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南 遊 記  作者: 原 海象
11/32

第十一回 華光 玉帝の怒りを恐れ再び転生する

初めまして!原海象と申します。


今回は 中国四大遊記の一冊である神魔小説『南遊記』の十一回目を編訳したものを投稿致しました。

なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。

原作は明から清の時代に書かれたとされております。

また本書は別名は「五顕霊官大帝華光天王伝」といいます。


<南遊記>

第十一回 華光 玉帝の怒りを恐れ再び転生する


 話は変わりまして、于田国の国王が昇殿し、臣下の者たちが朝廷に参上し終えた頃、公主に付き従って天王祠へ焼香しに行った親兵の一人がやって来て上奏いたしました。


「陛下、臣どもが公主に従って天王祠へ参りました折り、公主は神幔を巻き上げさせ、華光天王の宝像をご覧になって夢中になさっておられました。

それから廟を発とうとした時のことです。一陣の狂風が砂を飛ばしながら吹き付けてきて、臣ども皆目を開けることが出来ずに地面に突っ伏したのです。しばらくして風が止み、待臣たちが見たときにはもう公主のお姿はどこに見えませんでした。どこを探しても見つからず、仕方なく臣どもだけ宮中に帰参致しましたのです」


 国王はこれを聞くと、怒り狂って申します。


「これはきっと華光が公主を連れ去ったに違いない! 朕はすぐに禁衛軍に玉旨を下し、天王祠を取り壊させるぞ!」


 しかし文武百官がそれを押し留めて申し上げました。


「陛下が先日見られた夢では、華光天王は正真正銘天界の神とのこと。それなのに約束通り陛下が廟宇を建て、宝像も造られたというのに、華光天王はどうして仁義も考えずに陛下に仇で報いましょう。


思うに、これは城外に別の妖怪がおり、そいつが公主を連れ去った可能性もありますが、まだはっきりとは分かりません。


陛下、願わくば、まずは牒文ちようぶんに『華光天王は三日以内に公主を王宮へ帰すべし』としたためて牒文をお焼き下さい。そして、その約定が破られたなら、その時こそ天王祠を取り壊すのです。その後からでも遅くはありません」


 国王はこの献言を聞き入れ、すぐに天台宮で牒文を書き付けて焼いたのでした。






 華光の眷属となった離婁・師曠の二人は公主が火漂將に連れ去られ、また一方では国王が牒文を焼いて「三日以内に公主を帰せ」と言ってきたことを知りました。二人で火漂將と戦って公主を助け出ことも思ったのですが、二人とも火漂將ほどの神通力はなく、仕方なく華光が帰ってくるのを待つのでした。


 どうしたものかと悩んでいたその時、華光は祥雲に乗って帰ってきました。早速二人は公主が焼香しにやってきて、帰り際に火漂將に連れ去られたこと、国王から「三日以内に公主を帰せ」との牒文きていることを一通り説明いたしました。



華光はこれらを聞いて逆上するや、すぐに火漂將のいる洞へ向かったのでした。

丁度火漂將は洞におらず、小妖怪どもは華光の姿を見るや一目散に逃げ、華光は戦うことなくすぐに公主を見つけました。



公主はそれ天王祠で見た華光天王だと知るや泣いて助けを求めました。


 華光は扉を撃ち壊すと公主を助け出しました。

「泣くな、俺が祥雲に乗せてお主をちゃんと送ってやる。そしてお主は于田国王に、火漂將がやったことで俺は助けだしたしことをちゃんと説明するんだ」

公主はもちろん承知致し、華光はすぐに祥雲に乗り公主を王宮へ送り届けました。



于田国王は大急ぎで天台宮で駆けつけると、公主はこれまでに起きたことを一つ一つ話し、自分をさらったのは華光ではなく火漂將である。今自分を助けてくれたのは華光であると説明いたしました。これを聞いて于田国王は大変喜ばれました


一方で、華光は再び火漂將の洞へやって来ますと于田国の公主に変身し、火金丹を練ってなつめを一つ作ると、座って火漂將の帰りを待ちました。


 しばらくして火漂將が戻り、公主に訊ねます。

「お前、今日は体の調子はどうだ? もし良いなら俺と夫婦の契りを交わそうではないか」


 公主に化けた華光は弱々しく顔を隠すように言いました、

「まだ少しよろしくありませんわ」

火漂將は焦りながら、公主に言いました。

「もうお前を待って一日になるのに、まだ良くならないって言うのか。

俺はお前と夫婦の契りを交わしたいんだ」

公主は涙を流しながら言いました

「もし私とすぐにも夫婦になりたいのでしたら、それは大して難しいことはございません。ですが恐らくあなたはしばらくしたら気持ちも冷め、きっと私のことを必要とはなさらないでしょう。それが私には悲しいことなのです」


火漂將は「『男子の一言金鉄の如し』というじゃないか、もしそんな邪心な気持ちを起こしたら、天地が俺を許しゃしないさ」

公主は火漂將から顔を隠し、華光は内心笑いながらこの茶番を続けました。




「私、まだあなたの言葉が信じられませんわ。もしあなたが私と結婚し夫婦の契りを交わしたいのでしたら、私がここに一つのなつめを持っております、あなたがこれを食べたなら私は貴方と夫婦の契りを交わしましょう」

「食べたらどうなる?」

「食べて下されば、これから私たち二人は仲むつまじくなれますわ」

「それにしても既に一緒に暮らしてるのに、なんでそのなつめを二つ持ってきて一緒に食べないんだ?」

「あら、一つだって多いくらいですわ」


火漂將はこれを聞いて大喜び、手を伸ばしてなつめを取ると、口に放り込みました。するとたちまち腹の中が沸騰し、燃え上がらんばかりです。そこで華光は元の姿に戻り、大声を張り上げました。


「妖怪の分際で、身分不相応にも公主をさらい、あまつさえ俺まで巻き添えにしやがって!」

火漂將も激昂して申しました。

「てめえが俺の廟宇を奪いやがったのが原因だろう!その仇に報いたまでだ!なんだって俺の洞までやって来て俺を騙しやがった?」言い終えると、すぐに華光に斬りかかりました。


華光は不敵に笑った。

「黙れ!貴様がついさっき喰った俺のなつめだが、アレはなんだか知ってるか?」



火漂將は得物を振り回しながら言った。

「あれはなつめだろう、何だっていうんだ?」

「あれは俺の火金丹だよ。お前がもし俺に降伏しないなら、すぐさま貴様を焼き殺すぞ」


 火漂將はこれを信じす、槍を掲げて華光と突き刺そうといたします。

華光はそれを見てすかさず真言を唱えると、火漂將は炎に焼かれてました。

火漂將は地面を転がりながらも火は消えず「華光天王様お助け下さい!」と叫びました。


 華光はその光景を見ると邪悪な笑いをして、火漂將に言いました。

「貴様はあれが火金丹だとは信じてなかった。今焼かれてみてどうだ。信じる気になったか? もう火種はお前の腹の中だ。降伏するか?」


 火漂將苦しそうに、

「華光天王菩薩様がお助け下さい。さすればこの私は進んで帰順いたします」

これを聞いて華光はすぐに火を抑え、火漂將の腹ももう痛みません。華光は火漂將を収めると、これを眷属として用いることと致しました。


その頃、于田国の国王が昇殿し大臣たちと相談しておりますと、祥雲が立ち込め華光が火漂將を縛りながら天台宮に降臨し、「邪悪な妖魔は退治した」ことを告げました。そこで天王のお姿を拝謁した于田国王や文武百大臣たちと共に天王祠に壇を設けて儀式を行い、香をあげこの吉報を喜びました。





さて華光天王は天下を巡遊し、朝眞山洪玉寺に帰って参りますと、すぐに寺に入って火炎王光仏に拝謁いたしました。


挨拶が終わると、火炎光仏は華光に訊ねました。

「弟子や、お前はこの二年というもの、一体どこにいたのだね?」

 

そこで華光は千里眼・順風耳を収めて眷属にしたこと、于田国国王に廟宇びょううを立てさせたことなどを一通り話しました。火炎王光仏はため息をついて華光に言いました。

「弟子や、お主はここにはおらん方がよいようだ。天上界では玉帝陛下がお前を捉えようとして天将や天兵を集めている」

 

華光は驚き、

「もしまた玉帝が天上界の将兵を寄こしてきたらどうすればよいでしょうか。師父、この愚かな弟子に往くべき道をお教え下さい。もし逃げおおせることが出来たら決して師父のご恩は忘れません」

「もしお前が丁度良い居場所が欲しいなら、どこかに投胎し、もう一度生まれ変わるのが良かろう」



「私は于田国に廟宇を立ててもらってから、今や万民から線香を受ける身分となりました。今更どこに生まれ変わったものでしょう?」

「お前が天兵から逃げきれないというなら、やはりどこかに投胎した方がよいだろう」

 

そこで華光が火炎光仏に訊ねますには、

「この弟子に行くにあたってはどのように行けばよいのでしょうか?」

 火炎王光仏が答えて、

「前世で釈迦如来様からお前に五通を賜って下さっただろう。それらと一緒に同じ母胎に投胎し、一つの肉塊を為し母親に生み出されるのを待つがよい」


「ですが凡人には肉塊の中のことなど分からず、きっと鬼子だと思って中を開いてみようとは思います。もしそうなったら、どうやって生まれ出るのですか?」

「お前は何も心配しないで行きなさい。私が後からついていってお前を助けてあげるから」


 こうして華光は師父から教えを受け、五通の金光に変じると、神風に身を任せて南京微州府二源県は簫家荘まで辿り着きました。


華光が雲から簫家の人が呟いた独り言を聞いたところによると、ここの奥様は懐妊したものの二十ヶ月も経つのにいまだ出産していない。その声が雲まで届いて、華光は考えました。

これはこの家に生まれ変わるのが良さそうだな

 そこで、三更時分になると簫婦人の寝室に忍び込み、五通ともども婦人の体の中に入り込みました。


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