夏祭り と 私のファーストキス
拓都と私が、中学2年生の夏祭りの日。
私達は、ファーストキス をする。
それは、不器用でぎこちなく、
そして、ドキドキをくれるものだった。
「 夏祭りと俺のファーストキス 」
「 夏祭りと私のファーストキス 」
2人の視点からお楽しみ頂けます!
「 もう、帰らんといけんのん? 」
「 ううん、お母さん、最後まで居るって言ってたけん、まだ大丈夫だと思うけど……私は、ちょっと2人きりになりたいかな……」
拓都と私は、一緒に夏祭りに来ていた。
地域の小さな夏祭りとはいえ、中学2年生の私達だけで来る事はできなかっただろう。
幸運な事に、親同士仲が良かったし、妹達のバレエの発表会を見に来るという言い訳があった。
「 いいジュースないけぇ、拓都と買いに行ってくる! 」
一通り親との時間を過ごした後、私達は2人で歩いて5分のコンビニまで行く事になった。親公認の付き合いだし、私のお母さんも拓都の事を昔から気に入っていた。
「 暗いから、気をつけて歩けよ! 」
コンビニに向かう道は、道幅も狭く街灯もまばらだった。
「 足、痛くないか? 」
慣れない下駄で歩く下り坂、足は痛いに決まっていた。
「 ううん、大丈夫 」
私は強かってそう答えた。
拓都の優しくて気遣いな所は、昔から変わっていない。変わった事と言えば、中学生になって急に伸び始めた身長と、低くなった声くらいだ。
ただ、そんな拓都に毎秒ドキドキをもらう反面、奥手な拓都に、もどかしさも感じていた。
「 今日は、手繋がないのかな? 」
「 そろそろ、キスくらいしてくれてもいいのに…」
あっという間にコンビニで買い物を済ますと、すぐに来た道を引き返す。
車道側を歩いていた拓都の肩が、少しよろけた私の髪に触れた。
「 手、繋ぐ? 」
お祭りの音が微かに聞こえ始めた時、ついに私から言ってしまった。
拓都は今日も、恥ずかしそうに私の手を軽く握る。
気付くと、目の前に大きなトラックが立ち塞がった。宅配の車に行く手を阻まれた拓都は、少し悩んでから、歩道側の狭い隙間を選んで進んだ。
「 えっ……?! 」
先を歩く拓都が、急に立ち止まって振り返った。隙間が細すぎて、途中で通り抜けるのが難しいと判断したのだ。
止まりきれずぶつかった私は、驚くほど近くで拓都の顔を見上げる事になった。
次の瞬間、
拓都は、そっと私にキスをした。
「 えー!! なんでこんな所でするんよぉー!! 初めてなのにー!! 」
思わず、私は怒ったように言った。
「 いや、ごめん、つい…… 」
拓都は気まずそうにそう謝ったけど、繋いだ手を離す事はしなかった。
初めてのキスは、ムードも何もない、トラックと塀の隙間だった。
たとえ、つい……だって、
私は素直にとっても嬉しくて、益々 拓都にドキドキをもらった気がした。
少しでもお楽しみいただけましたでしょうか?
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