表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南 遊 記  作者: 原 海象
18/32

第十八回 哪吒大元帥 天兵を引き連れ華光を収めんとす

初めまして!thuleと申します。


今回は 中国四大遊記の一冊である神魔小説『南遊記』の十八回目を編訳したものを投稿致しました。

なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。

原作は明から清の時代に書かれたとされております。

また本書は別名は「五顕霊官大帝華光天王伝」といいます。

<南遊記>

第十八回 哪吒大元帥 天兵を引き連れ華光を収めんとす

 



さて玉帝が昇殿し、群臣と朝を終えると、伝表官が上奏して申しました。

「下界から文殊菩薩と普賢菩薩の両名が上奏文を奉りにまいりました」

 玉帝は上奏文を持ってこさせました。文殊と普賢が上奏文にしたためますには


『華光の奴は下界を騒がせ、全く邪心を入れ替えず、我々の霊山になぐり込んできて文瑞院を占領し、またもや謀反を起こそうとしております。願わくば陛下、どうか早急に名案を企て、後患をお取り除き下さい』


 玉帝はこれを読んで激怒し、群臣に相談いたしました。


「今文殊菩薩と普賢菩薩の両名が上奏するには、華光が下界で暴れ、清涼山を占領したそうだ。朕は天兵を起こし、華光を捉えようと思うが、誰が兵を率いて出馬すべきであろうか?」

 

文曲星・余柯が進み出て申し上げます。

「臣は毘沙宮の李靖天王の子で、名を哪吒太子なたたいしと申す者を推薦いたします。この者は神通力も広大で、法力は無辺でございます。また一個の綉球の中に十六人の家来を有しており、五千名の雄兵を引き連れ、戦に挑んでは勝利を招き、負けた試しはございません」


 玉帝はこれを聞いて大喜び。すぐに哪吒太子なたたいしを殿中に呼び出すと、彼に遠征寇大元帥の官位と金花二つ・美酒三杯を与え、殿中を花飾りで飾って送り出した。



 哪吒太子なたたいしは玉帝から命令を受けるとさっそく自軍の点呼を取り、南天宝得関から下界の離婁山へ向けて出陣いたしました。



まずは陣営を建てると部下の者に檄文を書かせ、誰か先陣を切りたい者はいないかと訊ねました。


最初に名乗りを上げたのは先鋒の独角逆鱗龍でした。

「願わくば、それがしに初戦を行かせて下さい」

 そこで哪吒大元帥は独角逆鱗龍を先鋒に遣わすことにいたしました。


独角逆鱗龍は、頭の上には角が一本、目玉はあたかも金の鈴、むき出した牙は猛虎にも似、伸びた爪は人喰い狼の如し。身じろぎすれば砂が舞い、立てば身体は空まで届くといった出で立ちでした。


 さてその独角逆鱗龍は横に槍を携え天馬を留め、威風堂々と洞府の前に立ちはだかり、大声で華光を呼びつけました。


華光は哪吒大元帥の檄文を見て大いに腹を立て独角逆鱗龍に斬りかかりました。

五十合ばかり争いましたが勝負は付きません。

そこで華光はわざと負けて逃げ出し、独角逆鱗龍が追ってきたところへ金磚きんせんを投げつけました。


独角逆鱗龍は防ぎきれず、金磚きんせんに角を打たれて頭から鮮血を吹き出させ。慌てて本陣へと逃げ帰りました。


哪吒大元帥は初戦に負けたことを激怒し、独角逆鱗龍を軍法に従い斬首するつもりでした。しかし、他の将軍から助命嘆願を受け独角逆鱗龍の斬首は取りやめとなりました。


独角逆鱗龍は哪吒大元帥に三拝九拝して華光の神通力について語るのでした。


とうとう哪吒大元帥の牙旗がきをはためかせて哪吒大元帥は御自ら出陣し、華光と戦うことにいたしました。


哪吒大元帥は頭に紅花金紫の圏をはめ、身体に纏うは八宝甲冑、足に履くのは緑線の黒い革靴、左に花花綉球を抱え、右に九節銅鞭を挿し、手には長槍を携えて、紅い鬣の白馬に跨り、声も高らかに華光を怒鳴りつけたのでした。


その声を聞いた華光が洞府から出てきて言いました。

「哪吒大元帥閣下、貴殿はまだ俺がなんで悩んでるか知らないだろう? なのに何だって天兵を引き連れて、そんなに戦を仕掛けてくるんだ?」

 

哪吒大元帥曰く、

「お前は直仏弟子だろう。前世は世尊に諭され、玉帝陛下はご自分のかつての過ちを認めてお前を釈放された。つまり、陛下はお前の罪をお許し下さった。だがお前はまだ邪心を入れ替えず、また下界にて悪行をしようとしている。だから俺が今天兵を引き連れ、戦いに赴いてきたのだ! とっとと天馬から下りてお縄を頂戴しろ。もし逆うつもりなら、お前の命はないぞ!」


「俺には元々下界を荒そうなんてつもりはねえ。玉帝陛下が戦いをふっかけて来なきゃ何も起きなかった!」


 言い終えると、すかさず哪吒大元帥に打ちかかり、辰の刻から酉の刻に至るまで争ってもまだ勝負は付きませんでした。


二人は一旦戦い終え、翌日もまた戦いましたが、それでもまだ勝負が付きません。


華光は汗だくになり言いました。

「こんな事は珍しいな。明日は宝貝で勝負を決めよう」

 哪吒大元帥はこれに応じて言いました。

「確かに、このようなことは大聖討伐以来だな。よし、明日は宝貝比べだ」

 

こうして二人はそれぞれの陣営に帰っていきました。




 次の日、五更の太鼓が鳴って夜が明ける頃、二人は出陣いたしました。


華光が金磚きんせんを投げつけると哪吒は綉球を蹴り上げる。

華光が風火輪を操れば哪吒は金紫圏きんしけんで迎え撃つ。

華光が火鴉からすを放てば哪吒は五百鬼兵を繰り出すという有様です。

またもや一日中争ったのですが、結局勝敗は付かず、各々兵を収めたのでした。


哪吒大元帥が陣営に戻って座っていると、八角頭陀将軍が進み出て申し上げました。

「それがしが出馬しました暁には、必ずや華光を捕らえてまいりましょう」

 

それを聞いて哪吒大元帥はすぐに八角頭陀と共に出馬し、八角頭陀は華光と相争いました。

しかし、すぐに華光に金磚きんせんを投げつけられ、三本の角が折られてしまいました。頭から血をたらたら滴らせて、逃げ戻ると綉球の中に入って養生いたします。

 

今度は九天八角同波羅龍が進み出て、出陣したい旨を訴えました。哪吒大元帥はそれを聞いて、「先ほどは八角頭陀でさえ打ち負かされた、けいにどんな神通力があって行きたというのだ?」

 九天八角同波羅龍は、

それがしは奴と戦っている時に神通力で水を顕わし、華光を水中に引き入れて溺死させてみせましょう」


 哪吒大元帥はこの計略に喜びました。

早速 九天八角同波羅龍は出馬しますと、華光と相争い、計略どおり華光を水中に引き入れることに成功いたしました。


しかし驚いたことに、華光は水中でも最もその神通力を発揮するのでした。


水中で九天八角同波羅龍との打ち合いが始まります。しかし九天八角同波羅龍はもはや打つ手もなく、華光に打ち負かされ自分の陣に逃げ帰りました。


 哪吒大元帥はこの事態に大いに腹を立て、再び大元帥自ら出馬しようといたしました。


そこへ和合二神が進み出て、

「大元帥御自らが出馬するには及びませぬ、それがしら二人に行かせて下さいませ」

 哪吒大元帥曰く、

「お前たち二人はどんな神通力があるのだ?」

「私共は玉如意ぎょくにょいと申す宝貝を持っておりまして、真言を唱えて玉如意を動かせば華光を捉えることが出来ます。そして我が弟の宝貝、宝珠菓盒に封じ込め、必ずや大元帥の元へ連れてまいりましょう」



 哪吒大元帥はそれを聞いて、細かく注意を言い付けた上で二人を出馬させました。


華光と二人が相争う内に、華光は金磚きんせんを投げつけますと、なんと金磚きんせんは二人の玉如意に招き寄せられ、菓盒に封じこめられてしまいました。

次に火金丹を投げつけても、同じように取られてしまいます。

華光は慌てて、風火二輪ふうかにりん火鴉からすも取り出しましたが、どれも皆同じことでした。

ついには白蛇鎗を取り出しましたが、とうとう華光自身も菓盒に封じ込められてしまいました。


和合二神は鬨の声を上げ、すぐに哪吒大元帥に見せに帰ろうとしたところへ、突然小軍の天兵がやってきて和合二神に声をかけました。

「華光は将軍に封じ込められてしまったのですか?」

和合二神は喜びながら言いました。「ああ我が兄弟の宝貝で華光を閉じこめてしまった」

 

その言葉が言い終わらぬ内に、ちょうど菓盒の中に閉じこめられ、酩酊状態だった華光が天兵に名前を呼ばれて菓盒の中で跳ね起きました。


「てっきり布団で寝ているような気でいたら、あいつらの宝貝に閉じこめられたか。

もしあの天兵が俺の名前を呼ばなければ、危うく奴等に捕まるとこだった」

 

すぐにでも神通力を使って菓盒から抜け出そうといたしましたが、どうも身体が思うように動きません。そこで火金丹を取りだし、火を付けて菓盒の蓋に小さな穴を開けました。

外が見えるのを見て、華光は大声で怒鳴りながら外に出てくると和合二神に打ちかかりました。


和合二神は大敗して哪吒大元帥の陣営へ戻ったのでした。


 哪吒大元帥は怒り狂い、再び自分が出馬しようといたしました。そこへ名を霹靂大仙という者が進み出て、こう申します。

それがしは五方蠻雷という宝貝を操って轟雷を打つことが出来ます。この度、奴と私が戦えば、必ずや轟雷にてあやつを撃ち殺してご覧に入れましょう」


 哪吒大元帥はよく気を付けるように言い霹靂大仙は出陣しました。


 霹靂大仙はすぐに出陣し、華光と相争いました。

戦いも半ばになり、大戦はわざと逃げ出し、華光はその後を追いかけました。


そこへ大仙は真言を唱えて宝貝、五方蠻雷を操り、轟雷が華光を打ちました。

華光もこれにはたまらず、一時洞府へ逃げ帰りました。

霹靂大仙が哪吒大元帥の元へ戻ってこのことを報告しますと、哪吒大元帥は大喜びで霹靂大仙の武功を褒め称えるのでした。

 


さて華光は逃げ帰った洞の中で、考えておりました。

「霹靂大仙にこんな神通力があるとすると、どうやってあの宝貝を破ったもんかな?」

 

思いを巡らしているところへ、火漂將が進み出て申し上げますには、

「明日天王様が奴と戦う際に、分身を一つ作っておいて、奴にはそれと戦わせるのです。

そして天王ご本人は空中に身を隠して、五方蠻雷が打たれるのを待ち、そこへ金磚きんせんを投げ落とせば、蠻雷は金磚きんせんに当たるでしょう。その後は、奴が怯んだ隙に勢いに乗じてやっつけてしまうのはいかがでしょうか?」


華光は火漂將の計略に喜びました。


 次の日、哪吒大元帥は再び霹靂大仙を遣わして戦いを挑んできました。

大仙は再び五方蠻雷を操って打ってきますが、華光は分身を作って大仙と戦わせ本身は空中に隠れていました。その時、大仙は五方蠻を使い華光の分身に轟雷を浴びせました。

それを雲の上から見ていた華光は真言を唱え金磚きんせんは投げ落しました。

すると、轟雷は華光の分身には当たらず、金磚きんせんに命中しました。


「疾ッ!」


華光は真言を唱えて火鴉からすを放ち、霹靂大仙に火炎を浴びせました。

宝貝五方蠻雷は当たらない、華光の火鴉からすに火炎を浴びせられるで、

霹靂大仙はすっかり打ち負かされて哪吒大元帥の陣営に逃げ帰りました。


 哪吒大元帥は末席に座る呑世界鬼将軍に申しました。

「お前は世界の全てをも飲み込むことが出来るのに、なぜ出陣して華光を飲み込まんのだ?」


 呑世界鬼将軍曰く、

「哪吒大元帥に申されるまでもなく、わしもそのつもりでした。まあわしが行ってきますのでお待ち下さい、きっとあのならず者を飲み込んできて哪吒大元帥にお目にかけましょう」


 呑世界鬼将軍はすぐに出陣し洞府の前までやってくると、華光に打ちかかりました。

やがて呑世界鬼はわざと負けたように華光の隙をつくと、ぱっくり口を開いて華光を飲み込んでしまった。すぐに哪吒大元帥にこの事を報せようと本陣の前まで帰ってきますと、その姿を見た一人の小軍の天兵が声をかけました。

「華光の奴、将軍に飲み込まれてしまったというのは本当ですか?」


 さて飲み込まれていた華光はと申しますと、呑世界鬼の体の中で酩酊状態になっていましたが、天兵の言葉を聞いて突如酔いから覚めたように覚醒し、立ち上がって脱出を試みました。しかし和合二神の宝貝のように穴を開けることは出来そうにありません。


そこで火金丹を一粒取り出すと呑世界鬼の腹の中で燃やしました。

腹を焼かれて呑世界鬼は七転八倒の苦しみようです。

 

華光は呑世界鬼に言いました。

「もしお前が素直に口を開いて俺様を出せばよし、だが口を開かなければお前が焼け死ぬだけさ」


 呑世界鬼はやむを得ず口を開きますと、華光は奮い立って飛び出してきて呑世界鬼に打ちかかりました。しかし結局呑世界鬼は大敗し、華光が勝ち鬨をあげて陣営へ帰っていきました。




 さて、呑世界鬼将軍は敗軍の兵を引き連れて哪吒大元帥にそれまでのことをすっかり話しました。哪吒大元帥はこれまでの経緯を聞いて思い悩みました。

華光にこんな神通力があるなら、勝つことは出来そうもない。

どうしたら良かろう。もし何か一つでも功を成せなければ、天界へ帰ることもできやしない……


 毎日毎日、哪吒大元帥は煩悶しておりました。そこへ配下の一人で、名を辟温使者と申す者が進み出てきて申し上げました。


「私が聞いたところによりますと、華光の持つ最も恐ろしい宝貝は金磚きんせんだそうでございます。この金磚きんせんはかつて八景宮の天尊様の金刀で、華光に盗まれ、練り上げられて金磚きんせんにされたものであります。


そこでこの私が八景宮の金刀童子に化け、華光に会いに行ってこう申します。

『八景宮の師父が、私にお前の所まで金磚きんせんを取ってくるように言われたのだ。

何でも宝貝会に持って行かれるそうだから、会が終わったらすぐ返しに来る』と言います。奴が私に金磚きんせんを受け渡したら、すぐに持ち帰って大元帥に献上致しましょう」

 

哪吒大元帥はその策を聞いて喜び、辟温使者によく注意することを言い付けてると早速その計略を実行させました。


 金刀童子に化けた辟温使者は、離婁山に着くと華光師兄に会い、辟温使者は計略のとおりに申しました。


「師父が天界の宝貝会に行いくそうです。僕に宝貝会に持っていきたいから華光師兄から金磚きんせんを受け取って来るように申されました。宝貝会が終わり次第、きっと返しに来ますので金磚きんせんをお渡しできないでしょうか?」

 

華光は苦渋の顔をして言いました。

「今ちょうど哪吒の奴と闘ってるからこれがいる。しかし師父が必要とされるならば従わないわけにはいかない。もし宝貝会が終わったら、急いで俺に返してくれ。師父にも金磚きんせんの在処は大事だから、きっとお間違えのないようにと伝えてくれ」

 

そう言うと、にせの金刀童子に金磚きんせんを渡してしまい、華光に別れを告げたのでした。

 そのとき、千里眼と順風耳は出陣していて外にいたのですが、金磚きんせんが辟温使者に持ち出されそうになったのを看破し、慌てて洞内に戻って華光に報せましたが、時既に遅く、金磚きんせんは辟温使者に持ち去られてしまいました。


華光がこの上なく悔しがり、悶々として気持ちは晴れないこととなりました。



 さて、辟温使者は見事に金磚きんせんをだまし取ることに成功し、本性を顕わすと哪吒大元帥の元へ金磚きんせんを献上ました。

哪吒大元帥はそれを見て大喜びで、勝利の太鼓を鳴らしながら天兵を率いて天界へ帰りました。

 玉帝が昇殿すると、哪吒大元帥は上奏して、

「華光は仏法の法力や神仙の神通力を備えており、臣共と一月闘いましても、今まだ勝敗は付きませんでした。そこで臣は華光の一番の宝貝である、金磚きんせんを奪ってまいりました」と言うと玉帝の御案に金磚きんせんを献上いたしました。


 玉帝は竜顔をほころばせ言いました。


「卿は兵を伴って下界へ下り、未だ華光を収められぬと聞いておったが、幸いにしてこの宝貝を奪ってくるとは、真にこれこそ卿の功績だな」

 

そして玉帝は臣下の者へ金磚きんせんは宝物庫へ収めるように言い付け、すぐに哪吒太子のための宴席を設け、金花や美酒、仙桃をお与えになり、花飾りで飾って朝廷から送り出しました。

 


それが終わると、玉帝は群臣へ問いかけました。

「華光の奴を取り収めるのにはどうも手に余るが、一体どうしたものか?」

 

群臣が上奏して曰く、

「私どもが聞くところによりますと、彼が暴れるのも全ては母親のため、彼は大変親孝行者です。ですが如何せん性分なのかひどく怒りっぽく、取り収めることは出来ません。

元を正せば、ごく僅かな恨みによるいざこざが陛下の御耳に入り、故に罪を得ただけのこと。


どうか陛下、再び赦免の書状を一筆書かれ、彼のかつての罪をお許しになり、大目に見てやってはいかがでしょうか。


もし奴が母親を無事取り戻し、それでもまだ邪心を改めず正道に帰さねば、その時また兵を興すのでも遅くはありますまい」

 玉帝はこの言葉を聞き、すぐに近習に侍っている飛将軍・崔通に、玉旨を持たせて離婁山へ向かわせたのでした。



 華光は玉旨と聞いて三拝九拝して御使者殿を迎え入れました。使者は陛下からの玉旨を読み上げるには

『朕は、もし卿に忠孝の心があれば謀反人として扱ったりはせぬと考えておった。だが度々討伐の軍を興したところによると、卿は全て母上のためと申していると聞く。

朕は今、卿が母上のために動いていることを知り、卿が大事を成すまでの間は僅かな仇を晴らそうとすべきではないと、こう考えておる。

卿がもし母上を救わんと思うなら、禍を成さず、戦も休戦いたそう。朕の玉旨はこの通りである、卿もまた再び妙な騒ぎを起こさぬように。もし母上を捜し尋ねるつもりならば、手柄によって罪を償うがよい。叩頭して恩に謝す』


 華光は陛下の玉旨に大変感謝し、使者を盛大に 歓待した後、天界まで見送りました。


しかし、華光は思うに「天兵が今玉旨を持ってきてくれたおかげで、俺の心は晴れ晴れしてる。だけど、この前金磚きんせんを騙し取られちまったから宝貝が使えない。これではどうやって母上を捜したらよいのだ?」

 


思い悩む内に、涙があふれてきました。

そこへ千里眼・順風耳の二人が進み出て、申し上げました。


「天王様、悩まれることはございません。誰かがわしらを騙したなら、今度はわしらが別の誰かを騙せばいいのです。この辺りに鳳凰山という山があり、その山中を玉環聖母娘々が守っております。

そこに金宝塔という宝貝があるのですが、これは投げつければ千変万化すること窮まること無しという一品がございます。そこでなんですが、もし天界で宝貝比べの会があると聞いたら玉環聖母娘々は間違いなくこの宝貝を持って会に参加するでしょう。


そこで、天王様は天界の使者に化けて、玉環聖母娘々からその金宝塔を騙し取り、練り直して金磚きんせんを作れば前の宝貝と変わるところはありません。天王様は何にも悩むことはございません」


華光はこれを聞いて大喜び。真言を唱え、身を一揺すりすると、偽者の天界の使者に化けて、あわただしく出かけていったのでした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ