第二十七回 華光 聖母の業の深さに嘆く
初めまして!原海象と申します。
今回は 中国四大遊記の一冊である神魔小説『南遊記』の二十七回目を編訳したものを投稿致しました。
なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。
原作は明から清の時代に書かれたとされております。
また本書は別名は「五顕霊官大帝華光天王伝」といいます。
<南遊記>
第二十七回 華光 聖母の業の深さに嘆く
さて、華光天王は鄷都に下ること三度にして、ついに母上を救い出す
ことが出来き気分は上々となりました。
そこに、その吉芝陀聖母が申しますには、
「息子や、そなたが妾を助けてくれたのはよいのじゃが
妾はちと陂娥が食いたいのじゃが」
華光は首を傾げて言いました。
「母上、『陂娥』とは一体どんなものです? 私も嫁もトンと存じません」
「陂娥を知らぬと。では順風耳と千里眼に聞いてみよ」
華光が二人に聞いてみると、二人は顔を青くしてこのような答えが返ってきました。
「陂娥とは人のことです。悪業悪果が抜けずご母堂様はまた人肉が食べたいようですな」
これを聞いた華光、吉芝陀聖母に切々と訴えます。
「母上、あなたは鄷都に於いて責め苦を受けていたところを、
私が策を練ってようやく助け出したのです。
なのに、何でまた人なんかを食べたがるのですか?
そんなことは、とても天が許せません!」
吉芝陀聖母曰く、
「妾が欲しいと言ったら欲しいのじゃ。
親不孝者めが、そなたが妾に陂娥を食わせてくれないのなら
誰が妾の飢えを救ってくれようか」
華光はやむなく、母上の業の深さに涙を流しながらこう言いつくろいました。
「分かりました、二日以内に召し上がっていただけるようにいたしましょう」
そして華光は疾医の告知を出しました。
『求む名医!我が母・吉芝陀聖母の食人を止めさせられた者には、充分に褒美を取らす!』
一方、鄷都では鄷都大帝は華光が疾医の告示を出して吉芝陀聖母の
食人を直そうとしていることを知ると、刺客を放って吉芝陀聖母を殺害しようと企てました。
しかし、誰か我こそはというものは居ないか尋ねますと、魔軍という者が進み出ました。
「私が参りましょう。私が疾医に化けて求人に応募し、医術を披露いたします。
奴が私を採用したら、薬の中に毒薬を混ぜ、吉芝陀聖母を毒殺してみせましょう」
鄷都大帝はこれを聞いて喜び、すぐに魔軍に吉芝陀聖母の殺害を命じました。
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さて華光が母上のことを思い悩んで悶々としておりますと
告知を見て応募してきた疾医がいるとの知らせがありました。
華光は大喜びでその疾医を迎え入れます。
華光は吉芝陀聖母に、
「この疾医は母上を治し、陂娥を食べたくなくなるように出来るということですよ」
吉芝陀聖母は、
「もしもその疾医とやらが既に来ておるのなら、妾に会わせておくれ」
そこで華光は疾医を伴って吉芝陀聖母に面会させます。
吉芝陀聖母は疾医を見て驚き、
「こやつは妾を治しに来たのではないぞ!
奴は鄷都の魔軍と申す者、きっと妾を殺しに来たのじゃ」
それを聞いた華光は激怒し、魔軍に撃ちかかろうといたします。
魔軍は恐れをなして、
「命ばかりはお助けを! ご母堂様を治せる妙薬をお教えしますから!
これを服用すれば人間なんて食べたくなります」
華光、「言ってみろ、話次第では助けてやる」
「もしもご母堂に人間を食べさせたくないのでしたら
西王母娘々の蟠桃を盗ってきて食べさせることです。
西王母娘々の蟠桃は、3600本の桃の木があります。
手前の1200本は、3000年に一度熟し、これを食べた者は『仙人』になれ
中ほどの1200本は、6000年に一度熟し、これを食べた者は、『長生不老』が得られ
奥の1200本は、9000年に一度熟し、これを食べた者は『天地のあらん限り生き永らえる』とされております。
普通の仙桃でも一口でも食すれば、どんな極悪人でも善男善女になれます。
このような仙桃でも別格である西王母娘々の霊験あらたな蟠桃ならば
食人の業から抜け出すこともできます」
「どこに西王母娘々の蟠桃がある?」
「西王母娘々がお住まい、金岳園に蟠桃園がありまして
今年がちょうど食べ頃です。華光天王様がそこから蟠桃を盗んできて
ご母堂が召し上がれば、もう人を食べたくなんかなりません」
これを聞いた華光は魔軍を放してやり、賢妻に母上を見ているように良く言いつけて
天界へと出かけて行きました。
補足説明です。(笑)
「疾医」ってなに?と思われた人がいる(多分)ので説明させて頂きますと中国では薬を用いて治療にあたる「疾医」、メスや鍼を用いて治療にあたる「瘍医」、動物を診る「獣医」、そして『食』全般を担う「食医」の4種類であり、そのなかでも最も重要であるのが皇帝の食をみる「食医」が位が上であったといわれています。
また、古代中国には料理人から「宰相」になるぐらい食医は重要なポジションでもありました。




