プロローグ3
まだボーッとしていた頭に、優しい男性の声が掛かる。
ガキとは呼ばれても、坊やと言われるほど子供っぽくはないと思うが。
心の中で不満を募らせながら、声の方を向く。そこには、深緑色の軍服を着て背中に剣を背負った、笑顔のお兄さんがいた。
「え?いや......」
どもりながら、僕はなんとか答えようとする。しかし彼は答えを待たずに、
「ちょっとこっち来てもらえるかな?」
と手を引いて僕を立たせて、どこかへと案内した。
建物内に同じような緑の軍服を着た男達がいる中、僕は個室へと誘導される。小さな窓からは百メートルはあるであろう、豪華な西洋風の城と、賑わっている街の姿が見えている。
写真とかではこんな景色は見たことがあるが、日本にこんな大きい城があるのは知らなかった。もしかしたらここは日本ではないのだろうか?
いや流石にそんなわけないはずだ。
そんなふうに考えていると、僕を案内してくれたお兄さんがお茶を出してくれた。
だが、ティーカップに入っているものは緑茶の味で、なんとも言えない気持ちになった。
「さて、名前を教えてくれるかな?」
席に着いた彼が、そう質問をしてくる。
「えっと、赤城 天です」
そう答えると怪訝な顔を浮かべながら次の質問をする。
「歳は?」
「十六歳で、高一です」
「こういち? よくわからないが......職業は?」
「え? だから、高校生です」
「真面目に答えてくれないか?」
真面目に答えているのだが。何故理解してもらえていないのだろうか。そう思っていると彼は席を立ち、部屋の外にいる別の人と話し始めた。
......この質問攻め、警察官のような格好の男達、薄々察していたがこれは取調べみたいだ。
今まで僕を案内していると思っていたが交番に連行されているだけだったのだ。ならば余計にこちらの言っていることを理解して欲しい。