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南 遊 記  作者: 原 海象
15/32

第十五回 群臣 華光を捉えんが為上奏す

初めまして!原海象と申します。


今回は 中国四大遊記の一冊である神魔小説『南遊記』の十五回目を編訳したものを投稿致しました。

なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。

原作は明から清の時代に書かれたとされております。

また本書は別名は「五顕霊官大帝華光天王伝」といいます。


<南遊記>

第十五回 群臣 華光を捉えんが為上奏す


 


 さて玉帝は昇殿しますと、大臣たちから華光が下界で太乙救苦天尊猊下に化けて法を説いていると聞き、華光が反乱を起こそうとしているのではと疑いました。


群臣の一人が上奏して曰く、

「今や華光は自ら天宮を逃げ出し下界に投胎して、その性根を入れ替えることなく。また太乙救苦天尊たいおつきゅうくてんそん猊下に化けて法を説いております、きっと獄卒や拘束された邪霊に反旗を起こさせ、謀反を起こそうとしているに間違いありません。


そこで臣達は陛下にお願い申しあげます。どうか一刻も早く天兵を下界へ下し、華光を捉えて天曹地府に拘束させ、下界を乱し万民を不安におちらせることのありませぬよう」


 玉帝はこれを聞いて大変ご立腹。そこですぐに火部元帥の宋無忌を朝廷へ呼び出し、天兵三万を連れて大至急、下界へ華光を捉えに向かわせました。宋無忌は玉旨を賜るとすぐに南天宝得門を出て天界の将兵を召集し、下界へと押しかけました。


しかし、宋無忌はこのように考えました。


「華光の神通力は広大だ。力押しでは捕らえるのは難しかろう。ここは旅商人に変化して、火車を風車に変え、離婁山の洞内まで手で押して行く。そうすれば奴はきっと私を見ても宋無忌だとは分かるまい。もし分からなければ、そのまま洞中に進入してから俺が本性を現し、そこで華光を捉えれば、弓や矢を浪費することもなく手間も省け、更には私の功績が高くなるというものだ」

 言い終えると早速旅商人に姿を変え、離婁山まで車を押していったのです。



 さて華光がちょうど離婁山の洞内に玉座っていた時のことです、突然額の天眼を見開いて、驚きながら申しますには、「千里眼、順風耳、お前たち何か分かったか?」

 二人は答えて、

「天王様に申し上げます。我ら二人には玉帝が宋無忌を使わし、兵を伴って押しかけてくるのが分かりました。更に今、宋無忌は旅商人に化けて、火車を我々の洞内に押し入れ、洞中で捕縛しようとしてます。天王様、どうか早く我らに計略を授けてください」

 

華光は首を傾げながら

「宋無忌が旅商人に化けて車をここまで推してくるなら、俺は若い女に変身し、道の途中で奴と会おう。


そうだな、奴が俺にどうかしたのかと尋ねてくるのを待ちこう言う。

『私はこれから家に帰るところなのですが、ここに来て足が痛み出し、歩けないほどなのです……』と言う

もしも奴が俺に火車に座らせてくれたら、俺はすぐに座ってしまう。


どうだ、良い計略だろう。これを『借刀殺人しゃくとうさつじんの計』と言うのだ」

「良い計略でございます」



 言い終えるが早いか、華光は一人の若い娘に姿を変え、道の中程で声を上げて泣きました。


 旅商人に変身した宋無忌が車を推してやってくると、若い娘に姿を変えた華光とばったり出くわしました。宋無忌がひたすら前に進むと、その娘は宋無忌の車を引き留め、涙ながらに「旅のお方、お助け下さい!」と叫びました。

 

宋無忌曰く、

「あなたはどこの娘さんだ、こんなところで泣いて、どうして私の車を引き留めたのだ?」


華光の化けた若い娘は言いました。

「旅のお方、私はこの先の村の娘です。家に帰ろうと思ったのですが、足が痛み出して歩けないほどなので、ここでこうして泣いておりました。旅のお方、貴方様は私にとって神仙様とお見受けいたします。これも何かのご縁、どうかあなたの車に乗せて私の家まで送って下さい。そうすれば、私の家まで着きましたら私の両親がきちんとお礼いたします」

 

宋無忌がそれとなく思うに、

「こんなところに娘がいるなんて…… もしやこの小娘が華光じゃないのか? もし華光なら、逆手にとって火車に奴を座らせてやろう。もし奴がこの車は火車だと分からなければ、奴が座るのを待って真言を唱えれば、火炎を発し華光は焼け死ぬ。美味しくて手間も省ける。

 



考え終えて、宋無忌は早速娘に申しました。

「これも何かのご縁、どうぞあなたのお家まで座っていって下さい。私も道を急ぎますから」

 華光が化けた娘は言いました。

「もし家に帰りましたら、このご恩は一生忘れませんわ」

 娘が車に上がりますと宋無忌は即座に真言を唱え大火炎が生じました。華光は車の中から天眼によってこれを察し、たちまち元の姿に戻って本性を現し笑いながら、


「俺は火の化身だぞ、どうしてお前なんかの弱火に俺が焼けるか!」

華光は神通力を顕わし、車に座ったまま洞中に引きこもりました。



慌てたのは宋無忌です。洞の前に駆けつけましたが、貝のように洞門はぴったり閉ざされていました。宋無忌は大声で罵り華光は火車(宝貝)をしまい込みますと洞から出てきて宋無忌と戦い始めました。

 十数合の打ち合いになり宋無忌は、

「貴様が下界を騒がし、天尊猊下に化けて法を説いたため玉帝陛下はお怒りになられて私に貴様を捕らえるよう天命を受けたからだ。どうして娘に化け私の火車(宝貝)を奪ったりするのだ? 自らお縄を受ければよいが、もし少しでも逆らう気なら命はないぞ!」

 

華光は白蛇槍を振り回し答えました。

「天に背いたのは鄧天君とうてんくんに追いつめられたからだ、それに天尊猊下に化けたのは俺の母親を捜すためだ。くそやかましい奴、とっとと天兵を帰して天界に伝えりな。 もし、まだ許さないというなら、俺が天界まで出向くぞ」

「貴様は天宮に背いたのは鄧天君とうてんくんに追いつめられたため、天尊猊下に化けたのは俺の母親を捜すためと言うが、ならば、あの日一体誰が貴様に瓊花や美酒を奪わせ、金鎗皇太子を打たせたというのだ?」

「金鎗皇太子を殴ったからって、貴様と何の関係がある!」


 宋無忌はこれを聞いて怒り、

「私は天命を受けて貴様を捕らえに来たのに、貴様はまだ天に背く気か?」

 と手にしていた槍で華光を突き刺そうと致します。

華光も白蛇槍で迎え撃ちました。

宋無忌は天兵を動員して襲撃させましたが、華光はそれを見て金磚きんせんを取り出して打ちまくりました。

これにより天兵どもは頭を割られ脳が裂け、被害甚大となり宋無忌は天界へ将兵を引くしかありませんでした。


華光は初戦で見事天兵どもを追い払いましたが、恐らくまた天兵を送ってくるに違いないと考え、一日中思いめぐらしていました。



*****



 さて宋無忌は残りの兵を連れて天界に帰り、玉帝陛下に上奏いたしました。

「陛下、臣をお許し下さい。天兵を連れて華光を捉えに下界へ参りましたが、思いがけなく華光が化けた娘が、村境の道で泣いていたので臣の車に座らせました。その後、華光は本性を現し臣は華光と戦いました。華光は戦いだして間もなく三角金磚きんせんを取り出して投げつけ、天兵を退け被害甚大となり、こうして臣どもは撤退をして参りました次第です。


華光はますます天へ反抗している上、ヤツの神通力は広大で無辺です。願わくば、陛下一刻も早く決裁をなさり、後々の災いをお取り除き下さいませ」


 玉帝はこれを聞いて怒りに震え、左右の文武百官に尋ねました。


「今華光は天界へ背いておる。誰か朕の代わりに天将達を率いて華光を捉える者はおらんか?」

 

そこへ火部の卯日官・鄧天君とうてんくんが進み出で、奏して申しますには、

「臣が一人推薦したい者がいます。火部に百加聖母娘々という者がおります。この娘々(女神)は口から火を吐く火鴉カラスを収めた火鴉壺かあこという宝貝を有しており、もしもこの宝貝を用いれば敵陣に突入させ瓦解することが出来きます。この宝貝は誠に神通広大でございます。この娘々を参戦させるべきでしょう」


 玉帝はこの上奏に従い、すぐに百加聖母娘々を呼び出しました。そして玉帝は百加聖母娘々に美酒三杯、金花二本を賜り申しました。

「卿よ、急いで天兵を連れて下界へ向かってくれ」

 百加聖母は陛下の恩に謝して朝廷を出ると、配下の五百羽にわたる火鴉兵を伴いました。

また聖母娘々には一人の息子がおり、名を火鰕公子といい、火鰕公子も武装して火兵を引き連れ下界に向かいました。




*****



色とりどりの旗を閃かせ、槍と刀とを陽光に煌めかせながら、大声で張り上げること天にも届かんばかりでした。こうして士気高々と離婁山に押しかけ山洞を取り囲んでしまいました。華光の三軍の武将(火漂將・千里眼・順風耳)も皆すっかり肝をつぶし、ひどく驚いて洞中の華光の元へこのことを知らせに向かいました。


 華光が洞の中に座っていると、突然偵察に行っていた小軍の者が入ってきて玉帝陛下は宋無忌将軍が逃げ帰ってきたために、今度は百加聖母娘々を差し向けてきたこと、その聖母娘々が五百羽の火鴉を連れていること、下界へ押しかけてきて口々に大声で「天王は大人しく捕まれ、お縄を受けて天界に帰れ」などと叫んでいることを報告いたしました。



華光はこれを聞いて大激怒し、すぐに初戦で争奪した天馬に乗ると離婁山を飛び出しました。そこへ火鰕公子と相見えました。

「俺様はこの地域を支配する華光天王だ!貴殿は何者だ?」

火鰕公子は火炎槍を振り回しながら答えました。

「我こそは、百加聖母娘々の一子いっし火鰕公子と申す。天王殿と一戦交えてたく参戦致しました」

二人は互いに姓名を名乗りあってから打ち合いにかかり、両者の武芸は凄まじくその数は数十合にも及びました。

火鰕公子は華光の神通力が無辺なことを悟り、

「疾ッ!」

火鰕公子が真言唱えると、空中から火鴉が飛んできて我先にと華光をついばむのです。

そして、離婁山は火鴉の火の粉で所々燃え上っていました。

この戦で華光は大敗して洞中に逃げ帰りました。それを見届け火鰕公子も火兵を収め凱旋致しました。


 

さて華光は洞中に逃げ帰り、悶々としながらも、あの火鴉カラスを手にいれて天兵を退けるにはどうするべきか計略を練っておりました。半日の間思い悩みましたが為す術もありませんでした。しかし、これならという妙計を思いつきました。



早速、火漂將を呼び出し、華光は火漂將に言い含めました。

「俺は明日また火鰕公子と戦う。奴はきっとまた火鴉カラスを操って向かわせて来るに違いない。だから俺は分身を造り、そいつに戦わせてまず火鰕公子をおびき寄せる。


俺自身は空中に隠れて奴が火鴉カラスを使うのを待ち、その時が来たら真言を唱えて火金丹を豆に変え、地面に撒くんだ。


そしたら火鴉どもは必ず我先にと豆をついばみ出す。腹一杯に喰って奴らが飛びづらくなった頃合いを見計らい、お前は一本の沙羅の大木に化けろ。

火鴉カラスどもはきっととまりに来るからな。


ここでお前の宝貝・火漂粧って箱が必要だ。それを使って火鴉どもを残らず閉じこめ、俺のところまで連れてこい」

 華光の話が終わると、火漂將は計略を授かり出陣しました。


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