれば男子を与え、女子を求めれば女子を与え、商売には一に対して十の利を与え、霊験も御利益もあらたかとして、末永く祀られました。




