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プロローグ

 ガラド王国では、氷神と呼ばれる男と、炎神と呼ばれる女がいた。

 氷神は()()では神々しい白い髪に、青色の瞳を宿しており、炎神は()()では神々しい赤い髪に、黒い瞳を宿している。

 そんな氷神と炎神は平民でありながら、国を救ったとしてガラド王国の国民の中ではヒーローのような存在であり、憧れでもある。逆に昔ガラド王国に戦争を仕掛けた……あるいは仕掛けられた国からしたら死神のような存在であり、憎悪の対象だった。

 

 そんな氷神と炎神は平民でありながらも国の城に住んでおり、注目の的だった。だからこそ付き合っているという噂があった。そしてその噂は事実だった。幼馴染ということもあり、なかなか進展しないものだと思われていたが、最初に参加した戦争により、相手を失う怖さを理解し、お互いが自分の気持ちに気がついたことにより、付き合うに至った。

 

 そしてそんな氷神――ランドの部屋へ炎神――シュリが来ていた。


「こんな夜中にどうした?」


 ランドはそう尋ねながらも内心では遂にお互いの初めてを交換するのでは無いかと期待していた。

 ランドも年頃。当然何度もそういったことを恋人と……シュリとしたいと考えたことはあるが、残念なことにシュリはそういった知識が乏しすぎた。

 そのくせボディタッチが多いので、なんどランドの頭を悩ませたことか。恋人同士なので、そのまま押し倒しても良かった……なんなら一度我慢できずに押し倒したことがあったが、「えへへ、ランド好きぃ」と言いながら抱きつかれ、ピュアすぎるシュリが眩しく、「俺も好きだよ」と言いそのまま二人仲良く眠りについた。


 そんなシュリだが、一緒に寝る時は最初から一緒に寝るし、夜中にいきなり来ることなんてなかった。

 だからこそ、ランドは誰かに知識を教えてもらい、ここに来たのではないか? と思い、期待していた。


「なんかランドが遠くに行っちゃう気がして……」


(ですよね〜……どうせ違うんだろうと思ってたよ)

 

「そりゃあな、明日は普通に行ったら7日はかかる場所に魔物退治に行くしな。シュリは別の事で一緒にこれないだろ?」

「そうだけど……そうじゃなくて」

「まぁ、俺もシュリと一緒にいたいし、2日以内には帰ってくるって」

「……うん」


 ランドが安心させるようにそう言うが、シュリは不安げなままだ。

 ランドが優しくシュリの頭を撫でると、シュリもランドに体を預ける。


「ほら、大丈夫だから、今日は一緒に寝るか?」

「そう、だよね……うん。えへへ、ランドの匂いだぁ」

「はいはい、おやすみ」

「うん、おやすみ」


 幼馴染ということもあり、一緒に寝るのは子供の頃からだったので、特にランドにも緊張は無い。もちろん幸せと言う感情は湧いているのだが。

 ランドはシュリの頭に手を置き、抱き寄せながら眠りにつくのだった。


 そして翌日、ランドは謁見の間にて国王より、見送りのお言葉を頂戴していた。周りには貴族たちもおり、好意的な目もあれば敵意を向けてくるものもいる。あくまで人気なのは国民たちの中だけだ。貴族にもなると、疎ましく思ってくる存在もいる、ということだ。

 ランドも最初は気にしたが、今となってはもう慣れたものなので、適当に無視し、国王の話を聞いている。


「では任せたぞ、ランドよ」

「はっ」


 国王の話が終わり、謁見の間を出たランドは一度自分の部屋に戻り荷物を取りに行っていた。

 荷物を取ったランドは部屋を出ると、シュリが待っており、突然抱きついてきた。


「早く帰ってきてね」

「あぁ、分かったよ」


 まだ、昨日言っていたことを気にしてるのかと思い、なるべく安心させるためにランドは優しい声でそう言うと、シュリはまだ不安そうにしながらも、ランドに抱きつくのをやめ、行ってらっしゃいとランドに向かって言ってきたので、ランドは行ってきますと言い、城を出る。


 城を出るなりランドは足元から空中に登るように凍らせていき、波に乗るような感覚で一直線に目的地に向かうのだった。

 もちろん、ランドが通ったところの氷は綺麗に消え、迷惑にはならないように工夫もしていた。


 そして、全速力で進んだこともあり、普段より疲労はしたが、一日も経たずして目的地にたどり着いたランドは、すぐにその街の領主に話を聞きに行った。

 領主はランドのことを出迎えるなり、こんなにも早く来て下さるとは流石はかの有名な氷神です……的なことを長々と話、よいしょをしてくるのを当たり障りが無いように終わらせ、出た魔物についての詳しい話を聞いた。


「ありがとうございます。それでは、行ってきますね」

「いえいえ、私の領のことですからね、情報提供は当然のことですよ。頑張ってきてくださいね」


 ランドは内心で面倒な貴族じゃなくて良かったと思いながら、話に聞いた森の方へと進んでいくのだった。

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